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第59話 なんかすごい適当なキャラ付け

 










 ガチでビビる俺と綺羅子。

 教師……ではない気がする。


 同じ場所にこんなぞろぞろといないだろう。

 監督役として、それぞれのクラスに分かれているはずなのだから。


 じゃあ、こいつらは誰なんだ?

 ここら一帯は特殊能力開発学園が所有している私有地で、赤の他人が入り込むことはできないはずだ。


 じゃあ……。


「幽霊か……」

「ぴゃあああ……」

『思ってもいないことを言ってビビらせるのは止めなよ……』


 ガクガク震える綺羅子を見て、ニヤニヤする。

 怯える綺羅子が面白くてたまらない。


 顔を真っ青にしてしがみついてくる様は、何と愉快なことか。

 録画して一生にわたって見たい。


 そんで、ずっとこいつの眼前でバカにしてやりたい。


「……しかし、何だこいつら」


 ガッツリ軍人だ。

 いや、軍服コスプレイヤーという可能性も捨てきれないが。


 でも、私有地に入ってくるか?

 ……ああ、モラルがないパターンのコスプレイヤーね。


 分かる分かる。


「――――――?」

「――――。――――」


 めっちゃ外国語使っている……。

 何語だよ、分かんねえよ。


 ここは日本だぞ。

 日本語喋れボケェ。


 そんなことを考えていると、コスプレイヤーたちがゆっくりと近づいてくる。

 おやおやあ? なんか不穏な空気だぞぉ?


「ちょ、ちょっと。なんでにじり寄ってくるのよ……!?」

「どうぞ」

「この期に及んで私を押し出してんじゃないわよ!!」


 ぐいぐいと綺羅子の小さな背中を押し続ける。

 明らかに様子がおかしい。


 とりあえず、綺羅子を囮にして逃げなければいけない。

 そして、訳の分からん外人軍隊から距離を取ろう。


 にじり寄ってくる軍隊。

 押し付けられる綺羅子。


 両者の距離がどんどんと近くなっていく。


「ああああああああああああ! もう無理いいいいいいい! やられる前にやるわ!!」


 恐怖で発狂した綺羅子。

 特殊能力である深紅の槍を生み出す。


 ば、馬鹿やろう!

 それ、爆発するやつだろ!?


 こんなに近くに俺がいるのに、あんな威力の爆発を引き起こすな!

 自分のことを考えるな!


 俺のことを考えろ!!


「――――!」


 軍人たちは何かを取り出していた。

 丸い、薄い板みたいなものだ。


 それが光ると、光の壁が出来上がる。

 え、なにそれずるい!


 俺にも寄こせ!!


「死ねええええええ!!」


 なんて思っていたら、発狂した綺羅子が『爆槍』をぶん投げた。

 運動音痴のこいつが投げたとは思えないほどの速さで突き進み、軍人たちが構える光の壁にぶつかり……。


 あっけなくその障壁を破壊すると、ご自慢の大爆発。


「ぐおおおおおお!? 死ぬううううう!?」


 とんでもない爆風が吹き荒れる。

 空高くまで爆炎が上がり、巨大な木々は容易くなぎ倒される。


 やっぱり、個人がこんな威力の攻撃を出せるとかおかしいだろ。

 怖いわ、こいつ。


 なんか軍人たちはしようとしていたが、それごと綺羅子がぶっ飛ばした。

 威力えぐい……!


