かわたれ時…4人形と異形の剣14
城付近まで来たサキとみー君は祭りの雰囲気を眺める為、近くの林に隠れていた。すぐ目の前は神々が通る道路だ。
「うん……なんて言うか、俺達、目立たなそうだな……。」
みー君がぼそりとつぶやいた。道路を歩く神達は皆、もっと奇抜な格好をしている。神々に服装の規制はないらしい。この祭りは何のために行われているのか謎だが皆楽しそうだ。
「ん?あれはなんじゃ?」
かわいらしい顔つきの女の子が魔女っ娘の格好でふと林に隠れていたサキ達を指差した。
「うっ……バレた……。」
みー君は顔を真っ赤にして悶えた。
「お、あの子は西の剣王軍の剣王の側近、流史記姫神、歴史神ヒメちゃんだね。」
サキはにこりと微笑むとそっと手を振った。女の子は「面白い格好じゃなあ。」とニコニコと笑っている。
「わーっ!ヒメちゃん!見てはいけません!あれはあなたには非常に良くないモノです!」
ふと女の子の横に銀髪のユルユルパーマの男が現れた。
キリッとした目の男はいたって普通の洋服をきている。男は女の子の目を自身の手で覆うと「すみません。」とあやまり、足早に通り過ぎて行った。なんだか見てはいけないものを見てしまったという顔をしていた。
「げっ……なんであいつが来てんだよ……。」
みー君はげっそりした顔をさらにげっそりさせて男を眺めていた。
「あの男神と知り合いなのかい?」
「あいつはワイズ軍だ。龍雷水天神。本来龍神なんだがなぜかワイズの所にいるんだよな。ああ、確か、井戸の神の神格も持っててイドさんとか地上の神には呼ばれているみたいだぞ。」
みー君はやれやれとため息をついた。
「へぇ、ああ、こないだアヤが言ってたあの龍神かね。なんで西の剣王軍の側近と仲がいいのか知らないけど彼らにあたし達、気がつかれなかったねぇ。」
サキは少し自信になったのか余裕の表情になっていた。
「ああ……気がつかれなかったな。龍雷は昔からの付き合いなんだ。絶対気がつかれるかと思ったが……。ああ、地味子いるだろ?あの龍神が暴走して竜宮破壊を始めた時に『竜宮を破壊している強い龍神を見に行きましょう』って誘って来たのがあいつだったんだ。一回、お前に知り合いの龍神に誘われてって言ったと思うがそれあいつ。」
「へぇ。」
地味子とは三カ月か四カ月ほど前かに少し大きい事件を起こした龍神のあだ名である。
その事件はすでに解決し、今回は関係がないので地味子についての説明は省く事にする。
「まあ、いい。とにかく行くぞ。」
「そうだね。」
みー君とサキは顔を引き締めると剣王の城に向かい歩き出した。
剣王の城はやたらと派手に装飾されており、普段の西とは違った雰囲気だった。西に遊びに来ている神もいるらしく、かなり賑わっている祭りのようだ。
サキはとりあえず、てきとうに近くにいる神に声をかけた。
「もし……、このあたりで小さい人影をみたのですがあなた、御存知?」
サキがまったくの別神風に話し出した。話しかけられた神はサキだとは気がついておらず、首を傾げていた。
「小さい人影?いや、見てないな。てか、あんた達、凄いカップルだな。」
男の神はサキ達の格好を見て面白いとつぶやいた。
「ほほ……わたくし、このワンちゃんの飼い主ですの。ほら、あいさつをおし!」
サキは鞭でバシッとみー君を叩く。
「うっ!」
……くそ……こいつ覚えてろよ……。
みー君は痛みに顔をしかめながら「わん。」とぶっきらぼうにつぶやいた。
「ははは!あんた、いい犬を連れているな。犬も幸せそうだ。」
男神は笑いを堪えた表情で去って行った。
「何が幸せそうだ!あんのクソ神ィ……。」
みー君は顔を真っ赤にしながら去って行く男の背中を睨みつけた。
「ワン太郎!あんまりワンワン騒いだらお仕置きだよ!」
サキがまたもバシッとみー君の背中を叩く。
「いてっ!馬鹿!それマジでイテェ!つーか、ワン太郎って俺か?俺なのか?」
「ああん……ワン太郎の背中に赤いミミズ腫れ……うふ。」
サキはうっとりした顔でみー君の背中を撫でる。
「おおーい!頼むから戻って来い!」
みー君は背筋につたう冷たいモノを感じながら青い顔で叫んだ。
「はあ……やっぱりあたし、こっちもイケるね。うん。」
「何勝手に納得してんだよ……。」
サキが勝手にうんうんと頷いているのでみー君は盛大にため息をついた。




