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『悪役令嬢ですが、周囲が全員「狂人」しかいないので、婚約破棄イベントが世界崩壊の引き金になりました』  作者: 限界まで足掻いた人生
『勇者転入(ハードモード)編』

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第22話:『期末テストは、白紙(ヴォイド)による概念消去戦』

「ペンを置け、愚民ども。これより『知能選別テスト』を開始する」


試験会場となる大講堂。 教壇に立つのは、全身に経典のタトゥーを刻んだ**『知識の悪魔』**こと、テクスト教授。 彼の授業は、間違えた答えを書くと脳細胞がインクに変わって鼻から垂れ流されるという、学園屈指のデスゲームだ。


「制限時間は50分。……生き残りたければ、正解こたえを刻め」


バサァッ!! 配布されたテスト用紙が、まるで生き物のように机の上で脈動した。


「ヒッ……!?」


ヒカルが息を呑む。 問題用紙に書かれた文字が、紙から浮き上がり、黒い蛇となって鎌首をもたげている。


『問イ、1。世界ノ真理ヲ記述セヨ……間違エバ死……』


「うわぁぁぁ!? 問題文が物理的に噛みついてきたぁぁ!?」


「動くなヒカル! それは『文字化け(ミミック)』だ! 読むと網膜から情報を食われるぞ!」


リュウガが叫び、自身の机にドォン!! と拳を叩きつけた。


「フン……。テストだと? 笑わせるな。これは我々への**『呪詛詠唱』**だ」


リュウガは筆箱からシャーペンを取り出し、へし折った。


「筆記用具など不要! ……シオン、ヒカル! 『回答』の準備はいいか!」


「ええ、いつでも。……インク切れになるまで泣かせてあげる」 「くそっ、もうヤケだ! やってやるよ!」


カァァァン!! 開始のチャイムが、戦闘開始のゴングと化した。


「ギャアアアア!!」 問題用紙の文字たちが実体化し、無数の**『文字ゴーレム』**となって生徒たちに襲い掛かる。 「因数分解」の文字が鋭利な刃となり、「歴史年号」が鎖となって手足を縛る。


「くっ、数式ごときが! 俺の筋肉りくつに縛れるかぁ!」


リュウガは襲い来る「二次関数」の放物線を素手で掴み、ベキバキとねじ切った。


「問1の答えは……これだぁぁぁ!!」


彼は「回答」として、拳に纏った闘気をテスト用紙に叩き込んだ。 ドゴォッ!! 回答欄に答えを書くのではない。**「回答欄そのものを粉砕する」**という、暴力による解法。


「あら、野蛮ね。私はもっと優雅に解くわ」


シオンは扇子を一閃させた。 彼女が操るのは、毒の混じった**「修正液の霧」**。


「――『存在抹消ホワイト・アウト』」


シューーーッ!! 白い霧が触れた瞬間、襲い来る難問たちが「シュワァ……」と音を立てて溶けていく。 「難しすぎて読めない漢字」も「長文読解」も、全てが真っ白な虚無へと還元された。


「すごい……! 問題を解かずに『消して』いる!?」


ヒカルは戦慄した。これが悪の組織のテスト勉強……! だが、テクスト教授も黙ってはいない。


「愚かな……。知を拒絶する者には、罰を与えよう」


教授がチョークを折る。 黒板に書かれた巨大な魔法陣が輝き、講堂全体が**「超重力試験空間」**へと変貌した。


ズシィィィィン!!


「ぐ、おぉぉ……!? なんだ、このプレッシャーは……!?」


「これは……『平均点の重圧プレッシャー』だ! 赤点を恐れる心が重力になって俺たちを押し潰す!」


リュウガが膝をつく。 ヒカルも床に這いつくばった。 このままでは、精神が「E判定」に押し潰され、廃人になってしまう。


「くそっ……! どうすれば……!」


ヒカルは必死に思考した。 前世の優等生だった自分なら、ここでペンを取って正解を書いただろう。 だが、今は違う。


「書くな……書いたら負けだ……! 俺たちは『反逆者』だろぉぉ!!」


ヒカルは、懐から一枚の切り札を取り出した。 それは、彼が昨晩徹夜で作った、「何も書いていない予備の答案用紙」。


「リュウガさん! シオンさん! 合体技です!」


「おう!」 「ええ!」


三人は円陣を組んだ。 リュウガの「闘気」、シオンの「修正液」、ヒカルの「白紙」。 三つの「拒絶」を重ね合わせる。


「食らえ、管理者よ! これが俺たちの……**『完全放棄オール・ブランク』**だぁぁぁ!!!」


三人は同時に、真っ白な答案用紙を教壇へ向かって投げつけた。


ヒュンッ!!!


それはただの紙切れではない。 「回答を拒否する」という強固な意志が込められた、「概念兵器」。 テスト用紙に何も書かないことで発生する「虚無(ゼロ点)」のエネルギーが、空間に穴を開ける。


カッッッッ!!!!


白紙がテクスト教授の魔法陣に接触した瞬間、強烈な閃光が走った。 「知性」と「拒絶」の対消滅。


「バ、馬鹿な……!? 私のテスト(呪い)が……白紙化キャンセルされていくぅぅぅ!?」


テクスト教授の悲鳴と共に、黒板の魔法陣がガラスのように砕け散った。 襲いかかっていた文字ゴーレムたちも、白紙の光に焼かれ、ただのインクのシミへと戻っていく。


ドォォォォン!!


爆風が吹き荒れ、試験会場の窓ガラスが全て吹き飛んだ。


静寂が戻る。 瓦礫の山となった講堂で、三人は肩で息をしながら立ち尽くしていた。


「……終わったか」


リュウガが、ボロボロになった答案用紙(真っ白)を拾い上げる。


「0点だ。……だが、俺たちは生き残った」


「ええ。私たちのプライドは守られたわ」


テクスト教授は、白目を剥いて教壇の下で気絶している。 「採点不能……採点……不能……」とうわ言を呟きながら。


彼らは、テストで高得点を取ったわけではない。 ましてや、哲学的な回答だと評価されたわけでもない。 ただ、**「テストというシステムそのものを物理的に破壊した」**のだ。


「帰るぞ。……腹が減った」 「購買で、また売れ残り(廃棄処分)を買い占めましょうか」

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