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明かし時…4ドラゴン・キャッスル・ヒストリー9

 再び三神になったナオ、ムスビ、栄次は闘技場の奥の階段をさらに登り、一本道の廊下を歩いていた。

 「……しかし……あのグラマーさんがいないと竜宮制御室への道がわからないよ?」


 ムスビが歩きながらナオと栄次に困った顔を向けた。


 「そうですね……。」

 ナオはどこか上の空でムスビに答えた。


 「ちょっとナオさん?なんでぼーっとしてんの?」

 ムスビはぼうっとしているナオを思い切り揺すった。


 「……はっ!ごめんなさい。ムスビ。私の前に沢山の歴史が横切って……。」

 「歴史?」

 我に返ったナオにムスビは首を傾げた。


 「ええ。ここのフロアに入ってから何の歴史かもわからない歴史が大量に私を横切っていきます。さすが過去を排出する建物……竜宮です。」

 「……俺には見えないけど……。」


 「あなたは結ぶ方なので一つ一つ終わらせてしまうから目に映らないのでしょう。」

 ナオは頭を横に振りながらムスビに答えた。


 「ふーん。」

 ムスビが気のない返事をした時、栄次が再び刀に手をかけていた。


 「うひゃあ?栄次、あんた何また刀構えてんだよ?」

 ふと目を横に向けたムスビが栄次を見て飛び上がった。


 「何かを……感じるぞ。何か来る……。」

 栄次の言葉にナオとムスビは固唾を飲んだ。

 刹那、廊下の先から多数のロボットが出現し、赤い光線を放ちながらこちらに向かってきていた。


 「なんだ!あれは!」

 「竜宮の警備用の徘徊ロボットです。勝手に動いているようですね……。」

 ナオはムスビにため息交じりに答えた。


 「栄次が構えているって事は襲ってくるって事だよな……。」

 ムスビが青い顔をして言葉を発した刹那、ロボットが高らかに警戒音を発し、レーザー光線を飛ばしてきた。

 レーザーはナオの頬をかすめ後ろの壁に穴をあけた。


 「ひぃ……。」

 悲鳴を上げたのはナオではなくムスビだったがナオも言葉を失った。


 「まいったな……あれは俺にも斬れない……。」

 栄次が表情変えずに冷静にナオに言った。


 「……わ、わかりました……。ここは竜宮です。過去を排出する建物なので歴史をいじってみましょう。」

 「そんなことができんの?」

 ナオの発言にムスビが顔色を青くして尋ねた。


 「わかりません。やってみます。」

 ナオは素早く飛龍と天津彦根神オーナーの巻物を出現させ、床に置いた。

 再び飛んできたレーザー光線はムスビが危なげに結界を張って弾いていた。


 「あっぶねぇ!」

 「ムスビ、少し静かに願います……。」

 「静かにって……。」


 ムスビが困惑しながらナオに言い放った時、床に置いた巻物が光出し、廊下全体を覆った。なぜかロボットはすべて消え、今とは少し違う廊下がパズルのように組みあがっていた。


 「できました。過去……さんの世界に入りました。この廊下を進み終わった所で歴史を解けばまた元の竜宮に戻るでしょう。」

 ナオは安堵のため息をついた。


 「すごいね……。ナオさん……。じゃあ、ここは過去の竜宮なのか?」

 「歴史が見えそうだな。」

 ムスビと栄次の言葉にナオは頷いた。


 「おそらく見えてしまうでしょう。運が良ければ天津オーナーと飛龍の歴史の確認ができます。」

 ナオは息を深く吐くと過去の世界の廊下を歩き始めた。ムスビと栄次もそれにならい続く。

 しばらく歩くと目の前に飛龍が現れた。


 「……っ!」

 「大丈夫です。これは歴史と記憶の中の飛龍さんです。」

 ムスビと栄次が戸惑っているとナオが間髪を入れずに答えた。


 「そ、そっか。飛龍の巻物れきしを使っているんだもんな。そりゃあ見えるか。」


 「歴史を見つつ、廊下を渡りますよ。ここでいきなり歴史が途切れたなどのハプニングがあってはいけませんから。この辺はロボットのど真ん中です。」

 ムスビはナオの言葉につばを飲み込むと緊張した顔で再び歩き出した。


 廊下にいたのは飛龍と行方不明の天津彦根神オーナーだった。

 天津は緑色の長く美しい髪を持つ好青年で立派な竜のツノが頭の左右から伸びていた。

 ついでに言うと紫色の着物を着ている。


 「母上であるアマテラス大神が向こうへ行ってしまわれたそうだ。……私も行くべきなのだろうか?……の世界へ……。」

 天津は切なげな表情で目の前に佇む飛龍を見据えた。


 「あんたはどうしたいんだよ。あたしはここに残るよ。向こうに行くなんてあの三貴神もどうかしている。向こうじゃあたし達を信仰する人間はいない。自殺だろ。伍の世界なんて。」

 飛龍はどこか投げやりに答えた。


 「この事象……すべてがあともう少しで消される。私は母上を忘れる……。……あの三貴神がこっちの世界から消えたらこっちはどうなるのだ?」


 「……物語には残るけど実際はいない扱いになるんじゃねぇかな。」

 飛龍が廊下の壁にもたれかかりながら考えるように言葉を発した。


 「……そうだな……おそらく。私もここに残ろう。私がいなくなってしまったら本当にアマテラス大神がいたかどうかがわからなくなってしまうからな。」

 天津も飛龍の隣で壁にもたれかかった。


 「それ聞いて安心したぜ。ここはあんたの城だ。あんたがいねぇと竜宮が締まらねぇんだよ。あたし達はこっちでいままで通りの生活をすればいい……。世界が分裂したのもKってやつが出てきたのもすべて人間の心だ。


 人の心に神は寄り添い、従う。人間が得を得られればそれでいいし、逆に不幸をまき散らして怯えさせるのもいい。こういうのも全部人間がルールを決める。厄神だって七福神だってぜーんぶ人間が生んだ。だからあたし達はそれにそって人間のよりどころになってればいいんだよ。信じなきゃあ信じなくてもいい。いらなくなればあたし達は消える。」


 飛龍は大きく伸びをすると天津に笑いかけた。


 「ああ、そうだな……。なんだかもう母上のお顔を思い出すことができんのだ。」

 「そろそろはじまったか?……三貴神の……記憶が薄れてく。これがシステム改変か。」

 天津と飛龍は会話をしていたがやがてプツンと何かが切れた音がした。


 ナオ達は記憶を見つつ、なんとか廊下を抜けた。廊下を抜けた直後、廊下は元の時代の廊下に戻りロボットが出現し始めた。廊下の先にいたナオ達を見つけ、ロボットは再び警戒音を鳴らす。


 「このまま先へ進みましょう!」

 ナオは栄次とムスビに言い放つと廊下の先のロビーを突っ切った。

 「ナオさん!待ってよ!」

 ムスビと栄次も慌ててナオを追った。

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