疾走旅行!トリカとのツーリング!
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セリとのデートの次の日、今日はトリカとのデートだ。
トリカからは「刺激的なデートを期待しておくわ」との注文が入っている。ハードルは高いが、俺なりに頑張ってみるつもりだ。
トリカには事前に「指定の公園で待っておいて」と伝えてある。恋人と待ち合わせというシチュエーションに憧れていたので、今回のプランに取り入れてみた。
俺は今朝Eエネルギーで作った乗り物に乗り、待ち合わせ場所の公園に時間ぴったりに到着した。
「おまたせー。さあ、行こうぜ!」
「早朝から何かしてると思っていたけど……それを用意してたのね」
「おう!普通に危険だし、とっても刺激的だろ?」
俺が乗ってきたのは、大きいバイクだ。ただ、現代の普通のバイクじゃない。それこそ俺の前世にあったような、安全性の保証、事故を防ぐ機能などの全くない「レガシーバイク」というものだ。
刺激的な乗り物をイメージして作ったので、とんでもないスピードが出るはずだ。
…ちなみに、Eエネルギーで作ったからか、俺の想像の範疇を超えた機能までついていたりする。ま、ボタンを押さないとその機能は発動しないので、使わないだろうけどな。
俺は今朝Eエネルギーでこのバイクを作ったが、Eエネルギーがなんでもできるからといって、なんでもやっていいわけではない。惑星ごとに色んなルールがあるが、そもそもSCエネルギーで既製品丸パクリするのは、だいたいどこの惑星でも軽犯罪だ。
なので、俺のイメージだけで作ったオリジナリティあふれるバイクとなっている。
さあ、このバイクで、今日は後ろにトリカを乗せてツーリングデートに洒落込もう!
「刺激的っていうのはそういうことじゃないんだけど……まあ良いわ。楽しそうだし」
「体力を意外と使うから、朝ごはんにおにぎりとコーヒーを入れてきたよ。それを食べたら行こうか」
「用意がいいわね。ありがたくいただくことにするわ」
トリカに水筒に入れてきたコーヒーを注ぎ、おにぎりを渡す。
俺たちは寒空のもと、公園のベンチで俺の握ってきたおにぎりを食べ、コーヒーを飲んだ。寒い朝に恋人と二人で飲むコーヒーって、なかなか乙なものだ。
さて、ある程度まったりできた。腹ごしらえも十分。早速ツーリングに行こうか。
「これがヘルメット。あと、これがライディングスーツ。これに着替えてもらえるか?……よし、準備オッケーだな。危ないからしっかり捕まってくれよ!」
トリカはバイクにまたがり俺の背中から手を回し、ぎゅっと掴む。
背中に恋人の温かさを感じる。
なんかそれだけで、噛み締めるように幸せが襲ってきた。
「…これ、良いわね。もうすでに楽しいわ」
トリカも二人乗りが気に入ったようだ。それならよかった。
「さあ!出発!」
俺たちはバイク専用空中レーンを走り出した――
刺激的とは言いつつも、あくまで安全運転を意識して走る。それでも、結構なスピードが出ているはずだ。
景色がどんどん流れていって気持ちがいい。
「…で、目的地はどこなの?」
「んー?なんてー?」
バイクがかなりのスピードで走っているので、風切音とバイクのエンジン音で普段の声じゃ聞こえない。
これもレガシーバイクの特徴の一つ。味と思って不便を楽しもう。
「どこにいくのー!」
トリカが大きな声で話す。さすが歌手、声が聞き取りやすい。
「目的地は決まってない!でも、見たこともないようなものを探すつもりだ!」
俺も腹から声を出して答える。
…ま、要は探検だな。
ただ、ある程度道の駅みたいな場所は頭に入れてきたので、何も見つからなくても最悪楽しめるようにしてある。
「何よそれ!楽しそうじゃない!」
トリカが嬉しそうに俺の背中をバンバンと叩く。
「ちょ、危ないよ!しっかり捕まっててね」
「大丈夫よー!それに、もし事故ってもあなたが助けてくれるでしょ?」
「そりゃあそうだけどさあー」
「ふふっ、レガシーバイクって良いわねー。とっても刺激的でわたくし好みだわ」
「そりゃあ良かった!」
大声で会話を交わしていく。空を走りながらこうしていると、とても非日常な感じがして、心が弾む。
「…わたくしやっぱり、退屈って嫌いだわー!」
「俺はそうでもないな。トリカは平穏って嫌いなのー?」
「嫌いってわけじゃあないわ。でもね……わたくし、あなたと一緒にいるだけで安心感がすごいんだもの!デートくらいは刺激的なものを求めても仕方ありませんわー!」
「ええー!俺なんてご飯食べて、恋人が居て、仕事をして、筋トレして、いっぱい寝られれば最高に幸せだけどなあ!トリカは欲張りだなあー!」
「ふふふっ、バカね!方向性が違うだけで、あなたも宇宙一欲張りですわよー!」
「トリカには負けるよ!ハハハ!」
