流れ時…1ロスト・クロッカー15
「私が……異種?だからその根拠がないって言っているのよ!」
ここはアヤの部屋。
相も変わらず現代神と向かい合う形となっている。
「君はわかってないね。異種は劣化だけを現すんじゃない。歴史と時の力両方持つものを異種と呼ぶんだ。つまり……これから時の神になる者にも適応される言葉なんだ。人間から時の神になる者、時の神から人間になる者……両方の事を異種と呼ぶ。」
「じゃあ、私は……」
「君はこれから時の神になるのさ。向上異種、別名タイムクロッカー。君はなかなか覚醒しなくてね、何度も生まれ変わっているんだよ。君、親と似ていないだろう?」
「……!」
そうだ……
私は親とはまったく似ていない。
母親は私を見ずに自分に似た子供ばかり探していた……。
私も本当の母親を探していた。
病院で生まれた時、すり替えられたのだと思っていた……。
「違う……。私が……時の神?」
「君はしぶとかったし鈍感だった。実は何度も殺そうとしていたんだ。だけどいつも逃げられた。運の良さでここまで生き残った……。だから普通の殺し方じゃ死なないと思っていたからこの計画に出たんだよ。だけど失敗したね。」
現代神は悔しそうな顔でまたこちらに近づいてきた。
「な……なんで私を殺そうとするの?私はこれから時の神になるのよ?」
「だからだよ!」
「きゃっ!」
一気に現代神に距離を詰められたアヤは現代神に押し倒されて仰向けに倒れ込んだ。
現代神はアヤの両手を片手で掴み、もう片方の手にナイフを持ち、アヤをまたぎ押さえつける。
「う……うう。」
動けない……
「僕はね、こう見えて力があるんだ。まあ、一応男だしね。ただの女の子相手に負けるつもりはないよ。」
現代神は無表情でナイフをアヤの白い首筋に当てる。
アヤの身体からは汗が噴き出し呼吸が荒くなってきた。
「はあ……はあ……あ……あなた……まさか今、劣化している時神?」
「そうだよ。僕は劣化異種だ。別名ロストクロッカー。君が強大な力を持って生まれたせいで僕は劣化を始めた……。君が死ねば……現代神が僕だけになるから僕はずっと時と共にいられる……。」
現代神も興奮で息が荒くなる。
「見えてきたわ。あなた……私を殺す理由って自分が死ぬのが嫌だったのね。」
「そうだよ?悪い?君にはわからないだろうけどね。劣化異種、ロストクロッカーは死ぬのを待つか殺されるかのどちらかしか残されていないんだ。僕が劣化していると悟られないように過去神未来神から逃げながら生きなければならなかった。」
「二人をだましたのもそのために?」
「そうだよ。君はもう死ぬから全部言っておくのが慈悲ってもんか。僕は現代神。唯一時渡りができる時の神。時を渡り過去神、未来神に会いに行った。黒フードをかぶったのは彼らに顔が知られるのが嫌だったんだ。過去神、未来神とあらかじめ知り合いになっていたら君に怪しまれるからね。僕の計画もわかっちゃうし。だから顔を隠して現代神と名乗った。それと劣化異種がアヤだと思わせるのにいいと思ったんだ。」
「歴史が狂った説明も二人が時を狂わせているのも茶番だったって事ね。」
「それは違うよ。彼らは歴史を狂わせていたのさ。言ったじゃないか。時神が動かした歴史は時神の管轄になるから時神が動かせるんだって。」
「?」
「だから、僕があらかじめ動かしておいたのさ。僕が動かした歴史をアヤが動かしたと思わせて二人には正義として戦ってもらった。」
「……。」
「あの時、僕はこう言った。のちに異種に騙されている僕が時渡りをしてくる。僕は異種をかばうだろうがその時に、僕に構わず異種を殺してほしいと。過去神の場合はアヤが新撰組という歴史をつくったと教えた。
だから動乱に傾く時代を守るために新撰組を殺そうとしていたのさ。
ちなみに言うと時神が人を殺せるのは時神が動かした歴史の部分だけだよ。
だからあの時、過去神はあそこで新撰組を斬ったんだ。
……えーと……話を戻すよ。
未来神はあの自然共存派戦争がもっと前に起こる歴史だと思っていた。
それが遅らされた事で愛するものを失ってしまう事を僕は教えた。
そうしたら彼は起こるはずの戦争を後回しにし始めたのさ。
ね?彼らは歴史を動かしてしまったんだよ。
そうだ!ちなみに言っておくけど大火は僕が勝手にあの時代に移しただけ。
君を確実に殺せると思ったから。
ちょくちょく時をとめていたのも僕さ。
まあ、君が源平へ時渡りしてしまった時、正直まいったけどね。過去神、未来神に触れてしまったら僕が予言にきたのにもう会っているって事になっちゃうし。」
「会ってしまったわ。」
「そう、だから時神の中での歴史が変わってしまった。ずっと君を必死で追いかけて二千三百年の時に君達を見たんだ。黒フードの僕を追っている事もこの時はっきりした。でも残念な事に僕は君達を見失ってしまった。だから考えを先読みしてあの時計を隠して君達を誘導したんだ。あの時代にね。」
「……最低だわ。あなた、最低よ。そして……哀れだわ。」
「最低でも哀れでもけっこうだよ。僕は……ずっと時と共に生きたいんだ。」
現代神は悲しみを含んだ目を一瞬だけアヤに見せるとつぶやいた。
「じゃあ、そろそろ死んでくれるかい?」




