革命当日!ゲリラライブ三曲目
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「わたくしとヨヒラは最後の四曲目の準備があるから、三曲目はヒノキにお願いするわ。ってことで、ヒノキ。つなぎを頼んだわ」
「了解!ハンバーグのパン粉くらいめちゃめちゃにつないでやるぜ!」
トリカからマイクを投げられたので、しっかりキャッチ。ついでにヨヒラに預けていたクスネを預かる。
「地球のみんな!トリカと比べると物足りないだろうけど、俺なりにしっかりやり切ってみせるな!」
なんとびっくり、ここからは俺のソロだ。演出すらなく、ステージに人は俺だけ。
ただし、
「わん!」「きゅきゅ!」「なあーご」
完全に一人というわけではない。俺には頼れるペットたちがいるからな。
みんなに預けられたクスネや他のペットたちにマイクを向けると、しっかり存在をアピールしてくれた。
「さあ、ここからは俺と動物たちのステージだ。しばらくの間よろしくな!」
――うおおおおおおお!!!
「おお。俺にもそんな歓声をくれるのか。ありがとうな!嘘でも嬉しいよ!」
その一言に、会場からくすりと笑いがこぼれる。
俺はふと空を見上げ、手のひらを差し出した。
ぽつ、ぽつ、と、冷たい感触が肌に落ちてくる。
「ていうかさあ!俺の出番になった途端、天気が怪しいんだけど!天気のやろう、絶対トリカから俺に出番が変わったのを見て、『せや!小雨降らしたろ!』ってなったろ!絶対俺のこと舐めてるって!」
また、あちこちから笑い声が上がった。
…うん、いい感じだ。
笑いは百薬の長。笑うことは、心を豊かにする。
これは俺の持論だが、お腹いっぱい食べて、ちょっと運動して、笑って、たまに全力で叫んで、人と話して、いっぱい寝る。これだけで人並み以上に幸せになれる。後は愛し、愛されれば、最高に幸福な人生だ。
俺はみんなに最高に幸せになってもらいたい。その気持ちを全力でぶつけよう。
「…しかも、土砂降りでもなく、小雨ってところが俺らしいというか……まあいい。水も滴るいい男ってことで。そうだ。せっかく雨雲で周囲も暗くなってきたし、もっと暗くして雰囲気を出すか」
俺はEエネルギーを使って、周囲をより暗くした。同時に首をこきこきと折ったのち、肩をぐるりと回す。
ふと、足元のクスネと目を合わせる。クスネの小さな尻尾はブンブンと全力で揺れ、純粋な瞳が暗闇の中でもキラキラと輝いている。
いつもクスネは俺に元気をくれる。ほんと、ありがたい相棒だ。おかげで俺も自然と覚悟が決まった。
俺はゆっくり空中に浮上しながら、少し間を開けたのち、神妙な面持ちで語り始める。
「歌う前に、少し語らせてもらうな」
なるべくゆっくり、一言一言ハキハキと言葉を紡ぐ。俺にはトリカのようにするりと心に入ってくるような話術はない。それに、今から話すことは全てアドリブだ。それでも、俺なりに全力で心に届くように頑張ろう。
「今から突然ネタばらししちゃうんだけどさあ。このライブ、地球のみんなが魂を燃やすためのライブなんだよね」
神妙な面持ちで話し始めると、冗談混じりだった空気が少しずつ落ち着いていった。
「一曲目のヨヒラを見て、勇気をもらえたか?あのボイパには驚いたろ?心、打たれただろ?」
トリカには、地球のみんながアンドロイドの亜種のように見えているらしい。
そんな荒唐無稽な話を裏付けるように、地球のみんながヨヒラを見る目には、仲間意識のようなものが確かに存在していた。
だからこそ、ヨヒラが全力で楽しそうにしている生き様を見せるのが必要だった。みんなもヨヒラのように全力で生きて良い。そうすれば、ヨヒラのように限界を超えて輝ける。そう見せつけるために。
「二曲目の俺とトリカを見て、みんなは何を思った?今見ている世界が少し鮮やかに見えないか?」
答えは返ってこない。けれど、みんな俺の話を一言も逃さないように耳を傾けてくれている。
「今までの二曲は、四曲目のための準備でもあるんだよ。このライブはな、トリカがこの惑星を照らす本物の太陽になるための革命なんだ」
まるで宝石箱にしまうように、俺の拙い言葉を聞いてくれる地球のみんな。
「この三曲目のつなぎの俺の歌ですら、トリカは綿密に計算したうえでの計画だろう。トリカには色んな意図や思惑があって、この流れにしているはずだ」
俺の心臓が早鐘を打っている。言っちゃいけないことまで言っているような気がするが、ここまで来たら止められない。前に前に突っ走るだけだ。
「でもまあ、俺には難しいことは分かんねえ。俺にできるのは単純なことだけ。ちゃんとトリカの意図に沿えてるのかとかそういうのは考えずに、あくまで俺の目的のために歌う」
俺にだってみんなに伝えたい気持ちがあるのだ。
「で、俺の目的の話だが……俺さあ、地球に住む人のことを勘違いしていたんだよ」
みんな話の流れについてこれているだろうか?俺、ちゃんと話せてるかな?
