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【書籍化作品】呪いの魔剣で高負荷トレーニング!? ~知られちゃいけない仮面の冒険者~【Web版】  作者: こげ丸
第二章 『変わりゆく世界』

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【第84話:決意を胸に……】

 さらに数日が経とうとしていた。


 ソラルの街の内外には、まだその傷跡が多く残っているが、徐々にだが復旧が進められている。

 これは、スノア殿下がすぐに王都に戻り、今回の件を国の問題として捉え、各種援助をして貰えることになったのが大きい。

 もちろん物資などの直接的な支援はまだ届き始めた所だが、それを見越して動けていたので、ソラルの街に住む人も思っていたよりは早く日常生活を取り戻せそうだ。


 そして3人となったオレたち新生『剣の隠者』も、ようやく今日、王都へと向けて出発する事になっていた。


「トリスくん、王都までの護衛の依頼って、何て名前の商会さんだっけ?」


 ただ、そのままただ王都へ向かうのも何なので、メイシーの提案で王都までの行商人の護衛の依頼を受けていた。

 もちろん、ただの護衛依頼なので、『仮面の冒険者』としてではなく『剣の隠者』として受けた依頼だ。


「たしか、ソルナート商会で、馬車にはわかりやすく赤い布を巻きつけておくって聞いているけど……」


「おっ? あれやないか? ほら、門の一番近い所に停まっている馬車」


 ソラルは小さな街なので、門前広場にも数台の馬車しか停まっておらず、辺りを見回してみると、それはすぐに見つかった。


 馬車の方へ歩いて行くと、まだ若く見える黒髪の青年が、馬車の後ろで何やら積み荷の確認をしている様子だったので、そのまま更に近づいて声をかけた。


「すみません。ソルナート商会の方ですか?」


「あぁ、はい。そうですよ」


 振り向いた青年は、糸のように目の細い、とても人当たりの良さそうな雰囲気の人で、オレたちに気付くと笑顔でそう答えた。


「あ、もしかして依頼を受けた剣の……剣の……」


 しかし、パーティー名をうろ覚えだったようなので、その後を引き継いで、こちらから自己紹介した。


「はい。冒険者パーティー『剣の隠者』です。よろしくお願いします」


「そうそう! 剣の隠者だ。今回は宜しくお願いしますね。私はソルナート商会のソルナートです……といっても一人でやってるのですけどね」


 と言って笑みを見せた。


「その年で商会起ち上げて一人で商いやってるんやから、それだけでも凄いもんやで。道中はうちらが守ったるさかい安心しぃ」


「ははは。そう言って頂けるとありがたい。そう言えばギルドで聞きましたが、なんでも一人は第一級冒険者の方だとか? あのような安い依頼料で良かったのでしょうか?」


 この依頼は、もともとオレやユイナの冒険者ランクに合わせて選んだので、正直依頼料は高くない。

 だけど、そもそも王都への移動のついでで受けた依頼なので、赤字にさえならなければ問題なかった。


 ちなみに、まだ正式には上がっていないが、オレとユイナも1ランク冒険者ランクがあがり、Cランクの上級冒険者となる事が告げられていた。


「それは気にせんでええで。うちらも王都へ行く用事があったから」


「なるほど。そういう事でしたら、ありがたく遠慮せずに護衛をお願いできますね」


 メイシーの話を聞いて申し訳なさが消えたのか、ソルナートはそう言って嬉しそうに微笑んだ。


「それでは準備ができ次第出発しますので、すみませんが、もう暫くお待ちください。お声がけしますので、出来ればこの門前広場にいて頂けると助かります」


「わかりました。それではオレたちは、そこの屋台のあたりにいますので」


 さっき近くを通った時に串焼きか何かの美味しそうな匂いがしていたので、その屋台を指さしてそう答えた。


 ~


「ボクもちょっと気になっていたんだ~。やっぱりここの串焼き美味しいね!」


 大きな肉の塊を飲み込んだユイナが、嬉しそうに話す。

 もちろん余分に買った串焼きは、既にユイナのアイテムボックスに入れられている。


「ほんまやなぁ。こんな旨い串焼きは中々食べられへんで。知ってたら、この街にいる間だけでも通ったのに残念やわ」


「まぁ、ユイナのアレ(・・)に沢山買い込んだので、暫くは好きな時に味わえるよ」


 アレとはもちろんユイナのアイテムボックスの事であり、メイシーにもそのスキルについては説明済みだ。

 そして、さっき一口食べて気に入ったユイナが、焼きあがっていた串焼きを買い占めていたので、当分は好きなとこにこの味を楽しめるだろう。


「ほんま便利やなぁ。うちの魔法鞄はそういう訳にはいかんからなぁ」


 魔法鞄も多くの物を収納できるが、空間拡張がされているだけなので、他はそのままだ。

 と言っても、普通、魔法鞄には、重さ軽減の効果もセットで付与されているので、その便利さはかなりのものなのだが。

 その魔法鞄を自分の武器や鎧に惜しげもなく組み込んでいるメイシーは、さすが第一級冒険者といったところだ。


「まぁその分、ユイナはいろいろと大変な目にあっているからな」


「それに思いっきり巻き込まれているトリスくんと、これから自分から巻き込まれるのを望んだメイシーさんも大概だけどね~」


 いっときは色々と考え、落ち込んでいる様子だったユイナだが、今はそんな軽口を言えるぐらいには元気になっており、その事に思わず口元に笑みが浮かぶ。


「しかし、ヤシロ(アイツ)はいったい何者なんだろうな……それに炎の魔族は結局誰だったのか……」


 結局、ヤシロはまだ生きているわけだし、あいつが送り込んだと思われる魔物の軍勢にいた炎の魔族が、結局誰だったかもわからずじまいだ。

 そもそも、あれだけの魔物をどのようにして操ったのか?

