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弟が美エルフだったので育てることにした  作者: 風巻ユウ


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18/29

017、残りの寿命

「……毒のことですか?」


 私も気になっていたので、問うてみる。


「ああ、あの毒は本当に劇物なのじゃ。きちんと取り扱わねば危ないのじゃ。錬金術師でも、資格がないと使ってはいかんものじゃ。儂は研究の為に許可を取って取り寄せ、万全を期して運んでもらったつもりだったのじゃが……まさか、こんな事になるとはのう…………」


 ケミスお爺ちゃんは、事件を知って駆け付けた時、カエル毒で犠牲者が出ることを心配していた。

 事実、二人が毒に侵されている。

 どんなに細心の注意を払っても、今回の事件は誰にも予測不可能で、前もって防げるものじゃなかった筈だ。今後を考えるならセキュリティ強化は必要だろうけど。

 それも含めて、錬金術師として、毒を扱える立場として、ラグお爺ちゃんは責任を感じているのだ。


「ラグバルド様だけの所為ではございません。我々だって、ご注文を受けた品をお届け出来ませんでした。我々の管理不足。引いては、商人に有るまじき失態です」


 ケミスさんまで懺悔し出した。

 傍から聞いている身としては、ここにいる誰も悪くないと思う。悪いのは犯人だ。

 その犯人は、治療院で苦しんでいるみたいだが……。


「ラグお爺様、その、毒を吸い込んだ人達は、今……」


 マリアさんが恐る恐る尋ねる。

 毒の症状の話は、私とケミスさんしか聞いていなかったから、マリアさんは知らないのだ。あのカエルの屁が激ヤバ毒ガスだということを。

 でも、話の内容からカエルの屁ヤバいとは感じ取ったのだろう。怖いもの聞きたさな好奇心と嫌な予感が綯い交ぜになりつつも、マリアさんはラグお爺ちゃんに質問をした。

 案の定、ラグお爺ちゃんが毒の説明をしたら、マリアさんの顔は引き攣ってしまったけども。


「毒を取り込んで今日で二日目じゃ。そろそろ内臓が破壊され、生殖器が腐り落ち、下血が止まらなくなっておる頃合いじゃ」


 前に聞いたのより具体的な解説で玉ヒュンしそう。

 玉ナイけど。


「そんな……それで、助かるのですか? 治療院に居るとお聞きしましたが」


「解らんのう……治療院の治癒術師の腕次第とも言える。じゃが、儂の見立てじゃと、血清治療以外で助かる確率は……限りなくゼロじゃ」


「ふやーん」


 ユリシスが泣いた。私が哺乳器を離してしまったからだろう。


「とても気の毒なことじゃ。毒に侵されておるのは、年端もゆかぬ少女と聞いた。冒険者も、C級冒険者になりたての若者じゃと」


 ラグお爺ちゃんの言葉に、私は固まる。何故? わからない。何か、予感めいたものな気がする。


「ふやや~ふえーん、ふええーんん」


 ユリシスが泣き続ける。哺乳器を近づけても、イヤイヤする。こんなに泣くのは二夜前の夜泣き以来だ。


 立って、ゆっくり揺らしてあげても、泣き止まない。見かねたマリアさんが、回し車みたいな玩具をクルクル回して音も鳴らしてくれたが、一切、気が逸れない。


 私の心臓が早鐘を打つ。悪い予感がする。


「あらあら、どうしたのかしら、おしめじゃないのよね?」

「ええ、濡れてません。多分、何か気に触って……」


 癇癪を起こしたのだと思う。こういう時こそ【安全安眠】。私とユリシスの周りだけに、絶対安全フィールドを張った。


 途端、【世界地図】が発動。


「え────?!」


【悪意感知】【飲食探知】も連動し、検索バーに『毒』の文字。地図内に毒マークが点々と浮かび上がる中、伸びる金色の道の先は治療院。そこに吹き出し型ポップアップが表示される。


