南方探索!荒野に到着!
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さて、目指すは南の荒野。ウツギが修行のために住んでいるあの土地だ。
ウツギの配信も見ている視聴者によると、あそこに行けるようになると文明が一気に進むらしい。
今日は天気もいい、周りの景色を楽しみながら、のんびりしたペースで行こう。
あ、そうだ!
今ふと良いことを思いついた!
今現在の服の体温調節機能を少し汗ばむくらいの暑さに設定して…と。
よし!この状態で、南の温泉でひとっ風呂浴びるんだ!
きっと、開放的な温泉で汗を流すのって、最高に気持ちいいだろうな!
うん。今日の目標は【温泉へ行く】に決まり!
久しぶりの温泉。楽しみだな~。
◆
「とりあえず、森を抜けて荒野に到着!強くなって戻ってきたぞ!」
「わん!」
>まあ、おめでとうと言っておこう
>クスネきゅんは今日も元気いっぱいだね
>強くなったほとんどの要素はリミッター解除っていう誰でも出来る技術だがな
>そんな両手を上げて高らかに宣言しなくても…
目の前には広大な荒野。
ほとんど地面の色は茶色だが、よく見ると少し赤っぽい色も混じっている。
この場所の地面は大体が岩石でできているが、二割ほど砂も混じっている。その砂の色が赤茶色っぽいので、そう見えるのだろう。
遠くを見渡すと大きな山が見える。
ふと、どこからかほんのりと潮の香りが漂ってきた。
あ、そうだった。ここには海もあるんだ!
今回の目的地は温泉と決めてしまったが、また今度は海にも行きたいな。
「さて、目的地は俺の中で決まってるんだが、その前に軽く戦ってみるか」
実は、狙っているターゲットはいるにはいる。いや、狩って食べてみたい動物、というのが正しいかな?
以前ウツギがその動物を食べたという話題が出てから、今までずっと気になっていたのだ。
>で、目的地ってどこ?
>ウツギの家にでも行くの?
>戦い楽しみ!
うん。視聴者には俺の目的地が温泉だということは絶対に言わないでおこう。
だって、なんか「脱げ」とかうるさそうじゃん?というか、確実にうるさくなる。
しかしまあ、この広大な荒野には見た目からして強そうな生物が多くいるなあ。
相変わらず、どの動物もみんなムッキムキだ。
パッと見たかんじ、ここに生息している生き物は、大体七割は肉食獣で三割が草食獣なのだが、その三割の草食獣ですら筋骨隆々だ。
「さあ、お目当ての生物いないかなー。じゅるり」
>食べる気満々なの草
>ウツギもあなたも食べるの好きねwww
>なにか戦いたい相手がいるの?
おっ、いい質問だ。
「俺のお目当てはゾウだ!以前ウツギがゾウの丸焼きを食べてたって話を聞いてから、俺も一度食べてみたかったんだよ!」
>ええ…
>なんでゾウを食べてみたいって思うんだよ…
>食に対しては、こいつかなり変態だ!
>おばさんあなたのゾウさんを食べたいゾウ!おばさんだけにあなたのチソチソ見せてくれないカナ???
否定的なコメントや茶々は、全て雑音として聞き流しながら、俺は辺りを見回す。
うーん…パッと見、周囲に俺のターゲットにしている生物はいなさそうだ。
ま、温泉へ向かいながら、道中で探すしかないか。
俺はこの荒野の生き物を中心にチップで解析しながら走り回る。
前回来た時はコソコソと隠れるように過ごしていたが、今回は堂々と探索できる。これも、強くなったおかげだ。
「それにしても、これだけ堂々と走っているのに、さっきから意外と動物たちに敵意を向けられないな」
別に動物がいないから襲われていないというわけではない。そこそこ強そうな生物は、ちらほら目に入っている。
ただ、強そうな動物の近くを走っても、軽く警戒されるだけで相手からは手を出してこないのだ。
なんとなく動物たちにも、現在の俺に敵意が無いことが伝わっているのだろう。
弱肉強食の過酷な土地だからこそ、敵意に敏感で、なるべく不要な争いはしたくないのかな?
――ドドドドドド!