 どの方法で、どこから連れて来たのかも、まだ何も手がかりが掴めていなかった。


「まぁうちら個の力で出来る事なんて知れてるんや。とりあえずは王都でこれからの事を話し合う事になってるみたいやし、今は色々考えても無駄やろ? それに、このあたり一帯にある街の守りも固めてくれるみたいやし、これ以上気にしても仕方ないで。あんまり考えすぎなや?」


 国は聖王国と接するライアーノの街や、このソラルの街を含む国境に近い街に兵を派遣する事を決めた。

 その事自体は感謝もするし、嬉しい事なのだが、ヤシロに関してはそんなもの何の意味もなさず、簡単に侵入してきそうなので、手放しには喜べなかった。


「わかってはいるんだけどね。今回の件で、オレは自分の力を過信していたのを思い知らされたからな……」


「まぁ、過信は良くないけど、トリスっちは高い実力の持ち主なのも事実やから、卑下するのも良くないで。大事なのは正確に自分の力を把握して、自分で出来る事、出来ない事をちゃんと判断できることや」


「そうだな。本当にメイシーには頭があがらない。いつも色々とアドバイスありがとう」


「ほんとだよね。ボクもメイシーさんには、いつも助けられてるよ~」


 そしてオレの言葉にユイナも便乗し、メイシーに抱きついた。

 メイシーは見た目だけだと年下の少女に見えるので、可愛いもの好きのユイナはすぐメイシーに絡もうとする……。


「こら、抱きつくな! まぁユイナっちの方は、まずはドジっ子な所を直すのが先決やけどな」


「はう……」


 そんな会話をしていると、どうやら準備が整ったようで、こちらに向かって歩てい来るソルナートの姿が目に入った。


「みなさん、お待たせしました~! こちらの準備も終わったので、出発してもよろしいですか~?」


 オレたちもとうに串焼きも食べ終わっていたので、「わかりました!」と返事をすると、すぐに馬車のところへと向かった。


 馬車は二頭立ての一般的な幌付きの馬車だ。

 大きさ自体は少し普通より大きい程度だが、重さ軽減効果が施されたものらしく、オレたちも御者台に1人と、荷台に2人と別れて乗る事になっていた。


「さぁ、それでは出発しますよ!」


 オレが御者台に、ユイナとメイシーが荷台に乗り込むと、ソルナートがそう言って手綱を操り、馬車は街の外へと向けて走り出す。


「はい。よろしくお願いします。護衛はオレたちに任せて下さい」


「もちろんお任せしますし、期待もしていますよ~! ……どれぐらいになったか(・・・・・・・・・・)も、ね」


「え? 何か?」


 最後、ぼそぼそと独り言のように何か言ったような気がしたのだが、


「いえいえ。道中宜しくお願いしますね~」


 と言って、楽しそうに笑みを浮かべたのだった。


 ~


 こうしてオレたちは、王都へと向けて旅立った。


 これから王都でどのような話をして、どこへ向かうのか、どのような目的なのかは、まだ聞いておらずわからない。

 だけど、まだユイナたち召喚者を中心に色々と始まったばかりだ。

 きっと苦しい戦いも待ち受けているだろう。

 だが、それでもオレたちは負けるわけにはいかない。

 皆で力を合わせ、立ち向かい、勝利を収めなければならない。


 そのためには、この魔剣の力を、秘密を解き明かし、更なる力を得なければ……。


 オレはその決意を胸に、王都へと向かう道をじっと見つめるのだった。


******************************


第二章『変わりゆく世界』は、この話で終了となります。

まずはここまでお読み頂き、本当にありがとうございました!


もちろんトリスたちの冒険は、これから更に大きなものとなっていきます。

第三章も引き続き、トリスたちの応援とご愛読を宜しくお願いします!


それから、中々書籍化についての詳しい発表が出来なくてすみません……。

ちゃんと進んでるのです!

進んでいるのですが、色々と事情(良い事情です!)があって、

予定が少し遅れてしまいました。


発売日が決まるまでは、レーベルなどの詳細が発表できないのですが、

もう暫くお待ち頂けますよう、お願いします<(_ _")>


あと、また作者都合で申し訳ありませんが、この後第三章のプロットの

落とし込みなどを行うのと、書籍化の関連作業が予定されているので

暫くの間、『呪いの魔剣……』の更新をお休みさせて頂きたく思います。


第三章開始時には、書籍化についての追加情報などがお伝え出来ると

嬉しいと思っていますので、ブックマークがまだの方は、ぜひブクマをして

お待ち頂けると助かります。


もちろん、評価やレビューなどは泣いて喜びますし、感想なども

出来るだけレスしますので、気軽に書き込んで貰えると嬉しいです。


またあとがきが随分と長くなってしまいましたが、前にも書いたように、

読者様へのお礼は楽しいお話でお返しできるよう頑張りますので、

これからもよろしくお願いいたします☆(*^^*)


===こげ丸===


******************************

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[良い点] 恋愛展開に頼りすぎずにおもしろくかけていると思う [気になる点] 隠者の剣、剣の隠者と統一されていない部分があった [一言] なんか偉そうにコメントしてしまってすみません。おもしろいと思う…
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