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明かし時…4ドラゴン・キャッスル・ヒストリー3

 エビスはナオ達には特に気が付かずに天界通信本部内へ入って行った。


 特に警備もいなかったのでナオ達もそのまま天界通信本部内に入る。本部内はオフィスビルのような感じだったが雰囲気は和風だ。エビスはエレベーターを使って最上階へ行ったようだった。ナオ達も隣のエレベーターを使い最上階を目指す。


 「一応、誰にも会わずにここまで来る事ができましたね。」

 「たまたま仕事中で皆、一階のロビーにいなかったんだね……。でも誰か乗ってくるかもしれないよ。それからあのエビスって女の子の方がエレベーター遅く着くかもしれないし……。」

 ムスビが不安げな顔のままナオと栄次を見た。


 「鉢合わせする可能性もあるな。」

 栄次がため息交じりに先を続けた。


 「まあ、その時は強行で話を進めます。」

 「……俺はナオさんの強行って言葉が一番怖い……。」

 「同感だ。」

 ナオの言葉にムスビと栄次は同じタイミングで頷いた。


 そんな会話をしているとエレベーターは最上階へ着いた。不思議と誰も他の階から乗ってこなかった。

 扉は静かに開き、ナオ達はそのまま最上階へ足をつけた。


 最上階も造りは和風で真ん中に木の廊下があり、両サイドは障子戸だった。

 障子戸には沢山の神が作業をしている影が見えた。ついでにいうとパソコンのタイピングの音も聞こえてくる。記事か何かを作っているようだ。


 廊下の一番奥に部屋があり、おそらくその部屋が天界通信本部社長、蛭子の部屋なのだろう。


 「もう、ここまで来てしまいましたからこのまま会いましょう。」

 「ほんと……俺達って無礼極まりないよね……。」

 ナオが素早く歩き出したのでムスビは色々と謝罪の言葉を頭に思い浮かべながら続いた。


 一番奥の部屋までたどり着き、耳を澄ませてエビスがまだ来ていない事を確認した。その後、ナオは小さく障子戸をノックした。


 ノックした刹那、何の躊躇いもなく障子戸は開いた。


 「何の用だ?西の剣王軍の神々。」


 障子戸を開けたのは整った顔立ちの青年だった。ムスビのように袴にワイシャツ姿のハイカラ雰囲気だ。黒色の髪は肩先まであり、黒い瞳はどことなく優しそうではあったがナオ達に向けられた視線は威圧だった。


 「色々とバレていましたか……。あなたは蛭子神ですね?社長の。」

 「ああ、その通りだ。私は七福神、蛭子神(ひるこしん)だ。……ここの敷地内は私の結界だ。誰が来たかはすぐにわかる。」

 天界通信本部社長、蛭子はナオ達を中へ招き入れた。


 その時、エビスが慌てて走ってきた。


 「パパ―!外でパパに会いたいっていうお客さんが……あれ?何でいるの!?」

 エビスは蛭子に向かって叫んだが蛭子の目の前にいるナオ達に首を傾げた。


 「ああ、エビス、彼女達はもうここまで来ている。それから敬語を使いなさい。せめて『どうしてここにいらっしゃるのですか。』と言いなさい。ああ、後はパパが対応するから残りのお仕事に行きなさい。」


 「んん……そう?」

 蛭子の言葉にエビスは納得がいっていない感じだったが素直に頷いた。


 「じゃあ、後はパパに任せるね。じゃ。」

 エビスは訝しげにナオ達を見た後、エレベーターの方へ歩いて行った。


 「まったくあの子は……ゴホン……。さて……では中に入れ。」

 蛭子はエビスに向けた顔とは真逆の厳しい顔つきでナオ達を部屋へ招いた。


 ナオ達は蛭子に連れられて部屋の奥にある座敷に通された。

 ナオ達が座布団に座るのを確認してから蛭子は向かいに座った。

 真ん中に机が置いてあり、不思議と部屋の中はとても涼しかった。


 「それでなんの用だ?」

 蛭子は咳払いをして尋ねた。


 「はい。私達は竜宮の現段階の状態を知りたいのと竜宮へ入るための協力要請に参りました。」

 ナオは臆する事なく蛭子に答えた。


 「私の所には剣王の要請は来ていない。貴方達が勝手に動いているだけだろう。だが、この件に関しては貴方達歴史神に報告しておいた方がいいだろう。」

 ナオ達は剣王に頼まれたと言えなくなった。蛭子にはすべてお見通しのようだった。


 返答に困ったナオ達をよそに蛭子は続きを話し始めた。


 「現在、竜宮はアマテラス大神の第三子天津彦根神(あまつひこねのかみ)が行方不明だ。故にテーマパーク竜宮は閉鎖され、誰も入れなくなっている。気配をまったく感じ取れなくなったことから何者かに封印されたのではとも噂されている。天津が消えてからなぜか禍々しい神力が竜宮から溢れだした。これに私達は警戒している。」


