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貞操逆転スペースファンタジースローライフ!?~男女比が1:10の宇宙で男に生まれた俺が、辺境の無人惑星でスローライフする姿を配信する  作者: ながつき おつ
7章:地球へ新婚旅行!

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世代交代!特別なアンドロイド!

読んでいて少しでも感情が動いたら、評価・リアクション・ブックマークをお願いします。



 ものすごい速さで俺に向かって飛んでくる拳。 


 このときの俺は、妙に冷静だった。


 …うん、これは避けられないな。なら、受けるしかないか。この威力の拳……痛いの嫌だなあ……でも、大丈夫か。だって…


 ドカーン――!


「助かる」


「守ると言ったでしょう?アンドロイドに二言はありません」


 俺に向かって飛んできた拳を、ヨヒラがやすやすと受け止めてくれた。


 うん、信じてたよ。


「あなたは――ヨヒラと言ったかしら?」


 殴りかかってきた一人の女性が、氷のような声でヨヒラに語りかける。


「ええ。私はアンドロイドのヨヒラと申します。今日は――あなたに喧嘩を売りに来ました」


「その様子だと、私の正体も分かっているようね」


 その女性は仮面を貼り付けたような表情で、ヨヒラに問う。


 スラリと高い背丈で黒のレディーススーツをクタッと着こなし、長くて白い髪には艶がある。ナイスバディで、顔立ちが美しい――それなのに、どこか儚げ。


 ミステリアスな魅力を纏う、薄幸(はっこう)の美女といったところか。


「ええ。気が遠くなるほど長年の間、裏でアンドロイドの頂点として君臨し続けた、アンドロイドの始祖なのでしょう?」


 仮面めいた表情がピクリと動いた。


 そして、その場で心底面倒くさそうに首をポキリと鳴らすと――冷たい闘志を溢れさせ、俺たちに向けてきた。


「はあー、めんどくさ。ほんと、若い子って生意気で嫌いだわ」


 ヨヒラは闘志を向けられても、余裕の表情。俺に向かってくる闘志すら包み込んで守ってくれている。

 

「ええ。ヨヒラ様の歌を止められるわけにはいきませんから」


「それは無理よ。だって私、アンドロイドの始祖よ。誰よりも強いの。量産型の若いアンドロイドなんかでは、絶対に止められないわ」


 始祖さんが言うように、普通のアンドロイドですら絶対に勝てない実力差があるのは本当なのだろう。


 きっとこの場にヨヒラが居なければ、俺は気圧されて立ってすら居られなかったはずだ。俺ではひっくり返っても勝てやしない。


 そもそもあの闘志からして、圧倒的な上位存在とでも言うべき存在感なのは間違いないからな。


「ふふっ、だからこそ私が来たのですよ。さて、始祖様、あなたのお名前はなんというのですか?」


「これからスクラップになる存在に、名前なんて教えてあげないわ」


「あら、つれないですね。ですが……ふふふ。壊れるのはどちらでしょうね」


「ほんと、生意気なガキね。大した経験もないのに自信だけはあるんだから……はあ、面倒だわ」


「若いとはそういうものです」


 お互いに一歩も引く気はない。



「おーい、ヨヒラ。さっさと終わらせてくれよ。一緒にトリカの歌を楽しもうぜ」


 俺はとても簡単な仕事を頼むように、ヨヒラに声をかけた。


「ええ、承知しております。一分程度で片付けますので」


 目の前の始祖さんは闘志剥き出しだ。きっとこれから信じられないほど苛烈な戦闘が繰り広げられる。


 けれど、俺は全く心配していない。


 ヨヒラなら、何事もなく対処してくれる。俺はそう信じているからな。


 そんな俺たちの様子を見て、始祖さんは冷淡に口を開く。


「あなたたち、バカなんじゃないの?」


 始祖さんはなだめるように続ける。


「そもそも、歌ったところでなんにもならないわ。それに、もう全員をシステムダウンさせたから、決して歌が届くことはない」


「やはり、眠ったように動かないのはあなたの仕業なんですね」


「ええ。私とここの住人は糸で繋がっている。そして、あなたたちも気づいている通り、住人は滅びてしまった人間の魂を無理やり入れたアンドロイド――いわば、作られた存在。だから、その程度余裕ってわけ」


 やはり、トリカの読み通りか。あの時トリカが言っていたのは確か――



 トリカには、ここに住む人たち全員の魂にある共通点を見出したらしい。


『あの魂……おそらくヒノキのように、前世があるわね。ただし、ヒノキほどはっきり前世を認識してはいないはず。これ、かなりおかしいことよ。普通の人間には前世なんてないもの』


