表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『悪役令嬢ですが、周囲が全員「狂人」しかいないので、婚約破棄イベントが世界崩壊の引き金になりました』  作者: 限界まで足掻いた人生
『勇者転入(ハードモード)編』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/23

第19話:『深夜のプール占拠は、環境保全活動という名の反逆』

「おい、新入り。今夜決行だ」


放課後の部室(空き教室を不法占拠したアジト)。 リュウガが重々しく告げた。 ヒカルは緊張した面持ちで頷く。


「ついに……やるんですね。悪の組織らしい活動を」


「ああ。学園の管理体制に風穴を開ける。……ターゲットは『屋外プール』だ」


リュウガが地図を広げた。 彼らの計画はこうだ。 深夜、施錠されたプールに侵入し、誰の許可も得ずにそこを使用する。 それは「規則」への挑戦であり、自由の証明だ。


「フフッ……。夜のプールで泳ぐなんて、背徳的でゾクゾクするわね」


シオンが妖艶に笑う。 ヒカルもゴクリと唾を飲んだ。 (夜の学校への不法侵入……! これぞ不良! これぞ青春!)


深夜2時。 闇に紛れて、三人はプールサイドに立った。 月明かりが水面を照らしている。


「よし、作戦開始だ。……まずは『整地』から始めるぞ」


リュウガが取り出したのは、デッキブラシだった。


「え?」


ヒカルが声を上げる。


「リュウガさん、泳ぐんじゃないんですか?」


「馬鹿野郎。今のプールを見ろ」


リュウガが水面を指差す。そこには落ち葉が浮き、底には藻が生えていた。


「こんな汚れた水は、我々『高潔な反逆者』には相応しくない。まずはここを、我々の美学に見合う『聖域』に作り変える」


リュウガは真剣な眼差しで言った。


「これは掃除ではない。……『テラフォーミング(惑星改造)』だ」


「テラフォーミング……!」


ヒカルは戦慄した。 ただの掃除を、そこまで壮大な思想に昇華させるとは。やはりこの人たちは格が違う。


「分かりました! 俺もやります!」


「いい心掛けだ。シオン、お前は水質検査(塩素投入)を頼む」


「了解よ。……全ての菌を死滅させてあげるわ」


こうして、真夜中のプールで、男たちの熱い「反逆(大掃除)」が始まった。 リュウガが鬼の形相でデッキブラシをかけ、ヒカルが網で落ち葉をすくい、シオンが完璧な比率で塩素を混ぜる。


1時間後。 プールは宝石のように輝いていた。


「美しい……。これが俺たちの『自由』だ」


リュウガが満足げに汗を拭う。 結局、一秒も泳いでいない。だが、彼らの心は達成感で満たされていた。


「おい、そこで何をしている」


突然、懐中電灯の光が彼らを照らした。 見回りに来たエリザベート(対不審者用スタンガン装備)だ。


「ゲッ! 風紀委員(じゃないけど実質ボス)だ!」


ヒカルが慌ててデッキブラシを隠す。 しかし、リュウガは堂々と胸を張った。


「フン……見つかったか。だが遅い。既に我々の『儀式』は完了した」


リュウガはピカピカになったプールを背にして、不敵に笑った。


「見ろ、この輝きを。我々が管理者の支配を脱し、この場所を『理想郷ユートピア』に変えた証だ」


エリザベートは、チリ一つないプールサイドと、完璧に調整された水質を見て、呆れたように溜息をついた。


「……アンタたち、何しに来たの? ただのボランティア清掃?」


「ボランティア? 笑わせるな。これは支配へのレジスタンスだ。……我々は、汚れた世界プールを許さない」


リュウガたちは「ふっ、今日のところはこれくらいにしてやろう」と言い残し、風のように去っていった。 残されたのは、業者レベルで綺麗になったプールだけ。


「……あいつら、何なのよ」


エリザベートはスタンガンをしまった。 害はない。むしろ有益だ。 ただ、思考回路が致命的にバグっていることだけは確かだった。


翌日。 水泳部の部員たちが「神様が掃除してくれた!」と歓喜する中、リュウガたちは屋上からそれを眺め、ニヒルに笑っていた。


「ククク……愚かな一般生徒どもめ。我々が整えた水とも知らずに喜んでいるな」 「罪深いわね、私たち」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