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弟が美エルフだったので育てることにした  作者: 風巻ユウ


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012、説明せよ

「金貨一枚ですと、試供品くらいしか提供できませんが……」


「ありがたいです。少量あれば出来そうなので……ちょっと待って下さいね」


 私だって鉱石が高いのは知っている。珪石や水晶の時価を詳しくは知らないが、お高いものでしょう?って声を密かにするもの、というくらいは知っているのだ。

 この世界だと魔鉱石と呼ぶらしいが。


 精霊樹とやらも希少で、その枝ひとつとっても貴重なアイテムだと推察する。

 それらをサンプル品ということで、少し分けて貰えることになった。これをありがたいと言わずなんと言う。

 魔鉱石は胡麻粒サイズ、精霊樹の枝は爪楊枝サイズだけども。


 パンダ謹製物作りには、サンプル程度でも材料が揃っていれば、物が完成するらしい。


 実際に『つくってみよう!』。


 先ずはシリコーンゴムの[動画]を視聴。

 うーん、相変わらず訳分からん作業工程。早送りしたいと思いつつ、最後まで観ないと作成できないので、動画再生時間30分、眠気こらえて頑張る。

 これで実際は三分くらいしか経っていない。

 どういうことかと言うと、私がData画面と30分程睨めっこしていたと思った時間は、現実だと三分ほど私がボーッと虚空を見ていた時間となる。

 傍から見たら、生きてるか?と生存確認に何度も手を振られ、遂には肩を揺さぶられるのに充分な時間だ。


「おわ、わ、はい、大丈夫です。生きてます。あ、これ出来ました」

「んんん? 何じゃ? 何じゃ何じゃ? 何じゃ何じゃ? 何何じゃそれわわわ?!?!」


 何じゃ爺さんが釣れた。


 私の手の平には甲丸型シリコーンゴムがある。よく見れば溝もあるから、地面に置けばトンネル型なれど。

 なぜ、この、形なのか……?


「何じゃと申されましても……。シリコーンゴムです。魔珪石から作りました」

「だからそれは新素材じゃろがああ?! どう見ても硝子じゃなかろ?! お嬢ちゃん、説明、説明せよ!」


 そうだった。ラグお爺ちゃんは錬金術師。素材に目がないのだ。カエルでも暴走していたのに、新素材が目の前で生み出された日にゃ、発狂するかもしれん。

 今まさに、それ。


「すいません、口頭説明は無理です」


 あの動画内容を説明するとか、理解不能な分野なので、不可能だ。私は完全に文系なのだ。


「ぐぎょおおおお」


 あわわ、ラグお爺ちゃんが発狂寸前。変な声を出し始めた。

 私が無理なら、ラグお爺ちゃんが動画を観れればいいのに……と、思ったら魔法一覧が光り始めたぞ。


 ――――――――――

【動画上映】5

 我々、渾身の動画を気に入ってもらえて嬉しいパンダブル☆そんな貴殿に大スペクトル画面での上映会をプレゼント☆魔水晶の魔力が切れるまでウキウキ動画ウォッチング☆教育動画も続々配信中☆

 ――――――――――


 パンダブル……パンダ二匹とワンダフルをかけたに違いない。

 5ポイントなら気軽に取得できるな。さすパンダ神。どこかの横柄な精霊帝とやらとは大違い。


「あの、ラグお爺ちゃん、私は説明できないけど、魔法で説明できそうです」

「ほわあ? 魔法……魔法で、じゃと?」

「はい、魔水晶があれば、」

「ケミース! この店の魔水晶をありったけ持って来るのじゃー!」


 ラグお爺ちゃんが金貨をバラ撒き始めた。

 杖の先から金貨がチャリンチャリン出てくる。ほえー。金貨のシャワーだ。きれーい……じゃなくて、爺ちゃん、壊れた?


「さあ、これで、説明せい、説明せい、説明せい!!!!」


 山ほどの魔水晶を提供されたけど、動画一つにつき一つの魔水晶で事足りるようなので、一つだけ摘んで──これはビー玉サイズ──シリコーンゴム[動画]の横に現れた笹マークを押した。


 すると、魔水晶から金色の光が溢れ、中空に画面が浮かぶ。パンダ神曰くの、大スペクトル画面かな。

 そこで始まる大活劇……ではなく、大実験。魔珪石や魔水晶をビリビリしたり何か加えてドロドロさせたり。でっかい魔法道具や魔法を駆使して加工していく様は、まさに錬金術。