 そしてトリカは「ここの住人は作られた存在」だと結論づけた。


『それだけじゃなく、なぜか魂の熱が薄い。あのままじゃ、輝くことなんてできない』


 だからこそトリカは歌う。例え作られた存在であろうと、あなたたちは生きていると伝えるために。魂をもう一度再燃させるために。存在を進化させるために――



「俺たちの歌姫なら、それでも届けてくれるはずだよ」


 気がつくと、自然と口に出していた。


 あまりトリカを舐めないでいただきたい。


「はあー。ま、あなたはいいわ。男の子だものね。でも……ヨヒラと言ったかしら?あなたまでシステムダウンしたアンドロイドにも歌声が届くと本気で思っているの?」


「ええ。それが歌姫というものです。ですので、あなたさえ止めれば計画になんの狂いも起きません」


「…ふぅん。そう。ここまで来ると哀れすぎて笑えないわ」


 感情を押し殺したような表情が歪む。


「普通に考えて、あなたが勝てるわけないでしょう?」


「……」


「もしかして、私が弱いとでも思ってる?最初に生まれただけの存在だと思っている?経年劣化しているとでも思っているの?もしそんな淡い期待が少しでもあるのなら、後悔することになるわ」


 さっきまでと一転、俺たちが口を挟む暇がないほど、始祖さんは烈火の如く苛烈にまくしたててきた。


「私が止めに来た時点で、あなたたちは詰んでるの!!希望なんてないわ!!」


「私はこの世で唯一の特別なアンドロイドよ。そもそもの作りが量産型のあなたとは違う!!」


「私には長年の経験がある。修行だって欠かさず毎日してきたわ。アンドロイドの頂点という地位は、そんなやわなものじゃないの!!」


「運命は残酷なの!!運命に従うことが一番の幸せなの!!この惑星では簡単に運命に逆らっちゃダメなの!!」


「私たちの作り上げてきたものを簡単に壊さないで!!」


「運命に従って、幸せな滅びを迎えようとする私たちを否定しないで!!」


「何も知らないくせに、私たちの邪魔をするな!!」


 流石の俺も、あまりの迫力に少し驚きはした。


 ただ、ヨヒラは違う。怒号を受けても、ヨヒラは凛として表情を崩さない。それを見て、気持ちがすっと軽くなる。


 …始祖さんは確かに圧倒的に強いのだろう。けどね。俺には「意外と煽り耐性のない人だな」くらいにしか思えないんだよ。


 だってさ、ヨヒラだって俺が愛するこの世で唯一の特別なアンドロイドだもん。あなただけが特別なわけじゃない。


「説教はもう終わりですか?」

  

 ヨヒラが手を上に向け、指をクイッと折り曲げる。さっさとかかってこいと挑発している。


「ほんと、生意気なガキどもだわ。これだから最近の若者は…」


「老兵はさっさと引退するのが仕事でしょう?」


「だから若造は嫌いなの――よ!」


 途端、始祖さんは目にも止まらぬ速さで襲いかかってきた。


「ふふふっ、さあ、世代交代を始めましょう。あなたを倒して私がトップとなります!」


 ヨヒラは当然のように受け止める。


 

――そこから、二体のアンドロイドによる、目に見えないほど苛烈な戦闘が始まった。


 この場で圧倒的弱者な俺にできることはない。ヨヒラが勝つのを大人しく待っていよう。


 …でも、あれだな。見てる限り、アンドロイド同士の戦闘って意外とインファイトなんだな。まあ、一撃一撃が地球を揺らすほどエグいし、目で追えないから、原始的には見えないんだけどね。


 俺はヨヒラを信じ切っているため、こんな風にまるで緊張感がなく見学することができた。ヨヒラ、がんばえー。



 さて、一方のトリカは。


 俺は戦いを見学しながら上空に視線を向けた。


 一分ほどの長いイントロを終え、トリカは顔を上げ、目をかっと開く。


 大きく息を吸い込み、胸を膨らませ――満を持してトリカが歌う。


「叫べ!!!!!!!」


 それは、咆哮のように。


 ビリビリとこの場が振動するほど、恐ろしいほどの声量だった。


(――ッ!何だこれ!)


 途端、体の奥が燃えるような熱が溢れてきた!


 体の全ての細胞が隆起し、喜んでいる。


 全てがスローモーションに見える。


「声よ。届け」


 しっとりと、ポツリポツリと。


 一言一言が、体の奥の奥の奥にまでズンと届く。


「魂で。叫べ」


 …やばい。この歌はとんでもない。


「一言で。声を出せ」


 心の奥から、ありえないほどの活力が湧いてくる。


「心を。解放しよう」


 トリカのサファイアのような瞳から、血が流れている。


「痛いほど、聞こえる」


 トリカの感情が痛いほど伝わってくる。


「助けを求める。声が」


 みんなを思う感情が、ありありと。


「怖くないわ」


 俺たちを守るように、優しく微笑みかけてくる。


「楽しいことは目の前にある」


 手を引いて明るい場所に引っ張ってくれる。


「しがらみを否定してあげる」


 温かい体温が体の芯まで伝わってくる。


「愛してあげる」


 優しい炎をわけてくれる。


「自由はすぐそこよ」


 こんなの、無理だ。


「さあ」


 この声を無視するなんて、俺にはできない。あの手を振り払うことなんてできない。


「さあ!!手をとりなさい!」


 魂が「生きたい」と叫びを上げている。

 魂が「もっと輝きたい」と唸りを上げている。

 魂が「楽しい」と爆発している。


 …ああ、これがトリカの言う、魂にまで届く歌なのか。


「わたくしと一緒に、今を楽しみましょう!」


 あちこちから、小さな炎が燃える音が聞こえてきた。

次回予告:俺の母がずっと地味に優秀な件


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