希望王子!セリが裏でやっていたこと!
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流石にこの場は地球のみんなの注目を浴びすぎるので、注目を避けるため、多少落ち着ける場所へ移動した。
「さて、みんなに説明する前に…」
「博士、ねえ博士。私以外愛さないでください」
「はいはい。可愛い可愛い」
「こいつらのことなんてどうでもいいじゃないですか。私だけを見て下さい」
「はいはい。私はいつだってHIRARIのことしか見てないよ。でも、せっかく待ち望んだヒーローだ。是非頼ろうではないか」
「むう。博士が死んだら私も死にますからね」
「…ははっ、なるべく頑張ってみるよ」
「なるべくではなく、一生生き続けて下さい。いいですね」
「そうは言ってもだな…」
「分かりましたね?」
「…うむ」
「むふふ~。ほんと、博士は私がいないとなんにもできないんですから~」
HIRARIさんはそれはもう満足そうに博士の胸に顔を埋める。それを受ける博士もまんざらではなさそうだ。
それにしても、ラッブラブだなあ…
博士からも始祖さんからも、輝かんばかりの愛の波動が溢れ出ている。博士は人間だから分かるけど、一応始祖さんもアンドロイドなのにね。
「えっと、HIRARIさん?」
「博士以外は名前で呼ばないで下さい。私のことは始祖さんとでも呼ぶように」
「始祖さん、多少ここも人目がありますけど、いいんですか?一応表向き地球のトップなんですよね?それで威厳とかは大丈夫そうですか?」
「………なるほど」
「うむ、そうだな。そろそろHIRARIも落ち着いて、ある程度満足しただろう。ジ・アースに住むみんなを落ち着かせてあげて。まだあの子たちにはあなたが必要よ」
「承知しました」
始祖さんは甘えた態度からころっと変わり、仕事ができる美人秘書のような佇まいで空中へと浮かび、地球のみんなへ映像を発信する。
「この星の愛すべき全ての皆さん、こんにちは。後日説明会を開きますが、今日は――」
始祖さんは隠していた様々なことを住民向けに説明していく。
そこからの始祖さんは見事にこの星のトップとしての立ち振る舞いを見せ、地球のみんなを落ち着かせていったのだった。
「じゃ、あっちはHIRARIに全て任せよう。HIRARIは誰よりも優秀だ。上手くやってくれる。それじゃあ、こっちでも説明を始めようか」
「うし。待ってました」
「さて、なにから話そうか……私はいつも察しが良すぎるHIRARIとばかり喋っていたから、あまり話すのが上手くないんだね、これが」
「じゃあ質問です、ゲリラライブが配信されてるってのはどういうことですか?俺たちやここの住人たちでは、どうやっても外へ情報を発信することができないって聞きましたけど……そもそも、誰がやったんですか?」
「それは、結び姫様たちだね」
「「「かっかっか~♪」」」
結び姫様たちは、空中でくるくる周りながらそれはもう楽しそうに歌っていた。
間抜け面を晒していた俺に向かって歩いてきた母が、「ほらね?」と、実際に配信アーカイブを再生する。
>!?!?????
>突然の配信きちゃあああ!!!!
>告知くらいしてくれ!生きてたんかワレェ!ちょっとくらいなんか日常の情報を発信しろよ!!
>そもそもそこはどこだよ!ねえもっと毎秒配信してよ!
>なんでトリカ様歌ってるの?説明不足!あああああトリカ様の歌声好きいいいい
>なんか知らんが、お祭りだああああ!!!!
うん、確かにめちゃくちゃ配信されてるな。
一度動画を閉じる。これは帰ってゆっくり見よう。普通に俺ももう一回見たいし。
「えっと……これ、いいの?」
保安上の観点から情報発信はNGって聞いてたけど…
「ま、ホントはよくないけれど、やっちゃったものは仕方ない。それに、きっと結び姫様たちにも何か狙いがあるのだろう。神様のやることだと諦めるしかないね」
「ええ……地球のトップですらそういう感じなんだ」
全ての情報を知っているであろう地球のトップですら、結び姫様は予測不能で未知の生物であることには変わりないようだ。
「ねえねえ」
「ん?なんだセリ?」
「博士の説明の前に、僕が何をしていたのかから話してもいい?」
俺は博士に視線を向ける。
「そうだな。まずはみんなが今日どこで何をしていたか、本人の口から説明してもらえるかい?その間に私も話すことをまとめておくよ」
「分かったー」
糸のこととか、この惑星のこととか、色々聞きたいこともある。けど、まずは今日何が起こったのか認識する。話はそれからでも悪くないだろう。
ということで、まずはセリが何をしていたかを話すことに。
「僕は“希望の王子”と呼ばれる人物を見つけることにしたんだ。都市伝説レベルの噂だったけど、なんだか実際に居る気がしてさ。宝探しみたいで楽しそうだったしね」
「都市伝説ねえ…」
俺はセリに引きずられている足元のズタ袋に目を向ける。
