表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/119

第23話 気が済まねえ……!

 










「え、白峰くんの攻撃が消えた?」

「攻撃を途中でやめたのかな?」


 光太の攻撃が霧散したことに、戸惑いを隠せないクラスメイトたち。

 防いだ様子もなかったため、攻撃した彼自身が取りやめたのだと考える者が多い。


 そうでないことを知っているのは、教師である浦住と彼の能力を知る幼なじみの綺羅子である。


「お前の幼なじみは、随分とした特殊能力を持っているようだな」

「自慢の幼なじみなんです(なによ、あのチート。私が欲しかったんだけど)」


 ニッコリと笑いながら、内心では嫉妬心を燃え上がらせる綺羅子。

 鬼を一撃で破壊する威力を持つ特殊能力も、充分チートである。


 隣の芝は青く見える。

 それが、良人のものであれば、なおさらだ。


「あいつは何か特別な家系なのか?」

「いえ、普通ですよ(親はあれだけど)」


 光太のように、白峰家という優れた家系ならば、あれだけ強い特殊能力も理解できる。

 無効化というのも、頭が二つも三つもとびぬけるほどの優秀な力だ。


 それが、突然変異的に良人に発現したというのは、なかなか考えにくいことだった。


「そうか。鬼を倒したことから、お前と同時に興味深いと思っていたが……」


 じっと浦住は良人を見る。

 その濃い隈は健在のものの、見るからに気だるそうな目は、その色をなくしていた。


 観察している。

 無機質な、実験体を見るような目だった。


「面白いな」


 そして、その目は良人だけでなく、綺羅子にも……。


「(……なんか私も目をつけられていない? 良人を上げるから、私のことは見逃しなさいよ)」


 とりあえず、良人を売ることにする綺羅子であった。











 ◆



「く、クソ! これが隠木の言っていた無効化か。どれだけでたらめなんだ!」


 何度も懲りることなく、光弾を放ち続ける光太。

 実をいうと、彼はちゃんと手加減していた。


 このデモンストレーションで人殺しにはなりたくない。

 それだけの威力があるのが、特殊能力である。


 しかし、焦りからか、その手加減は完全に忘れて、本気の攻撃を仕掛け続ける。

 そして、それはことごとく良人によって無効化されていた。


「(うわぁ、すっごい光。まぶしいわ。何にも見えねえ)」

『すっごい余裕』

「(だって、俺この状況でできることなんて何もないし。ひたすら過ぎ去るのを待つしかできねえわ)」


 頭の中の異分子は余裕と言っているが、それは正しくない。

 諦観である。


 ぶっちゃけ、何が起きているのかすらさっぱり分からないのが、今の良人である。

 本気の光弾は非常に大きく、まばゆい。


 目の前でフラッシュが起きたと同時に、ドン! とすさまじい音が鳴り響く。

 これ、特殊能力がなかったら死んでいるよな?


