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明かし時…4ドラゴン・キャッスル・ヒストリー5

 廃墟化したどこかの村、人々は焼け焦げ、家々は炭になっている。もう呻く人間の声も聞こえず、辺りは燃え残った火の粉が小さく揺らいでいるだけだった。時代背景もかなり古いもののようだがどれくらい前の時代だかはこの残虐な風景を見ただけではわからない。


 真黒な世界の中、唯一色鮮やかな赤色をしている崩れかけた鳥居が見えた。

 その鳥居の前で狂気的な笑い声をあげている橙色の髪をした赤い水干袴姿の男。その男の手には首を掴まれ苦しみもがいている女がいた。


 男も女も龍神のようだった。頭に龍のツノが生えている。


 「はははは!うるさい奴は全部殺してやった!愉快だ!お前もそう思うだろ?龍史白姫(りゅうしはくき)。」


 「……。私達の人間の里が……どうしてこのような事を……。」

 龍史白姫(りゅうしはくき)と呼ばれた女は苦しそうに呻きながら周りを見回し、涙を流していた。


 「邪魔だったからだよ。拙者をこうしたのは人間だ。あいつらが拙者に求めすぎたんだ。いろんなものをな!」


 男は女を乱暴に叩きつけると狂気的な笑みを浮かべながら歩き始めた。辺りには禍々しい神力が覆っている。


 「ゲホッ……あなた!どこに行くの?」

 女は弱々しい瞳で男に必死で声をかけた。男は女の方を振り返るとケラケラと笑い始めた。


 「……決まってんだろ。人間狩りだ。ぎゃははは!」

 「や、やめて!お願いだからもうやめて!あなた!戻ってきて!もうやめてぇええ!」

 女が男に向かい泣き叫んでいた。


 「もういいでしょう!やめてください!」

 ふと女の声に被せてイドさんの声が響いた。イドさんの声が聞こえた刹那、ナオ達は急激に元の世界に戻された。


 「……最後まで見られませんでしたか……。スサノオ尊は出てきませんでした……。」

 ナオの発言にイドさんは強い神力を振りまき、ナオを睨みつけた。


 「これ以上……僕の歴史を覗いたらあなたを消しますよ。」

 「あの橙の髪の青年はあなたですか?」

 ナオはイドさんの脅しを流して尋ねた。


 「僕じゃない……。」

 イドさんは辛そうな顔をし、再び水の槍でナオ達を攻撃しはじめた。先程よりも強くなったイドさんの攻撃を栄次は辛うじて受け流した。


 「……竜宮の禍々しい力は龍雷水天(イドさん)の歴史にいたあの男と同じだ。」

 ナオのとなりで蛭子が気難しい顔をしながらつぶやいた。


 「……ではイドさんが関係しているという事ですね。」

 ナオの答えに蛭子は頷いた。


 「仕方ない。私も竜宮へ行くつもりだったが私はここで彼を抑える事にしよう。貴方達は歴史を見る事ができるのだろう?それができるなら天津が封印された理由と対策を調べてきてほしい。なんとかして竜宮に入り込み、天津を元に戻せればこの禍々しい神力もなんとかできるだろう。……この件、間違いなく龍雷水天が関わっている。私が彼に勝って情報を吐かせる。だから貴方達は先に竜宮に進むといい。」


 「……蛭子さん……わかりました。ここはあなたに任せます。」

 「ナオさん!俺達、竜宮への入り方知らないよ!」

 蛭子とナオの会話にムスビは慌てて割り込んだ。


 「……それは行ってからなんとかしましょう。」

 「またか……。」

 ナオの返答にムスビは頭を抱え、必死でイドさんを抑えている栄次に目を向けた。


 「栄次!いったん退け!」

 ムスビが叫び、栄次はイドさんの槍を素早くかわすとナオ達の元まで飛んできた。


 「なんだ……。」

 栄次が尋ねた刹那、蛭子が剣を手から出現させた。


 「……っ!」

 その剣は異様な神力を放ち、扱いに困るような威圧感だった。それにも関わらず蛭子はその剣を自分の体の一部のように軽く振っていた。


 「それはっ……天叢雲剣(あまのむらくものつるぎ)ですか……。」


 「ああ、今は私の霊的武器になっている。他にもこの剣を出せる神がいるようだが私くらいの力ではこの剣をちゃんと扱ってやれない……。元々剣術は苦手だが久々に動こうか。」

 蛭子はナオに一言言うと剣を構えてイドさんに向かって行った。


 「あの剣は私達では持つこともできません……。」

 「ナオさん、感動する前にさっさと行くぞ!」

 茫然としているナオをムスビは引っ張り走らせた。栄次はナオとムスビを守る形で走り出した。


 イドさんがそれに気がつき、攻撃をしかけるが蛭子の剣技と神力の激しさで遠くにふっ飛ばされ近くの木に激突した。


 その隙にナオ達は道を走り抜けた。


 「まっ、待ちなさい!」

 「貴方の相手はこの私だ。」

 焦るイドさんに神力を高めた蛭子が静かに剣を向けた。

 「……っち。」

 イドさんは舌打ちをすると水の槍を構えた。

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