上手く話せてなくても、とにかく最後まで話そう。
「みんな、運命の操り人形みたいでさ。負けん気とか、跳ねっ返り精神とか、反骨精神とか、そういうのが感じられなかったからさ」
そう勝手に決めつけちゃってさ。まだまだ人を見る目がないよな、俺って。
「でもさ。違うんだよ。それは俺の勘違い」
これはトリカやヨヒラに教えてもらったことなのだが…
地球のみんなは、ある種の「洗脳」のようなものを受けているらしい。その洗脳により、気概を削がれているとのこと。
「みんなの中にはしっかりそういう気持ちもあるんだよ」
そして、洗脳されていることは、地球のみんなも薄々分かっている。分かっていて、受け入れている。
…いや、洗脳では言い方が悪いか。
その洗脳は、みんなを守るためのもの。ある種、太陽さんの愛でもある。
「色んな気持ちを、とんでもない優しさで抑え込んでるだけなんだよ」
教えてもらわなきゃ、そんなスケールの大きいこと、一生気づかなかっただろうな。
「それを聞いて、俺、ちょっとジーンときてさ。お前らはすごいやつだ」
全部分かっていて受け入れる。抵抗せず、太陽さんを心から信じて洗脳を受け入れる。それは簡単なことじゃない。
きっと、モヤモヤして眠れない夜だってあっただろう。怖くて震える夜もあっただろう。
「だから、俺がお前らをいっぱい愛そう」
俺にできることは、それくらい。
「お前らは愛されるべき人間だ!」
精一杯歌おう。感情を込めて、全力で愛を込めて。
「何度でも言ってやる。お前らは愛されるべきだ!尊敬に値する人間だ!生き様に敬意を表する人間だ!」
空気が少し変わったのが分かる。でも、足りない。もっとだ。
「俺は地球に住むみんなが好きだ。優しくて穏やかなお前らが、最高に大好きだ!」
もっともっと、この気持ちを俺はぶつけてやりたい。
「てことで、俺もようやく気持ちが乗ってきたし、お話は終わり!じゃ、今から歌うぞ!曲は【優等生のロックンロール】 俺に歌える歌はこれしかないからな!」
さあ、後は歌で気持ちをぶつけよう。
「ミュージックスタート!」
ジャーン!
王道のロックサウンドが流れる。スポットライトが俺を照らす。
音楽にのって、体で歌う。腹の底から全力で、愛を込めて歌う。ペットたちが俺の周りを楽しそうに駆け回ってくれている。
昔の俺の心情、情けない男の歌を、今の俺が全力で歌おう。
「女は片手で数えるくらいの人数だけでいい!」
音程は気にしない。とにかく感情と愛を込めて、叫ぶ。
「男も女もバカばかり」「正直男を見る女の目が怖い」「一人にしてほしい」
情けない歌詞を、思い出すように叫ぶ。満たされた今でこそそんなことは思わないが、そう感じていた過去の俺も大事な俺の一部だ。
そんな俺を。ペットたちがそれぞれ思い思いに自由にパフォーマンスをしてくれている。ほんと、最高の仲間たちだ。
「あくまでルールの中でちょっとだけ暴れる!それが俺のロックだ!」
ここから、いつもならサビに入るのだが…
ただ、今回はちょっとしたアレンジがある。俺が作詞した、オリジナルのラップがあるのだ。
「さあぶち壊せ ぶちかませ!」
拳を突き上げながら歌う。均等な三連符三連のフロウ。
「俺のプライド そして俺のマインド!」
畳み掛けるマシンガンのようなフロウ。
「かますぜポイズン 響け俺のタフネス!」
最初の太いノリに戻す。
「みんなでいこうぜ 進めオリジナルの路!」
細かい連打でクライマックスだ!
ギューン、ギューン、ギューン――!
エレキギターの音が最高潮に盛り上がったところで、満を持してサビに入る!
「うるせえ!俺なりのロックを笑うんじゃねえ!」
俺は地球のみんなを決して笑わない。コイツらの魂はロックだ。戦わないことを選択した、懐の深い人たち。バカで間抜けな、愛すべき人たちへ向けて俺は歌う。
「うるせえ!ルールを守ってるやつのほうが偉いんだよ!」
泣き言を言わず、ルールを守り続けたみんなへ俺は歌う。
「うるせえ!お前らメスにはついていけねえ!」
テンションが最高潮まで上がったクスネが「ワオーン」と大きく遠吠えする。いいね!クスネ!お前は最高だ!
さあ、この曲もこれで終わり。最後のフレーズを今までで一番感情を込めて届けよう。
「それでも!バカなお前らを、俺は愛してるぜ!」
次回予告:新曲だあああああ!!!