「うわぁ……」


 爆発が収まると、そこはまさしく死屍累々。

 にじり寄っていた軍人たちは、はるか遠くに倒れ伏している。


 うーん、この地獄絵図……。


「お前……やりすぎだろ……」

「……幽霊って、殺せるのね」

「恍惚とするな」


 唖然として言えば、なぜか頬を赤らめてやってやった感を出している綺羅子。

 多分、今まで怯え続けていた幽霊を倒せることに気づいてウキウキなんだろうなあ。


 さて、今からこいつを天国から地獄に叩き落します。


「というか、あいつら消えてないだろ。つまり、あいつらは人間だ」

「……え? 人間?」


 倒された幽霊は消えるのが常識だ。

 ……いや、常識かは知らんが、たぶんそんな感じだろう。


 で、綺羅子にぶっ飛ばされた軍人たちは、誰も消えていない。

 実体を持って倒れたままである。


 すなわち、あれらは人間だということだ。

 そして、はるか遠くに人体をぶっ飛ばすほどの攻撃をした綺羅子。


 俺は彼女の細い肩にポンと手をのせ、にっこりと笑って言った。


「さらばだ、死刑囚」

「死刑判決出ること確定なの!?」

「そりゃお前……。複数人殺したら間違いなく死刑だろ。しかも、特殊能力を使ったら……」


 基本的に、特殊能力の扱いには厳しい制限がつけられている。

 誰にでも発現するものじゃないし、人を簡単に殺せるような力もあるからだ。


 多くの人がいる公の場所で使用していれば、すぐに警察……というより対特殊能力に特化した部隊が飛んできて捕まる。

 別に危険なことをしていなくても事情聴取されるほどなのだから、今こうして人を複数人ぶっ飛ばした綺羅子がどうなるのかは容易に想像がつく。


 綺羅子は嫌々と首を横に振る。


「い、嫌よ! どうして私があんな悍ましい場所に向かわないといけないの? 豚箱じゃなくて私がいるべきは豪邸よ!」

「違うぞ。ゴミ箱だぞ」

「は?」


 つ、つねらないで……。


「と、とりあえず、この状況を隠ぺいして……」


 わたわたと慌てる綺羅子を見て、俺はニッコニコである。

 こんなに笑顔になれたことはあるだろうか?


 そう思えるほどに。

 少なくとも、こんな純度の高い笑みを浮かべられたのは初めてかもしれない。


 ありがとう、綺羅子。

 そして、さようなら。


「あれだけでかい爆発音を出していたら、教師も見に来るだろ。もう無理だぞ、お前」

「ま、まだよ……! まだあきらめないわ! あなたのせいに全部してしまえば……」

「貴様……!」


 こ、こいつ!

 この期に及んでなんてことをしようとしてやがる……!


 というか、俺の特殊能力に爆発を引き起こすものなんてねえよ!

 俺は余計なことをさせないために、綺羅子に襲い掛かる。


「ちょっ……!? 抱き着いてこないでよ、変態!」

「襲い掛かったんだよ!」

「変態!」

「ち、違う!」


 何を勘違いしているんだ、この女ぁ!

 俺は怒りのままに綺羅子に飛びかかる。


 当然、貧弱脆弱なこいつでは俺の身体を受け止めることはできず、身体を大きくのけぞらせて……。

 つい先ほどまで俺たちがいたところに、剣が突き刺さった。


 ……おや?


「…………」

「…………」


 俺と綺羅子は顔を見合わせる。

 ガキン! と高い音が鳴ったから、金属であることは間違いない。


 つまり、ちゃんとした本物の剣だということだ。

 ……俺たち、殺されかけた?


 恐る恐るそちらを見ると、剣の柄の上に、一人の女が立っていた。

 なんで曲芸みたいなことをしているんだ、こいつ。


 そして、その姿はとても特徴的だった。

 なにせ、チャイナ服を着ているのだから。


「あれ? うまく殺せなかったヨ。残念」

「……えーと、どちら様?」


 めちゃくちゃ物騒なことを言っているチャイナ女に聞いてみる。

 すると、剣の上に立ちながら、キョトンと首を傾げて言った。


「……内緒アル!」


 なんかすごい適当なキャラ付けされた奴が出てきた……。




過去作『破壊神様の再征服』の書籍第一巻が4月25日に発売されます。

加筆も何万字かしているので、ぜひよろしくお願いいたします!

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