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旧作(2009〜2018年完結) 「TOKIの世界書」 世界と宇宙を知る物語  作者: ごぼうかえる
四部「明かし時…」隠された神の歴史
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明かし時…3ジャパニーズ・ゴッド・ウォー1

挿絵(By みてみん)

 鏡の世界、(いち)の世界とは対の世界、(ろく)の世界。


 太陽の頂点に立つ神、輝照姫大神(こうしょうきおおみかみ)サキは高天原四大勢力と月神トップ月姫と高天原で会議をしていた。


 長机に座布団が置いてある和風の部屋で神々が緑茶を飲みながら座っていた。


 「……珍しいもんだねぇ……。太陽の姫が会議に顔を出すなんてねぇ。いつも代理だったじゃない。」

 邪馬台国から出てきたような男が髭の生えた顎を撫でながらサキを物珍しそうに見つめた。


 「剣王、今はそんな事を言っている場合ではなかろう……。」

 緑の長い髪を持つ端正な顔立ちをしている男が呆れた顔で髭の生えた男を見つめた。髭が生えた男は緑の髪の男に剣王と呼ばれていた。


 彼は高天原西を統括している武の神、タケミカヅチ神である。通称西の剣王。


緑の髪の男は高天原南内にあるレジャー施設竜宮城のオーナーである天津彦根神(あまつひこねのかみ)である。龍神で人型になるのが苦手らしく、顔のあちらこちらに鱗があり、頭には龍についているようなツノが二本生えていた。


 「うるさいYO!さっさと話を始めろYO!」

 その竜宮城のオーナー天津彦根神の隣にいた赤い髪にサングラスをかけた少女が机をバンっと叩いた。

 

 少女はカラフルな帽子と赤い着物を纏っていた。それにサングラスなのでなんだか奇抜なファッションだ。


 「ワイズの言った通りですわ。剣王、めんどくさいお話はやめましょう。」

 剣王の隣に座っていた白拍子の格好をしている美しい女がため息交じりに置いてある緑茶を飲んだ。その女は赤い髪の少女をワイズと呼んでいた。


 この赤い髪の少女は高天原東を統括している思兼神(おもいかねのかみ)である。本来はお年寄りの姿なのだがなぜだか幼女である。通称、東のワイズ。


 そしてその赤い髪の少女をワイズと呼んだ白拍子の女は月のトップ、月姫である。

 月姫はピンク色の長い髪を払い、サキに目を向けた。


 太陽のトップ、サキは完全にまいった顔で月姫を一瞥して口を開いた。


 「……えっと……冷林はどうしたんだい?」

 「冷林……ああ、あれは何してんだろうねぇ?取り込み中なんじゃなーい?」

 サキの言葉に剣王はてきとうに答えた。


 冷林とは高天原北を統括している縁神(えにしのかみ)である。通称は北の冷林。今は何かあったのか会議を欠席しているようだ。


 「あいつの事はいいYO!それよかさっさと話を始めるんだNE!」

 赤髪の少女ワイズは腕を組んで鼻息荒く声を上げた。


 「わ、わかったよ。実は……太陽で歴史神ナオって女の子が暴れてね……。なんだか片っ端から歴史を見ているようなそんな感じだったんだよ……。時神を太陽神に勝手に変えちゃった罪もあるんだけど、それ以上に太陽で暴れた罪のが重いよ……。あたしは疲れた……もう。」


 サキはとりあえず、太陽であった事を事細かく話した。話を聞いている内に剣王とワイズの表情がだんだんと険しくなっていた。だがサキは特に深入りするわけでもなく、淡々と状況を説明していった。彼らは何か秘密を持っているようだが普通のやり方で話しても絶対に話さない。だから今はとりあえず流す事に決めた。


 「……という事だい。一応、報告しておいたよ。ちなみに太陽は無事だった。それと他の太陽神達も言ってたけどまったく身に覚えのない記憶が頭に流れたって言っているんだ。アマテラス大神の記憶なのでは……と。」


 「……それは輝照姫が気にすることはない。あんたは暁の宮でゆっくり休んでいるといいよ。こっからはそれがし達がちょこっと動くからさ。」


 剣王はサキに何かを隠した笑みを向けた。サキは訝しげに剣王を見たがこの神はどうせ問いただしても何も話さない。サキは尋ねる事なく流した。


 「じゃ、私もちょっと動く事にするYO。霊史直神(れいしなおのかみ)は確か、西の所属だNE。お前の管轄だYO。だが今回は私も協力してやるYO。」


 ワイズはお茶を飲み干すと剣王を睨みつけ、そのまま外へと出て行った。


 「まあ、確かにこれはそこそこまずいねぇ……。ワイズ、今、鶴の手配をするからちょっと待つといいよ。」

 ここは剣王の居城のようだ。剣王は慌てて鶴の手配を始めた。


 「お前達が何かをするというのなら私は大人しくしていよう。輝照姫……この件は奴らに任せろ。今は暁の宮を立て直す事だけを考えるのだ。」

 龍神、天津(あまつ)はサキを心配そうに見ると静かに立ち上がった。


 「まあ、今は何もできないけどね。あたしは……。」

 サキも立ち上がった。


 「わたくしも少し警戒しておきますわ。そのナオって歴史神の事を……。」

 月姫も何かを考えるそぶりのまま部屋を後にした。


 「……。皆、何かしらナオについて思い当たる節があるのかね……。あたしにはさっぱりだよ……。」

 最後まで残っていたサキは不安げな顔で障子戸から見える太陽を眺めた。

 

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