 蛭子は落ち着いてナオ達を見つめた。


 「……竜宮のオーナーが封印ですか……。それで……あなたは竜宮に向かうのですか?」

 ナオの質問に蛭子は小さく頷いた。


 「ああ。内部の様子は見てくるつもりだ。私では力になれそうにないがな。」


 「そんなことはありません。あなたはイザナギ神とイザナミ神の一子ではないですか。」


 「私は両親に海に流された落ちこぼれな神だ。七福神として神力を上げたが天御柱(あまのみはしら)やカグヅチなどと比べられたら悲しくなる。東のワイズ軍にいる天御柱は私の事を知らないかもしれない。そういうレベルだ。」

 蛭子は軽くほほ笑んだ。


 蛭子はナオ達を捕まえる気はないようだ。


 「それでもあなたの神力は遥か彼方ですよ。あなたが竜宮を見に行くならば私も同行したいです。よろしいですか?」

 ナオの発言にムスビが驚きの声を上げていたがナオはそれを流し、蛭子に目を向けていた。


 「まあよいがここ、高天原南は自分の身は自分で守るのが鉄則だ。私は貴方達が危険になっても助けられないぞ。」

 蛭子の言葉にナオは心の中で喜び、安堵の息を漏らした。


 「それで構いません。」

 ナオが深く頷いたが隣にいたムスビは顔色を青くしたまま固まっていた。


 「……では、今から向かうつもりなのだが来るか?」

 「ええ。よろしくお願いします!」

 蛭子にナオはそっと頭を下げた。


 「では向かおうか。」

 蛭子はゆっくりと立ち上がった。



 蛭子に連れられて天界通信本部を出たナオ達はゆっくりと竜宮への道を歩いていた。ここから先は禍々しい神力が渦巻いているため、危険にさらしてしまうとのことで鶴は呼ばなかった。


 暑い中、山道を下り、竜宮に向かう観光道をまっすぐに歩いて行く。蛭子は何も話さずにただ黙々と足を進めていた。ナオ達はただ、蛭子の背中を追いかけて歩いて行くだけだった。


 「おい、ナオさん……これ、本当に大丈夫なのか?」

 ムスビが不安げな顔でナオにそっとささやいた。


 「大丈夫かどうかはわかりませんが彼は私達を罠にはめたり、捕まえたりすることはなさそうですよ。」

 ナオもムスビにならい、小声でささやいた。


 「そういえば……ナオ、ムスビ、イザナギ神とイザナミ神は概念とやらにはなっていないのか?」

 ふと栄次が横から口を挟んできた。


 「ああ、ええっと……イザナギ神とイザナミ神は高天原よりも高い場所にいらっしゃるそうです。世界を創ったとされる造化三神と別天神達と共に。私達では図りきれません。歴史もほとんどわからないのですよ。」


 「そうなのか……。それにはお前は疑問を抱かなかったと。」

 「……ええ。それに関しましては不思議と違和感を覚えませんでした。」

 納得のいっていない顔をしている栄次にナオは首を傾げた。


 ……そういえば……どうして疑問に思わなかったのでしょうか……。


 「まあ、その件についてはいい。もう一つ気になっている。前を歩く男、蛭子神は三貴神と呼ばれるアマテラス大神、月読神、スサノオ尊と兄弟なのではないか?イザナギ神とイザナミ神の息子なのだろう?何か歴史を持ってはいないのか?」


 栄次に問われ、ナオはハッと顔を上げた。


 「……そうです。蛭子はイザナギ神とイザナミ神の第一子です!何か持っている可能性が……。」

 ナオは蛭子に気が付かれぬようにそっと手から巻物を出現させた。


 「ナオさん……怒られるかもしれないよ……。」

 「少し覗くだけです……。」

 小声で心配してきたムスビにナオは軽く頷き、巻物をムスビ経由で蛭子に投げた。


 蛭子は驚いてこちらを向いたがナオの巻物はもうすでに蛭子を廻っている最中だった。蛭子が何か反応を示す前に巻物は光出し、隠れた歴史を映し出した。

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