『ユリア 残りの寿命 8時間』

『ヘクトル 残りの寿命 25時間』と────。


「ラグお爺ちゃん、治療院に居る犯人、冒険者も、名前わかりますか?」


「ん? ケミス、知っとるかの?」

「え、んー、脅迫状を追跡した精霊に尋ねてみます」


 私、相当、切羽詰まった顔をしていたのだと思う。

 ケミスさんは直ぐに精霊から情報を聞き出してくれた。


「…………犯人の少女はユリア…………冒険者はヘクトルだそうです」


 その名を聞いた瞬間、私の心臓は軋みを上げ、ユリシスはギャン泣き。


「ふギャアアアンンンンヤアアア」


「ど、どうしたんじゃ?! 坊主の泣きようが尋常ではないぞ。お嬢ちゃんも、顔色が……」


「エアリーちゃん?」


「あ、の、ですね……ユリアは、お姉ちゃんで……ヘクトルは兄……です」


「───────!!!!」


 全員の顔が、驚愕の色に染まった。

 私はもう血の気が引いて、心臓の音は煩いのに、目の前が暗くなってきた。


 ふらふらになって、座り込む。

 ユリシスも、烈しく泣く。


 ごめんよユリシス、姉ちゃんは今、頭の中がパニックだ。お腹空いたなあ。


「エアリーちゃん、エアリーちゃん……!」


 マリアさんに、ぎゅっと抱きしめられた。


「こうしちゃおれんわい。治療院へゆこうぞ。ケミス、馬車の用意をせい」


「承知致しました」


 急いで車を回してもらい、私はマリアさんに支えられてもふらつき、馬車に向かう。

 ユリシスの泣き声は下火になっていた。泣き疲れたのだろう。疲れるまで泣かせて、ごめん……。


「お嬢様、差し出がましいかもしれませんが、これをお持ち下さいませ」


 声をかけてきたのはミアさんだ。

 ひと抱えはあるバスケットをくれた。被せてある布の隙間から、いい匂いがする。

 焼き立ての、お菓子……。


「昨日お召し上がりになったものと同じ焼菓子でございます。力をつけて下さいませ」


 私達が話している間、静かに控えていたミアさんは、私がお腹を空かせているのを察してくれていたのだ。


「ありがとう、ございます……!」


 ありがたく受け取って、食べよう。食べないと、頭も回らぬ。ミアさんとマリアさんは、心配気な表情で見送ってくれた。


 馬車に乗ってからは、ひたすらもぐもぐタイム。


 悪い予感が、最悪の現実を突きつけてきた。

 先程まで、どこか他人事に聞いていた毒カエルの一件は、ガッツリ身内の犯行だということが判明した。


 ちょっと前まで、呑気に構えていた自分を殴ってやりたい。


 この二日間で、良い人たちに出逢えて、ユリシスと幸せいっぱいに過ごしている間、兄も姉も、地獄の苦しみを味わっていたのかと思うと、胸が痛い。


 私に出来ること、ないか?


 兄も姉も、苦しんでいる。どうしてそんな事にとか、なぜそんな事をしたという追求は後でもできる。


 先ず、助けないと────!


 魔法一覧を探す。治癒系の魔法はないだろうか……探す……探す……。


 ――――――――――

【復元復活】200

 我が子の悪戯で壊れてしまったり失うものも出てこよう。この魔法は有形物を元通りに復元し、そこに命があり死後24時間以内なら蘇生が可能となる。時間が経つ毎に甦る確率は低くなるので注意されたし。


【毒呪吸闇】100

 どんな毒も呪いも闇が飲み込むよぉ。キミの子が苦しむことは一切無いぃ。ついでに呪い返しも付けておいたぁ。倍返しだぁ。けひひ。


【病気治癒】50

 こどもの急な発熱、怪我、困りますよね。そんな時は魔法の呪文『いたいの わるいの とんでけ~! おそらのかなたに ぽーいだ!』唱えてね。


【元気注入】5

 子の元気がない? 気合いだ気合い。ググッとなってビバってなるぞ。気合いがあればなんでもできる!

 ――――――――――


 これら全部を取得。

 魔法ポイントは362あったから、足りた。

 精霊さんに100ポイント貰っていて助かった。ありがとう精霊さん。


『感謝するなら我を呼ぶがよいわー!』


 また何か偉そうな感じで要求されたな。

 残り7ポイントでは呼べません。ごめんなすって。


『ぐわー!』とか叫び声上げて遠ざかった声は、彼方で他の精霊たちと会話しだしたようだ。

 仲良しだな。


精霊王たちの愉快な会話


?『ぐわー! なんで我を呼ばんのだー! 闇の、なんとかしろー!』

闇『なんとかと言われてもぉ。なんとかぁ~けひひ』

?『ボケか? ついにボケ老精霊になったか?』

風『ぷきゃきゃ~老精霊だってよ。たしかに、いっちばん長生きなのは闇だね~!』

火『うむ。年寄りは労わらんとな』

水『洗い流しましょうか』

地『何をだ? 水が出ると、闇が流される絵しか見えぬぞ』

闇『けひっ、光ぃ、若いのがいじめるぅ』

光『心を誠実に保つのです』

闇『光はそれしかないんかぃ』

?『我を無視するでないぞー!』

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