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誰も俺を助けてくれない  作者: クンスト
第三章 好転の兆し
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3-6 これからの指針

『件名:優太郎よ。これが今の俺だ


 本文:


●レベル2

 力2、守1、速2、魔0、運5


●スキル

『吸血鬼化』:夜能力二割増、昼能力五割減、敏感肌。血が欲しくなる精神作用有(血を飲む程に症状が深刻化)

『淫魔王の蜜』:異性に対して力六割増。性欲暴走の精神作用有(あらがうとレベルダウン)

『記憶封印』:記憶、経験値、スキルの封印効果(スキルはたまに封印解除される)

『凶鳥面』:人から嫌われる。取れない

『暗視』:いつの間にか解除

『個人ステータス表示』:エルフに強制解除された。長耳絶対に許さない

『正体不明(?)』:何だこれ?

『暗器』:猪狩っていたら解除

『暗躍』:寝ていたら解除


●現状

 精神作用系をどうにかしないとヤバイ!』



 ぽちっとボタンを押して送信を完了した。

 後は紙屋優太郎からの応答を待つだけだ。

 優太郎の有能性は次の一報に掛かっているという訳である。がんばれ、俺のために。

 携帯電話の時計を確認する限り、現在時刻は夜の八時。日中よりも生物の気配を多く感じるので外を出歩くのは危険だろう。今晩は『暗躍』スキルを使用しながら眠り、大人しく優太郎の返信を待ち続けるだけだ。





 旅支度を整えたアイサは、隠れ里の端から故郷を一望していた。

 たった一人で正体不明の鳥面の男を討伐せよという過酷な任務だというのに、見送りに現れるエルフは一人もいない。そも、夜の旅立ちなど放逐と変わらない。

 アイサは、己が厄介払いされているのだと気が付いていた。

 姉のトレアだけは、謹慎中でなければきっと見送りにきてくれただろう。そう思う事で悲しみを消し去り、アイサは里に背を向ける。

 麻の外套を着込んで、線の細い体を覆う。

 目以外を隠すように布製のマスクを頭に巻き付け、整い過ぎた顔と金色の髪を隠した。

 更にフードを被って森の種族の特徴たる耳を隠して、すべて準備完了だ。

 魔界における一番の脅威はモンスターである。

 とはいえ、隠れ里周辺は脆弱な種類が多い――モンスターの脅威が少ない場所を選んで里を作っている。魔界ゆえに例外は付きまとうが、経年を重ねているモンスターに自ら近づく自殺行為をしなければ、危険度は低いと言えた。

 それに……魔界だからと言って、モンスターだけを警戒していれば良い訳ではない。

 下手なモンスターよりも厄介なのは、人間族の冒険者と盗賊だ。

 冒険者と盗賊の違いはあまりない。モンスターとも戦う野蛮人か、ただの野蛮人の違いぐらいしかない。

 どちらと遭遇しても、眉目秀麗がデフォルトのエルフたるアイサは装備を根こそぎ奪われる。アイサ自身も奴隷として売買されてしまうだろう。

 魔界で起きた犯罪をいちいち立件するような人間族国家はいないし、種族が違えばどんな非道も犯罪にならない事は数多くある。

 エルフ族とて里の近くに現れた人間族を警告なく始末している。お互い様なのだ。

 よって、特別エルフだけが割を食っている訳ではないのだが――。



「勤めを果たしてきます。姉さん」



 ――アイサは知らなかったのだ。

 生命を無碍むげに扱えば、己の最後は無碍に扱われてしまう。こんな単純な因果応報に気付いていなかったのだ。種族としては正常であったと言い訳もできない。

 助けを求めている者に矢を射った。その罪をもっと自覚しておくべきだったのだろう。

 アイサの結末を光のない魔界の森が暗示していた。

 だというのに、アイサは里と魔界の境界線を踏み越えてしまう。そのまま深い魔界の森へと消えていった。





 優太郎からの返信メールは日をまたぎ、山の稜線が白む時間になって届けられた。

 ざっと八時間強。

 三百文字の問いかけに対する返事を悩む時間だとすれば長く、俺の今後を左右する回答だとすればかなり短く、優太郎は悩んでくれたらしい。



『件名:Re:また悲惨な目にあっているな……


 本文:


●スキル封印解除条件

 スキル無くスキルと同等の結果を得る事で、封印解除された可能性あり

 『暗躍』は魔界でモンスターに見つからずに一晩過ごしたからだと推定


●精神操作系対処

 マッカル金貨一万枚相当の金を稼いで、捨てろ

 それで本来、お前が持っていたスキルが封印解除される


●『淫魔王の蜜』

 レベルダウンはデメリットばかりではない

 余裕があるのならパラメーターを厳選可能か確かめろ


●携帯は『暗器』で

 携帯は命綱だ。普段は『暗器』で隠し持て


●救援を待て

 既に救援部隊が異世界そっちに向かっている

 彼女達は四色の魔法使いだ


●忘れるな

 お前は助けられる人間ではなく、助ける人間だ』



 たった三百文字の文章の中に、疑問の推測、現状への対策と考察、今後の方針と心得、が余さず盛り込まれていた。

 魔界を知らない部外者であるはずの紙屋優太郎が、ここまで適切な返事を送ってくれるとは正直期待していなかった。だが、どうやら優太郎は俺以上に俺を理解している。真の親友でなければ、できないアドバイスをやってのけたのである。

 この世界の奴等は信じられないが、異世界あちらにいる優太郎だけは信じられる。

 己は孤独ではなかったと実感できた事により、殺伐としていた気持ちが溶けていく。



「……まったく。ありがとうを返事するのにも一週間必要か。これは、どうあっても一週間を生き延びないと」



 世界を呪えという、記憶を失う前の俺が残したメッセージ。

 助けられる人間ではなく助ける人間という、優太郎のメッセージ。


 この二律背反していそうなメッセージについて答えはでていないが、もうモンスターから隠れているだけの時間は終わりだろう。


「さあ、反撃開始だ!」


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 ◆祝 コミカライズ化◆ 
表紙絵
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 助けたいシリーズ一覧

 第一作 魔法少女を助けたい

 第二作 誰も俺を助けてくれない

 第三作 黄昏の私はもう救われない


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