「ふるおおおおおおお」

「凄まじい精霊力だ……!」


 ラグお爺ちゃんは歓声を上げ、感涙のあまり画面が見えているか心配。

 ケミスさんは精霊の働きが視えるらしくて、その力に驚きまくっている。

 お口が、ポカーンしておるよ。マリアさんも驚いた時あんな顔していたな。夫婦で、そっくり。


「エアリーちゃんは……『神の御使い』で『神童』なのかしら……」


 マリアさんがまた神々しい渾名を付けてきた。ラグお爺ちゃんに紹介する時も才女とか言うし。


 腕にユリシスを抱えてきて下さったので、ゆっくりと受け取る。

 自然と【身体強化】できるようになってきたな。

 ユリシスは、眠りから覚めて、美しい瑠璃の瞳を瞬かせている。ぎゃんかわ。


「私、そんな大それた者じゃありませんよ。信心深くないですし」


 パンダ神は面白いと思うけど。


「あら? 産まれた時に信仰する神様に詣でなかった? 精霊の祠にも、参ってない?」


「ないですねー。うちの親、無信心です」


 祈り捧げて食事しているところも見たこと無いし、あれだけ好き放題に生きれるのだから、そりゃあ信じれるのは自分だけの自己中な連中だと思うね。


「本当に? でも、それなら、どこで『魔力発現の儀』をしたのかしら。魔法が使えるってことは、自分の能力も知っているのよね?」


 この世界の人は誰でも、大なり小なり魔力を持って産まれるらしい。

 その魔力を発現させ、己のステータスを知る儀式を、五歳くらいで信仰する場所、神殿なり祠なりで行うという。


「どこにも行ってないですし、魔法は、なんとなく使えました」


 おそらく、称号:【異界より招かれし転生者】が言語チート以外にも、いい仕事したのだろう。


 Dataを閲覧せし者に贈られる称号……だっけ。

 私は常にDataで己の能力を閲覧できるし、魔法取得まで出来るけど、転生者じゃない人たちは五歳の儀式で神職の方に能力を視てもらうようだ。

 それを紙に書き付け、『能力鑑定書』として発行してもらうのだとか。


「なんとなくって……それこそ神童の証左じゃない。生まれ方が特殊なら、能力も破格ということね……」


 マリアさんの呆れ返ったような声が、耳を通り過ぎて行った。

 聞かなかったでござる。


 30分後────。


「もっかい観るのじゃーああ」


 と、駄々をこねるラグお爺ちゃんに「そろそろ帰りますので、また後日で」と説き伏せる。

 いつまでも他所(よそ)のお宅で上映会していちゃ迷惑でしょ。もう夕方だし。


「明日、明日また、ここに来るのじゃ。魔水晶はやる。ええもん観せてもらう代金じゃ。また、お主の魔法にとんでもないものを見つけたら解説が必要じゃし、とっておくがよい」


「そんなもう新素材なんかホイホイ出ませんよ」


「分かりませんよ。エアリーちゃんのことだから、我々の想像がつかない発明品をポンと、惜しげも無く出す気がします」


 ちょ、ケミスさんまで興味津々というか商売のタネみーつけたみたいな目をしないで。

 私の発明品じゃないし、元より地球にある物だし、メイドイン双子パンダ神だし……。


「エアリーちゃん、約束して。さっきのような魔法を人前で無闇矢鱈に使わないって」


 さっきまで、ふんわり優しい笑顔の絶えないマリアさんだったが、ふいに真剣な表情をつくって私の手を握る。

 ユリシスは前抱っこ中なので、両手は空いているのだ。その両手を握って、マリアさんが訴えてくる。


「私たち、心配しているの。貴女の力が、良からぬ人の目に止まって、貴女が利用されないか……て、ごめんなさい、私たちが言えた義理じゃなかったわ。こうして商売ごとに巻き込んでしまって……」


「いえ、マリアさん。お気持ちわかります。私のこの力は、この世界では異質なのでしょう。この世界の常識もまだまだ知りませんし、極力、人前では魔法を使わないようにします。でも、必要な時、特にユリシスの為なら、使います。ベビーグッズを売るのも、ユリシスを育てるのにお金が必要だから、やるんです。私の意思です」


 決してマリアさんの所為じゃない。マリアさんは私を利用してない。ということを、伝えた。


「……やっぱり見た目が五歳児だと、その喋り方は違和感あるわよ」


「……善処します」


 家まで馬車で送るとも提案されたけど、帰りはゴミ拾いしながら帰りたいので、また明日もユリシスのお乳を貰いに来る約束をして、『精霊(エレメンタル)商店(・ショップ)』を後にした。

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