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明かし時…4ドラゴン・キャッスル・ヒストリー7

 「……ん?」

 気がつくと大きな赤い門の中にいた。空は青空が広がっている。辺りは沢山の遊具が置いてあり、すぐ近くには遊園地が広がっていた。遊園地にもこの辺りにも神はおらず、無神のアトラクションが勝手に動いていた。


 かなり奇妙な光景で気持ちが悪い。

 少し離れた所に大きな天守閣がそびえたっている。


 「……竜宮に入れましたね。」

 「竜宮は海の中なのではないのか?」

 辺りを確認しているナオに栄次が疑問をぶつけた。


 「海の中にありますが正確には海の下です。」

 ナオの言葉に続き、ムスビがため息交じりに口を開いた。


 「ここは連日連夜、沢山の神々が遊びに来ていて従業員の龍神達も楽しそうにしていたんだけど誰もいないな……。俺もここ、何度か来た事ある。結構楽しいテーマパークだよ。」


 「そうか。だが現在はかなり禍々しい気を感じるぞ。」

 栄次は顔をしかめながら辺りの様子を窺った。


 「残念ながらその禍々しい方へ行かないとならないようです。」

 ナオは天守閣上部を複雑な顔で見上げた。

 しばらく辺りを窺って何もない事を確かめると三神は頷き、歩き出した。

 歩き出してすぐに栄次が刀の柄に手をかけた。栄次の行動を見てナオとムスビは立ち止まった。


 まだ歩いて一分も経っていない。


 栄次が何かの気配を追っていた。そしてふっと上を見上げるとナオとムスビに叫んだ。


 「さがれ!」

 栄次の言葉にナオとムスビはビクッと肩を震わせ、半ば倒れ込むように後ろに退いた。

 栄次は刀を抜き、何かを弾いた。衝撃が栄次の体を突き抜け、地面の土がめくれあがっていた。


 「……。」

 栄次が刀を構えなおし、襲ってきた者を睨みつける。

 栄次の前に橙の長い髪を持つ青年が狂気的な笑みを浮かべて立っていた。


 「竜宮は立ち入り禁止のはずだぞォ。入ってくんなよ。あんたら、すげぇ弱そうだなぁ?ここらでサクッと殺しておくか。」

 青年は持っていた水の槍をくるくると器用に回すとナオ達に矛先を向けた。


 「……この神は先程……イドさんの歴史に出てきた神……。」

 ナオはつぶやいたが何か思考する前に狂気に満ちた青年はナオ達を攻撃してきた。

 ナオ達の前に素早く栄次が割り込み、青年の槍を刀で受けた。


 「……っち。」

 栄次はあまりの神力の違いに舌打ちをした。


 「……竜宮の禍々しい力はお前だったのか……。」

 この橙の髪の青年から先程から感じていた禍々しいものを濃厚に感じた。


 「さあなぁ。お前らはここで消えてもらうぞぉ……。」

 橙の髪の青年は水の槍を回しながら襲ってきた。

 この神、神力が異常だ。栄次は勝てないと悟った。


 「……ナオ、ムスビ……すまない。こいつは勝てそうにない……。逃げるぞ。」

 栄次は小声で後ろにいるナオとムスビに声をかけた。


 「……栄次が勝てないなら俺達が勝てるわけないよ。」

 「逃げましょう。」

 ムスビとナオも栄次の判断に従い、逃げる事にした。

 しかし、それをこの青年が許すわけがなかった。


 「逃がさねぇよぉ?」

 鋭い水の槍がナオ達を襲った。栄次は危なげにその水の槍を弾いた。しっかりと弾いたはずなのだがなぜか肩から血が噴き出した。


 「……っ。肩を斬られた……。」

 「栄次!」

 「大丈夫だ。もたもたするな。走れ!」

 栄次を心配したナオとムスビは栄次の鋭い一声で走り出した。


 青年の水の槍は電光石火のようだった。栄次には水の槍の軌道がまるで見えなかったが長年染みついた感覚で辛うじて受け流している。


 「やっぱお前からじゃなくてあっちからにしよう。」

 青年は急に矛先を栄次からナオ達に変えた。先を走り去るナオ達に向かい、青年は高く空を飛んだ。


 「っち……。」

 栄次は必死で追いかけるが青年が速すぎて追いつけそうになかった。


 「……っ!」

 ナオ達に上から槍を構え青年はナオ達の背中から襲い掛かった。


 「待ちなっ!」

 青年の槍がナオ達を襲う前にナオ達の目の前に赤い髪の女が割り込んできた。


 赤い髪の女は強靭的な脚力で青年を蹴り飛ばした。青年は遠くに飛ばされ、アトラクションの一部に激突した。煙が舞い、アトラクションは半壊していた。


 「……っ!?」

 目を見開き驚いているナオ達を赤い髪の女は興味深そうに眺めた。


 「へぇー。歴史神か。何しに来たか知らねぇけど、まあ、見りゃあわかるがあいつがいるわけよ。だから危ねぇよ。ああ、あたしは飛龍流女神(ひりゅうながるめのかみ)、飛龍だ。」

 赤髪の女、飛龍は豊満な胸を揺らしながら男っぽい口調でナオ達に笑いかけた。


 「……た、助かりました。」

 ナオは辛うじて声を発した。


 「へん、助かってねぇよ。あいつはまだぴんぴんしてるし、きっとあんたらまた襲われるぜ。いったん、あたしが結界を張った場所まで来い。あれが起き上がって襲ってくる前にな。」

 飛龍はそう言うとさっさと走り去っていった。


 「と、とりあえず追いかけましょう!栄次、大丈夫ですか?」

 ナオは近くに来た栄次に心配そうに尋ねた。


 「……問題ない。早く追うぞ。俺はあれには勝てない……。」

 「はい。」

 「あのグラマーな龍神、竜宮の城内に入って行ったよ!」

 栄次とナオとムスビはお互い目配せすると素早く飛龍を追い、走り始めた。

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