流れ時…最終話リグレット・エンド・ゴースト18
ウサギがドアを閉めた時、真っ暗な空間にきれいな星々が映った。その中で白拍子の格好をしている女が横たわっていた。女は長いピンク色の髪をなびかせ、ぴくりとも動かずその場にいた。目は閉じられており完全に眠っている。
「あれが月子さんのお姉さんね。」
アヤがぼそりとつぶやく。
「ん?」
真っ暗な空間で突然プラズマが声を上げた。
「どうしたの?」
「身体が浮いてないか?」
アヤはプラズマの声で自分が浮いている事に気がついた。足が地面についていない。
「何よこれ……。まるで無重力じゃない。」
「ここは宇宙って事か?」
「こっちであります!ウサギンヌ!」
気がつくと遠くでウサギが手招きをしていた。いつのまにそこに行ったのか。
アヤ達は半分泳ぎながら月子さんのお姉さんを通り過ぎてウサギの元へ行った。この空間はどこまでも続いているように見えた。
「けっこう、進むの大変ね……。」
「だな……。」
「下を見るであります!」
ウサギは足元を指差した。アヤ達もそれにならい下を見る。
「……!」
遥か下で様々な空間がぐちゃぐちゃにくっついていた。雪国の横で真夏の太陽が海を照らしていたり、ロボットが動き回っていたり、時代もめちゃくちゃだ。
「これは現世に生きる命の夢であります。これらは心の表面。弐の世界の表でごじゃる。」
「これが表……。」
もうこの段階で入るのは躊躇われる。この無数にある夢の中に心の神髄があり、そして霊が住む空間がある。
ここから栄次の心を探すのは困難に思えた。夢が邪魔して心の世界を覗くことができない。特に人間は本心を隠す生き物だ。
何か絶対に隠したい事を持っているものだ。その心をかばうように夢が覆っている。第一、栄次の夢すら見つけ出せる自信がない。
「ちょっと……どうするのよ……。」
「探すしかないだろう……。時神の勘でな。」
プラズマの頬には汗が伝っていた。
「はあ……。」
アヤは深いため息をついた。