こんな風に調子よく空を走り続けていると、前方に小さな道の駅の看板が見えてきた。
「よし、あそこに道の駅があるから、一旦休憩しようか」
スピードを落とし、道の駅の脇にレガシーバイクを駐車。休憩に入る。
この道の駅は小さく、無人運営タイプだ。まだ朝も速いからか、今日は俺たちしかこの道の駅を利用していないみたいだ。
買い物する前に、トリカと軽く写真を撮り、思い出作り。こういうちょっとしたことが楽しいんだよな。
その後、俺はここでホットドックとソフトクリームを買って、飲み物も注文した。ついでに水筒のコーヒーも補充しておいた。
「ほんと、あなたってよく食べますわね」
「いいじゃん、美味しいんだから」
ホットドックをありったけ買い、ソフトクリームを何回もおかわりした俺を見て、トリカが呟く。
「ほっぺたについてるわよ?」
「取って?」
「ふふっ、あなた、とっても自然に甘えてくるようになったわね。仕方ない子だわ」
こうやって何気なくイチャイチャするの、すごく楽しい。幸せ。
「ダメね、もう宇宙船で山ほどイチャイチャしたから、そろそろシャンとしようと思ってたのだけど……楽しくていつまでもやっちゃうわね」
「いいじゃん!いくらでもイチャイチャしようぜ!」
「だーめ。今を楽しむだけじゃなくて、そろそろわたくしたちも結婚した後の話をしたいと思っていたの」
「将来の話かあ」
確かに、そろそろそういう話もしていかないとな。
今まではとにかく今が楽しくて、現実的なことなんて考える暇がなかった。でも、せっかくだからこういう機会に将来のことを考えてみるか。
「わたくしとしては、帰る場所――ホームが欲しいわ。それがあれば何歳になったって挑戦し続けられる気がするの。わたくし、仕事を辞める気はないから」
「いいじゃん!結婚したら新しく家を建てて、一緒に住もう!そしたらそこがホームになるはずだ」
「子供もたくさん欲しいから、大きい家が良いわ。子供にはお父さんという存在を与えたいから、あなたにも子育てをして欲しいわね」
「そっか。子供を産んだら俺もお父さんになるのか…」
なんだか感慨深い。俺、お父さんになんてなれるのかなあ…
「あ、でも、セリも一緒に住みたいって言ってたんだけど、それはどうする?」
「なら、わたくしたちとあなたとセリの三人で住みましょうか。セリも他の女への牽制に役に立つでしょうしね。あの子って尋常ではなさがにじみ出ていて、怖いですからね。役割分担としてちょうどいいわ」
「ヨヒラとウツギは?」
「ヨヒラが一緒に住む分には構わないわ。あの子はわきまえてるし、頼もしいしね。でも、ウツギと一緒に住むのは許さないわ。あの子はせいぜいお隣さんにでもしておけばいいわ」
「…それは俺からは言いづらいな」
「ふふっ、まあ、そこら辺はどうせ落ち着くところに落ち着きますわ。というか、わたくしが上手くやります」
「トリカには迷惑をかけるだろうなあ…」
「どんどん迷惑をかけてください。お金の管理と、面倒なことはわたくしが全て引き受けるわ。それくらいしないと生活にハリがないもの。もちろん、わたくしは仕事も辞める気はない。これからは仕事と子育て、それに全力を尽くすつもりよ」
「かっけえな」
「ふふふ、じゃ、わたくしとセリとヨヒラ、三人で暮らす方向で動くわね。今の貴方なら三人まとめていけるでしょう。正直、最初からそれが一番現実的だとは思っていたのよね」
「…もしかしてさ、決まったゴールに向かって会話してた?」
この会話、やけにトントン拍子で話が進んだ気がするんだよね。
「ふふふ、さあ、どうかしら」
…ま、どっちでもいいか。
この後も休憩しながら、ひとしきり俺たちは今後の話をし続けたのだった。
話が一区切りしたところで、俺は立ち上がって大きく伸びをした。
「さて、そろそろ行こうか」
「そうね……あっ、そうだ!今度はわたくしが運転してみてもいい?」
「…まあいいが……このバイク、結構運転が難しいぞ?」
「大丈夫、ライブで演出としてバイクに乗ったことはあるし、免許は持っているから」
「なら大丈夫か」
…でも、何か忘れているような。
ま、いいか。思い出せないってことは、大したことじゃないってことだろう。
俺はヘルメットを装着し、トリカの後ろに乗る。トリカの柔らかくて細い腰をぎゅっと掴んで、準備完了だ。
…恋人を後ろに乗せるのもいいが、後ろから抱きつくのも良い。トリカ大好き。
「さあ、行くわよ!」
その直後のこと。
「って、おわあああああ!!!!」
トリカは初っ端からフルスロットルで運転しだした。
ものっすごい速い!それに、ドリフト、カーブ、ターンなど、危ないテクニックも入れまくるので、とても刺激的だ。
あ、思い出した!トリカって運転が荒いんだった!
次回予告:そのボタン押しちゃダメだって!