そっか、セリに目をつけられてしまったのか……うん、ご愁傷さま。
セリは地球でも、独自のルート、コミュニティを築いていた。さらに、そもそも裏道や非公式なルートを嗅ぎつけるのがやたらと得意で、直感もとんでもなく鋭い。ある種、探し物のプロみたいな存在だ。
そんなセリから逃げられる訳がないんだよな。
「そもそもなんで希望の王子って言われていたのか。それは、Eエネルギーを使って奇跡を起こしたからなんだって」
「別に地球のみんななら、誰だってEエネルギーは使えるんじゃないの?いつだって奇跡くらい起こせそうなもんだけど…」
「うん。でもね、普通に使えても、奇跡を起こす特殊な使い方は決してできなかったんだ」
「特殊な使い方?」
「そう、そもそもEエネルギーの使い方には、二種類あるからね」
「二種類?」
「普通に使う方法と、奇跡を起こす方法――正確には、願いに呼応するように、勝手にEエネルギーが奇跡を起こしちゃう現象かな?」
…そう言えばルリさんから『Eエネルギーには奇跡を起こす力がある』みたいなこと言われてたな。それは深層心理を読み取って、意図を拡大解釈することで起こるものだと勝手に思いこんでいたが、そうじゃないのか。
「で、そこにうーうー唸りながら転がっている男で、ルリさんの思い人が、この惑星で初めて奇跡を起こした人なんだよ。見ての通り、都市伝説は本当だったんだ!」
「ルリさんの夫がねえ……てか、せめて口元くらいは緩めてあげれば?」
というのも、ルリさんが自分の夫を粗末に扱われて、信じられないものを見る目で見てくるんだもん。なんかいたたまれなくなっちゃった。
「うーん……この人ものすごくうるさいから、説明が終わったらね」
セリが嫌悪感を滲ませて足元のズタ袋を指差す。
「なるほど。なら、セリのやりたいようにしてくれ」
「もごぉ!?」
セリがそう言うのなら、本当にうるさいんだろう。あくまでセリ優先。ルリさんやこの都市伝説さんより、俺がセリを優先するのは当然だ。
「そもそもこの男は、真っ当な方法じゃ絶対見つからないように、この惑星の数十人から匿われながら暮らしていたみたい」
「へえ。それにしてもよく隠れきれたなあ…」
「きっとこの男、Eエネルギーの使い方が普通の人より巧妙なんだよ。だから今まで隠れきれたんだと思う。ま、僕の方が上手かったから、こうして捕まえられたんだけどね」
その言葉を補足するように、続けてセリが考えるEエネルギーについての持論を語ってくれた。
【Eエネルギーを上手く使うには、心が柔軟であればあるほどいい】
だから、アンドロイドには上手く使うのが難しいし、長く生きた博士なんかも上手く使うのが難しいらしい。若くて純粋でエネルギーと愛に溢れ、無茶、無謀、無鉄砲な人ほど使うのが上手いとのこと。
「だからね。多分ヒノキも僕と同じくらいEエネルギーを上手く使えるポテンシャルはあると思うよ。もう少しコツを掴みさえすれば、稀代のEエネルギー使いになれると思う!」
セリは俺を褒めるようにそう言うが……うん、あんまり褒められている気がしない。
「…まあいいや。でさあ、なんでこの男を匿うのに数十人も協力してくれたの?」
「希望の王子の生き方を参考にしたかったんだって」
そこから先の説明を、セリは淡々と語った。
現在希望の王子を匿っていたのは、自らを「革命軍」と名乗る数十人の若い女性グループ。簡単に言うと、ちょっとした不良グループみたいなものだ。
そういう人にとって、希望の王子はまさに奇跡のような存在だ。彼を匿いながら、自分たちも彼のような生き方ができるように、なんとかヒントを得ようとしていたというわけだ。
そして、いつの時代も、革命軍のような存在はいる。そういうグループを転々としながら、希望の王子は今まで隠れ続けてきたのだそうだ。
「この男はある種偉人ではあるんだ。でもねえ、僕が見る限り、この男の正体はそんな大したものじゃない」
セリがズタ袋の中から頭だけを引っ張り出す。
「この男を簡単に説明すると、自分のやりたいことにのみ能力を発揮する、ダメ人間ってところかな」
ぐるぐる巻きにしていたロープを頭から順番にほどいていくと、金髪髭面が顔を出した。
まだ手足が縛られた状態のなか、男は口を開く。
「ベイビイ。そんなに俺のことが恋しいかい?でも、いくら俺が魅力的だからって、独占するのはダメだぜ?」
セリは無言で俺を見る。
…なるほど。そういうタイプか。
「ねえ?そこのマスクをした巨乳の子猫ちゃん。運命って信じるかい?」
「……」
希望の王子かっこわらさんは、セリに声をかけるが……セリはがん無視を決め込んでいる。
「俺は信じる。だって、今日俺と会えたこと。それが運命なんだ。だって、俺は一瞬で君に恋に落ちたからね。さあ、俺の胸においで」
…なんでこの状況でコイツは俺の大事な女を口説いているのだろうか?一発くらいぶん殴ってもいいかな?ダメ?
次回予告:純……愛……?