 良人は死んだ目で考えていた。


「(というか、この力きもくない? 何もするつもりないのに、勝手に消えていくし。怖いわ)」

『自分の力をろくに理解していないし怖がるしでツーアウトだね』

「(最近目覚めたばかりの力に何言ってんだ、このバカ)」


 やることがないので、ひたすら何かと会話をする良人。

 その間も光太は絶やすことなく攻撃を仕掛け続け……そして、それが良人に当たることは一度もないのであった。


「はあ、はあ……っ!」

「俺に君の力は通用しないよ。今までの攻撃で、分かってくれたと思うが」

『よくわからなくて気持ち悪いとか言っていたくせに、この余裕の演技は凄い』


 疲弊しきった様子の光太を見て、一転攻勢に出る良人。

 決め顔を披露しているものだから、見た目の良さも相まって、クラスメイトたちからの黄色い歓声を浴びる。


 綺羅子はその状況にイラっとして、中身はヘドロのくせに、と自分のことを棚に上げて思っていた。


「認めたくないが、確かに君の言う通りだね。認めてあげよう。君の力は、強大だ。僕の特殊能力では、突破することはできない」

「ふっ、ならやるべきことは分かっているだろう?(降参しようと思っていたけど、勝てそうだわ。よっしゃ、こいつのメンタルをボコボコにしてやろう)」


 このまま勝利をおさめて、気分よくなる。

 そして、綺羅子は差し出して寛容性をアピールし、邪魔者を押し付ける。


 完璧な作戦を考え出した。

 その間、0.01秒である。


「ああ、そうだね。特殊能力が通用しないのであれば……」


 肩で息をしてうつむいていた光太。

 次の瞬間、彼の姿は良人の目の前にあった。


「直接、攻撃するしかないよ」

「はあ!?」


 唐突に現れたように感じる良人。

 唖然としているうちに、光太の拳がうなりを上げて迫る。


「ぐぉっ!?」


 とっさに腕でガードするが、メキッと拳がめり込んで激痛が走る。

 痛くて泣きそうになった。


『うわぁ、痛そう。大丈夫?』

「(大丈夫なわけあるか! こ、こいつ、俺の美しい顔めがけて普通に殴りかかってきたぞ! 正気か!?)」

『正気だよ』


 その間も、猛烈なラッシュが良人を襲う。

 的確に人体の急所を狙う攻撃に、翻弄されっぱなしだ。


 顔だけは、顔だけは傷つけさせない!

 必死にガードを続ける良人。


「(というか、そもそもこれって特殊能力のデモンストレーションだろ!? なんでそれを捨てて肉弾戦をしているんだよ! 止めろ浦住ぃ!)」


 特殊能力のデモンストレーションが完全に吹っ飛び、もはや普通の戦闘である。

 そう、喧嘩も超えた戦闘なのだ。


 良人が耐えきれるはずもない。

 ちらっと浦住たちを見るが……。


『それは確かに。……でも、止める気なさそうだよ。あと、幼馴染の子がめっちゃ楽しそうに笑ってる』

「(クソロリゴリラぁ! 綺羅子ぉ!)」


 怒りが溢れ出す。

 しっかり監督しろよ、ボケナスぅ!


「がっ、ぐっ……!」


 そのさなかにも、光太の鋭い攻撃は続く。

 ろくに喧嘩したことがない……というよりも、喧嘩になる前に言動で圧倒していた良人は、なすすべがない。


「僕は小さなころから鍛えられている。それは、特殊能力だけじゃなく、格闘技術もね」


 消えたと良人が考えたのも、それは光太の武術だ。

 特殊能力では、その力の差がはっきりと出る。


 良人の無効化を、光太の光で圧倒することはできないだろう。

 だが、体術ならば、一方的に攻撃し続けることが可能だった。


「さあ、降参するんだったら、今のうちだよ! 僕、君を痛めつけて喜ぶ趣味は持ち合わせていないからね」

「がはっ……!」


 腹部にめり込む拳。

 吐しゃ物をまき散らしたくなる本能的な行動を、意地とプライドと虚栄で抑え込む良人。


『まあ、確かに分が悪いし、ちょうどいい感じじゃない? むしろ、白峰家と互角に渡り合ったんだから、評価も上がっているだろう。もともと、綺羅子のために戦いに応じたから、なおさらね。そろそろ、計画通りに白旗を上げたらいいんじゃない?』

「(ああ、普通はそうだよな。俺もそのつもりだったけど……)」


 脳内の声の言っていることは間違っていない。

 今、何かいい感じに降参すれば、評価は下がらないどころか上がることだろう。


 だが、それでも……!

 きっと鋭い目を光太に向ける。


「こんな一方的にやられて、白旗を上げるわけにはいかないな……!(俺と同じ、いや、俺以上の苦痛を味わわせないと、気が済まねえ……!)」

『全力で道連れにしようとする気迫を、もっと前向きなことに使えないのかな……?』


 呆れた脳内の声。

 当然それが聞こえていない光太は、さらに拳を振り上げた。


「ほらほら、さっさと降参しなよ。これ以上痛い目にあいたくなかったら、ねっ!」


 そして、彼の拳が良人を……。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

新作です! よければ見てください!


守銭奴無自覚ブラコン妹と盲目ヤンデレいじめっ子皇女に好かれる極悪中ボスの話


書籍第1巻、発売します!
書影はこちら
i769407

過去作のコミカライズです!
コミカライズ7巻まで発売中!
挿絵(By みてみん)
期間限定無料公開中です!
書影はこちら
挿絵(By みてみん)
挿絵(By みてみん)
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