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旧作(2009〜2018年完結) 「TOKIの世界書」 世界と宇宙を知る物語  作者: ごぼうかえる
四部「明かし時…」アマテラス大神の歴史
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明かし時…2ヒストリー・サン・ガールズ6

 場所は暁の宮の廊下だ。何階なのかはわからない。アマテラス大神の前に弱々しい瞳で彼女を見ている日女神が立っていた。


 「本当に行くの?わちしはやめた方がいいと思うよ。向こうの世界に行く人間達はきっと違うものを心の糧にして生きていくよ。こちらの世界に残った人間達はわちし達を必要としているよ。だからアマテラス様もここにいた方がいいよ。」


 日女神が泣きそうな顔でアマテラス大神の腕をとる。

 アマテラス大神は首を横に振った。


 「私は万が一のために向こうへ行くわ。万が一のためにね。第二次世界大戦は終わった。これからの人間はきっといままでの人間達とは違うわ。


だから元々一つだった世界がこういうふうに分かれてしまった……。私達やその他の想像をまったく信じなくなった世界……。もし、向こうの人間達が何かにすがりたくなった時のために私が行くの。」


 「アマテラス様……。」

 日女神に背を向けたアマテラス大神はふと思い出したように振り返った。


 「あ、思い出したわ。あなたに私の装飾品である鏡をお渡ししようかと思っていたの。こちらの世界が新しく再構築された時に装飾品だった鏡は装飾品にはならず、あなた達の盾になるでしょう。」


 アマテラス大神は日女神に大きな鏡を手渡した。


 「そ、そんな……こんな高貴なものもらえないよっ!」

 「元気でね。私のお世話係……。」


 アマテラス大神は強引に鏡を渡すとほほ笑みながら去って行った。


 記憶はそこまでだった。またも砂のように流れて消えた。


 「……あれは……わちし?」

 日女神は茫然と先程の記憶を思い返していた。


 「……先程のエンといい、完全に歴史が消去されていますね。」

 ナオは日女神を眺めながらつぶやいた。巻物はまた栄次の中へと吸い込まれていった。


 栄次は巻物が吸い込まれていくのを確認すると戸惑っている日女神に近づき、当て身を食らわせた。


 「うっ……。」

 日女神は小さく呻くとそのまま気を失って倒れた。栄次は倒れ掛かる日女神を優しく抱くとそのままそっと横にした。


 「……すまんな。」

 栄次は気を失っている日女神をすまなそうに眺めた。


 「栄次……助かりました……。」

 ナオも複雑な表情だった。周りの女の太陽神、猿達は日女神がやられてしまった事でさらに怯えていた。


 「は、早いところ先に行きましょう……。」

 ナオはなんだか申し訳ない気持ちになったがサキに会うまで強行で行く事にした。


 「な、ナオさん、なんだか下の階から足音が聞こえるよ。」

 ムスビの言葉にナオは焦った。


 「下の階の太陽神達が目を覚ましたようですね。早く、先に進みましょう!」

 ナオ達はお互い頷くと周りの太陽神達を避けて足早に廊下を駆けていった。



*****


 先程、峰打ちで気を失っていたエンは女達がいる上階に急いで向かっていた。他の男の太陽神、猿達も動ける者達を集め、後から来るように命じた。


 エンは女達がいる五階へと足を進めた。


 「え……エン……。」

 エンが階段を登り切った時、弱々しい女達の声があちらこちらで響いた。皆顔色が悪く、座り込んでしまっている。


 「……お、おい。大丈夫か……。ケガはあるか?すまない……負けてしまった。」

 エンは慌てて女達のケガの具合を見る。見た所、女達にケガはなかった。


 それを確認した後、倒れている日女神が目に入った。


 「に、日女神……しっかりするんだ!……なんて酷いことをするんだ……。」

 エンは日女神を抱き起すと優しく揺すった。


 「う……。」

 日女神がうっすらと目を開け、エンを見た。


 「私だ。エンだ。何をされた?ケガはしているか?」

 「え……エン……。」

 日女神は目に涙を浮かべ、しくしく泣きながらエンにすがった。


 「大丈夫だ。後は私と動ける太陽神、猿達であの者達を捕まえる。……それよりケガは?」


 「ない。……でも……知らない記憶を見た。アマテラス様がいた……。」


 「アマテラス大神……。」

 日女神の言葉にエンは先程の記憶を思い出した。全く覚えのない記憶……。懐かしいとすら感じない記憶だった。


 ……あれは……なんだったのだろう。


 「エン、どうする?あいつらを追うか?」

 ふと男の太陽神に声をかけられた。エンはハッと我に返ると日女神を離し、立ち上がった。


 「……ここから先は照姫とサキ様付きのサルとサキ様がいる。後は壱の世界の勤務の太陽神達、猿達もいる……。他のやつらもサキ様も今はお休みになられている。大勢で行くと騒がしくなるから私ひとりで片をつけよう。」


 「お前ひとりで大丈夫か?」

 太陽神の一神が心配そうにエンを一瞥した。


 「……大丈夫だ。次は捕まえてみせる。」

 エンは小さくそう言うとナオ達を追って軽やかに駆けて行った。


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