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『悪役令嬢ですが、周囲が全員「狂人」しかいないので、婚約破棄イベントが世界崩壊の引き金になりました』  作者: 限界まで足掻いた人生
『勇者転入(ハードモード)編』

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第21話:『午後の授業は、睡魔と弾幕のドッグファイト』

「聞け、同志たちよ。これより『意識の解放』を行う」


5限目、現代魔法史の授業開始直前。 リュウガは机に突っ伏しながら、鋭い眼光で宣言した。


「支配者(教師)は我々に『起きていろ』と強要する。だが、夢の世界こそが真の自由フロンティア。……授業中に堂々と寝る。これこそが、管理社会への最大の**『精神的クーデター』**だ」


「フフ……。夢の世界で会いましょう、リュウガ」 「了解です! 俺の『絶対防御障壁』で、安眠スペースを死守します!」


シオンがアイマスクを装着し、ヒカルが机の周りに結界石を並べる。 彼らは本気だ。 たかが居眠りではない。これは**「睡眠導入」**を賭けた防衛戦争だ。


キィィィィン……。


チャイムと共に、教室の空気が凍りついた。 扉が開く。入ってきたのは、銀縁メガネの神経質そうな男。 特別講師、ヴェクター教授。 「幾何学魔法」の権威であり、チョーク一本でドラゴンを撃ち落とすと噂される**『人間計算機』**だ。


「……授業を始めます。出席を取る時間も惜しい。黒板の数式を写しなさい」


ヴェクターがチョークを構える。 その瞬間、彼の殺気(教育的指導)が、教室後方のリュウガたちをロックオンした。


「……寝ているゴミが3匹。排除係数、計算完了」


ヴェクターの手首がブレた。 ヒュンッ!! 彼が投げたチョークが、音速を超えてリュウガの眉間へと迫る。


「甘いな、インテリ野郎」


リュウガは目をつむったまま、片手で教科書を盾にした。


ドォォォン!!


チョークが教科書に着弾し、爆発した。 教室が揺れ、前の席の生徒たちが悲鳴を上げて避難する。


「なっ……!? 硬化強化エンチャントされたチョークを防ぐだと!?」


「俺の教科書は読むもんじゃねえ……。『枕』であり『盾』だ」


リュウガが教科書(厚さ5センチの鈍器)を構え直す。 その背後で、ヒカルが叫んだ。


「させませんよ! 展開――『聖域・安眠結界サイレント・ゾーン』!!」


ヒカルを中心に、青白い半球状のバリアが展開される。 外部からの物理攻撃と騒音を遮断し、内部を「最適な室温と湿度」に保つ、対・教師用鉄壁フォーメーション。


「ほう……。結界魔法か。だが、計算が甘い!」


ヴェクター教授が空中に数式を描く。

$$\lim_{x \to \infty} \frac{Chalk^2}{Pain} = Destruction$$

「無数に降り注げ! 幾何学弾幕ジオメトリ・レイン!!」


彼の手から無数のチョークが増殖し、ガトリングガンのように連射された。 ダダダダダダダッ!!


「うわぁぁぁッ! 結界が削られるぅぅ!?」


ヒカルの結界に、無数の白線が突き刺さる。 ただのチョークではない。それぞれが「跳弾角度」を計算されており、結界の死角を正確に抉ってくる。


「シオン! 反撃だ!」 「ええ、任せて。……いい香りで包んであげるわ」


シオンが扇子を一振りした。 そこから紫色の霧が噴出する。


「――状態異常魔法:『紫煙の誘惑アロマ・テラピー』」


教室中に、ラベンダーとカモミールを煮詰めたような、強烈な「眠気」の霧が充満する。 本来はリラックス用だが、彼女が使うと**「強制気絶ガス」**となる。


「ぐっ……!? 視界が……意識が……!?」


ヴェクター教授がよろめく。 計算式が乱れ、チョークの弾道がズレて天井や窓ガラスを粉砕していく。


「今だ! ヒカル、とどめだ!」 「はいッ! くらえ、俺の必殺技!」


ヒカルが机の下から取り出したのは、巨大な**「低反発枕」**だった。 彼はそれをハンマー投げのように振り回す。


「『強制就寝打法グッドナイト・スマッシュ』!!」


ブォンッ!! 遠心力を乗せた枕が、ヴェクター教授の顔面に直撃した。


バフッ!!


「計算……不……能……。おやすみ……なさ……い……」


教授は白目を剥き、その場に崩れ落ちた。 あまりに気持ちの良い枕の感触に、即座にレム睡眠へと叩き落とされたのだ。


「……勝ったか」


リュウガがフッと笑い、机に突っ伏した。


「見たか。これが我々の勝利(二度寝)だ……」


三人は、半壊した教室の瓦礫の中で、スヤスヤと寝息を立て始めた。



「……何よこれ」


騒ぎを聞きつけてやってきたエリザベートとソフィアは、その惨状に絶句した。 壁には無数のチョークが突き刺さり、窓は割れ、教壇では教師が枕を抱いて爆睡している。 そして、その後方で、神々しいバリアの中で眠る三人の不良たち。


クラスメイトたちが、震えながらエリザベートに報告する。


「す、すごかったわ……! ヴェクター教授が突然発狂して、生徒をチョークで攻撃し始めたの!」 「それを、あの転校生たちが……身を挺して防いでくれたんだ!」 「毒ガスで教授を鎮静化させて……最後は優しく枕で寝かしつけるなんて……!」


彼らの目には、こう映っていた。 『スパルタ教育の暴走を止めた、心優しきダークヒーローたち』。


「違う。絶対違う」


エリザベートは頭を抱えた。 あいつらはただ、全力で昼寝をしたかっただけだ。 結果的に、学園最強のトラウマ教師・ヴェクター教授を物理的に黙らせてしまったが。


「……まあ、いいわ」


ソフィアが、倒れている教授の顔に落書きをしながら言った。 「あの教授の声、黒板を爪で引っ掻く音みたいで不快だったの。……静かになってせいせいしたわ」

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