おっと、そんなことを考えていたら、とうとう俺を襲おうとする一匹の生き物が、土埃を上げ、遠くから走ってきた。
「あれは…ダチョウか?解析っと…ワイルドガチョウ。あまり賢くなく、動くものを本能的に襲おうとする。繁殖力が強い。食用可能。おけおけ。大体わかった」
>あ、あいつは…
>なかなかのスピードだ
>あのガチョウ。なんか顔つきがアホそうwww
>完全に狙われているな
見た目はシンプルな筋肉質なガチョウ。攻撃方法も突撃してくるだけ。
ただ、走る勢いも結構凄いし、身体もデカい。あのままのスピードで体当たりされるだけでも、普通の生身の人間ならひとたまりもなさそうだ。
まあでも、俺はもはや生身じゃないからな。俺には筋肉という最高の鎧がある。あの程度の敵なら軽くいなせるだろう。
「よし!最初はゾウと戦いたかったが、襲ってくるなら仕方ない!アイツで肩慣らしでもするかね!リミッター解除っと」
途端、俺の見える世界がゆっくりになる。
さて、どうやって倒そうかねぇ…
ニヤリ。
戦闘が始まる高揚感で、俺の口角が自然と上がる。
よし!記念すべき最初の戦闘なので、男らしく真っ向勝負といきますか!
俺は両手を広げ、ガチョウを受け止める体勢をとる。
ガチョウも俺にロックオンし、やる気満々だ。
「さあ、来い!」
――ドドドドドドド…
「え?」
受け止める気満々な俺を何故かスルーし、遠ざかっていくガチョウ。
そのままの勢いで、遥か彼方まで走り去っていった。
ポカーン。
思わず口が開きっぱなしになる俺。
あいつ、完全に俺をロックオンしてたよね?今、何が起こった?
>あいつはねぇ…
>あいつ、突撃の命中率がやたら悪いんだよな。当たればなかなかの威力なんだけどね
>攻撃外すと、すぐに敵のことを忘れて走り去っていっちゃうんだよね
>あのガチョウ、バカなんだよ…自分が生んだ卵の場所すら忘れるような生き物だから…
>それでいて、この荒野に数だけはやたら多く生息してるらしいぞ
>いわば、アイツはこの土地の雑魚キャラなんだよ
へぇ…
「うーん…なんか釈然としない…うん。アイツのことは”おバカガチョウ”って呼んで、せめてもの鬱憤晴らしとしようか」
>おバカガチョウwww
>草
>おバカガチョウさんの卵はかなり美味しいらしいよ。岩陰とかにたまに落ちてるらしい
>肉もそこそこ美味しいってウツギは言ってた
なるほど、あいつは美味しいのか。じゃあ、また襲ってきたら今度はこっちから捕まえて狩ってやろう。数だけは多いのなら、またおバカガチョウとは出会うだろうしな。
「なんか、気が抜けて戦闘意欲がなくなったから、探索メインに切り替えよ」
さて、さっさと温泉へ向かおう。
ウツギの入浴シーンを見るために温泉へ行くウツギの配信は見たことがあるので、大体の場所は知っている。
視聴者へ目的地は告げず、何気ない顔で俺は温泉がある方向へ向かって走り出す。
そして同時に、チップで周囲の情報を収集。
解析によると、どうやらこの荒野の岩石の地下には、石炭や金属や宝石などが豊富に埋まっているらしい。
そして、荒野の表面は、数種類の岩と砂でできていて、粗いヤスリのような性質の岩石や、ただただ硬くて重い岩石などがあり、良質な石素材として役に立ちそうだ。
中でも特に注目すべきは”硬化岩石”というものだろう。
粘土とこの硬化岩石を砕いたものを混ぜ、加水して乾燥させると、コンクリートのように硬くて丈夫な素材になるのだ。
加工も簡単で、何にでもつかえるので、これでスコップや斧などの各種ツールを作れば、確実に俺のスローライフは快適になるだろう。
各種ツールが揃い、もっと俺のスローライフの文明が上がった時に、またここに来て鉱石、宝石などを取りに来よう。
「おっ!見てくれ!こんな岩と砂だらけの荒野にも、少しだけ植物が生えてるぞ!生命力強いなぁ…あ!小さい花発見!可愛い!」
>こんな過酷な環境だろうが花は咲くんだな
>なんか…良いね
>私は荒野に咲く一輪の花――誰にも見つけられず、誰にも見せるわけでもないのに、ひっそりと咲いている
>ポエムを詠んでる視聴者いるなwww
まあ、ポエムを詠みたくなる視聴者の気持ちもわからなくはない。
隠れるように小さく咲いていた一つの花。それを見ると、アスファルトの隙間から咲く花を見たときに感じるような、胸を打つ感動があるからな。
俺もこんなふうに過酷な状況だろうが美しく咲くような生き方をしたいな。
そんな小さな花に勇気づけられた俺は、元気に探索を再開した。
次回予告:配信ぶち切り
明日の7/22、16時30分に、短編の【男女比1:10の世界で、兄が明らかにチート系転生者なので、弟の僕は兄から距離をとってコツコツ頑張ることにします】が投稿されます。
この物語でいうと、3話分程度の文字数の短編です。もしよろしければ読んでもらえると嬉しいです。




