明かし時…2ヒストリー・サン・ガールズ12
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「……それで……これからどうするのだ?」
栄次はムスビの横を歩きながら尋ねた。ムスビは神社の階段を降り、スーパーを横切ると唸りつつ栄次に答えた。
「とりあえず……ナオさんがやっている歴史書店に戻る。」
「歴史書店とは……俺とお前達が会ったところだな。それにしてもお前達は人間には見えないだろう。なぜ現世でそういう店を開いているのだ?」
「栄次、わかってないなあ……。あそこは神向けに作られた本屋だよ。霊的空間だ。人間には見えないさ。」
「ふむ。」
「修行中の低神格の神は高天原に入れないだろう?高天原は修行して神格を高めた神でないと入れない。
つまり、高天原には神向けの書籍が売っているが現世にはないって事さ。生まれたばかりの神格が低い神はどこで情報を収集するか……修行を積みながら手軽に歴史を見れるところはどこか……まあ、そういうわけさ。」
「なるほど。」
ムスビの返答に栄次は大きく頷いた。
「まあ、弐(霊魂、夢の世界)にある神々向けの図書館はどんな神でも使えるけどさ、本の販売はしていないわけ。」
「弐の世界の図書館とは?」
「まあ、そのうち行く事もあると思うけど人間の図書館から霊的空間を潜れば神々の図書館に行けるんだよ。その図書館は弐の世界に入り込んでいる図書館で置いてある本が少し特殊なんだよね。どこの図書館からでも神々専用の図書館には行けるから今度行ってみるのもありだよね。」
ムスビはノリノリで説明すると公園を抜けてナオが経営する歴史書店前へと足を進めた。
歴史書店は道よりも一段下がった所にあり、パッと見は目立たない。
ムスビと栄次はドアを開けて店の中へと入り込んだ。歴史書が所狭しと並んでいる間をぬってレジの先に進むと小さな畳の部屋があった。
「奥に部屋があったのか。」
「ああ。ここがナオさんが寝泊まりしてる部屋。栄次、右側の襖開けて布団出して。」
「わかった。」
栄次はムスビの指示通り右側の襖を開け布団を取り出し、床に丁寧に引いた。
ムスビはその上に優しくナオを寝かせる。
「あー、こりゃあしばらく起きなさそうだ。力を使い過ぎなんだよ……まったく。」
ムスビはナオの靴を脱がせ、部屋の外へ置きに行った。
「……俺が思うに……太陽の姫は俺達が暴れた件を月を含めた六大会議にかけるぞ。そうしたら奴らは俺達を捕まえに来るだろう。ここは店なのだろう?簡単に場所を抑えられてしまうのではないか。」
栄次が靴を置いて戻ってきたムスビに困った顔を向けた。
「……うーん……今はここしか隠れるところを知らないんだよね。とりあえずなけなしの力で俺、結界張っとくよ。」
「そうか……。」
「これから大変だなあ……。しかし、あんたも大変だな。完璧に俺達に巻き込まれている。」
「ん……ま、まあ……そうだな。」
ムスビと栄次はナオの寝顔を眺めながら深く大きなため息をついた。




