運命巫女!その2!セリとのデート!
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「さて、盤外の巫女様、次はどこへ行こうか」
「巫女様って呼ばないでよ、もう」
「ごめんごめん。一応プランは大まかに決めてあるけど、どうする?」
俺はなんとなくこうしたいという予定をセリに伝えた。
「じゃあ、それで」
ということで、俺の予定通り、軽い運動をして、ショッピング、後は流れで動くことに決まった。
セリはサプライズなどより、相談して決めるのが好きだ。結婚しようと伝えてから、セリのそういう部分がより強くなっている気がする。
「だって僕、当たり前が当たり前じゃないってことを、誰よりも知ってるからね」
「当たり前のように思考を読まないでくれる?」
「ふふ、操縦でシンクロをいっぱいしたから、普段からなんとなく分かっちゃうんだ」
「いや、それがなくてもセリって察しがいいじゃん」
「へへ、まあね。さ、そろそろ行こ!」
セリと手をつなぎ、次の目的地へ向かって歩いていく。
「僕、やっぱり当たり前なことが好き。特別なんかよりもずっといいな。ダラダラと時が流れるのが好き。食べて寝てゲームして、後はヒノキがいれば僕はそれで十分」
「それは俺もだな。俺も普通の日常が好きだ。それにプラスして、王道のデートとかできれば最高だな。だから、カップルがやりそうなことは全部やりたいんだよね」
「ふふ、ヒノキは欲張りだね」
「まあな」
俺たちは目を合わせて笑い合う。
セリが握った手にそっと力を入れてきた。指先が少しくすぐったい。
俺もそれを返す。
閣下や結び姫たちが、嬉しそうに光っている。俺たちの間に気持ちのいい風が吹く。
ああ、幸せだなあ。
「…きっと僕、ヒノキを巡る水面下での争いが十分刺激的だったから、安心がほしいんだと思うんだ」
「そりゃあ苦労をかけたなあ」
「ふふ、いいよ」
繋いだ手をぶらーんぶらーんと遊ばせる。
ぶらーん、ぶらーん。
やばい。道中だけでもうめっちゃ楽しい。
セリと何気ない会話を交わし、笑い合うだけでも、すっごく心地良いのだ。
そうやって俺たちはゆっくり歩いていく。会話は止まることはない。
「突然ですが問題です」
「おお、ほんとに突然だな」
「ファイター、ヒーラー、ドラゴン、巫女、勇者。これはなんでしょうか?」
「うーん……あれか?俺たちが勇者御一行様って言われてるから、俺たちの職業みたいなやつか?」
「正解!じゃあ次。勇者はウツギ。巫女は僕。じゃあ、他は誰でしょうか?」
残っているのは、ファイター、ヒーラー、ドラゴン。この中から当てはめていけば良いってことか。
「シンプルに考えると、まずファイターが俺だろ?」
「ぶっぶー。外れ!」
「ええ!嘘だろ!じゃあ、まさかのドラゴン?」
「それもハズレ!ヒノキはヒーラーだよ」
「ええ…」
俺、ヒーラーなの?
俺は色んな人に支えられて生きているという実感があるので、サポート役職が当てはめられているのは意外だ。
「じゃあ次は、ファイターとドラゴンはどっちがどっちだと思う?」
「うーん……どっちもドラゴンっぽいし、どっちもファイターっぽいな……じゃあ、トリカがファイターで、ヨヒラがドラゴンって答えにしようかな」
「正解!」
「うし!」
やっぱりそうか。トリカのほうがなんとなく真っ向勝負ってイメージがあるから、ファイターだと思ったんだよ。ヨヒラはあれかな?ちょっと意味が分からないくらい規格外だからドラゴンなのかな?
さて、そんなふうに楽しく会話していると、あっという間に目的地へとたどり着いた。
「ここが今日の目的地、総合運動場だ。時間制で色んなスポーツができるらしくて、地元の人もここでよく楽しんでるらしい」
「確かに結構活発なところだね」
俺たちは中へ入り、受付を済ませる。
「今日はテニスをしようよ!」
「いいね」
ルールは前世のテニスとそこまで変わらない。違うところと言えば、コートにさえいれば、ボールでKOしたり、戦闘不能にしたりするのも戦術としてあるような、何でもありのテニスって感じだ。
まあ、セリ相手にそんなことはしないがな。
コートに入り、早速試合を開始する。
「なあ、セリ。そんなにラケットをいっぱい持ってきても、使えなくない?」
「普通にやっても勝てないから、僕はEエネルギーを使ってテニスするつもりなんだよ。僕って運動はあまり得意じゃないからね」
そう言うと、セリの周りに十個のラケットが空中に浮きだした。どうやら遠隔で操作するらしい。
よく見ると、セリの周りの空間がグニャリと歪んでいる。
空間をあんなふうにするなんて、流石にSCエネルギーでもできないぞ。きっとあれはEエネルギーだからこそできることなのだろうな。
「なんかあれだ。ラスボスみたいだな」
「ふふふ、さあ、絶望するがいい!」
本当はゆるーくキャッキャウフフと楽しむ予定だったのだが……そうもいかなさそうだな。
よっしゃ!相手にとって不足なし!全力で勝ちに行くぞ!
――数十分後。
「はあ……はあ……手加減してくれ!」
そこには、恋人に向かって情けないことを懇願する男の姿がいたとか、いないとか。
「嫌だよー。それに、僕がめちゃくちゃ余裕があるわけでもないしね」
汗一つかいてないのによく言うよ。
「つっても、俺は一点たりとも取れてないんだけど…」
セリの打つボールは、とにかくトリッキーだ。
急に早くなったり、ワープしたり、ボールが消えたり、打ち返したと思ったら時間が巻き戻ったようにセリの元へ戻っていったり……身体能力のゴリ押しである程度は対処しているが、俺から攻撃を仕掛けることができない。
「ふふ、もっと頑張って!さあ、これでトドメだよ」
「……ッ!」
結局俺は一点も取れることなく、勝敗は着いたのだった。
軽く息を整えたのち、セリの元へ向かい、地べたに座る。
「相変わらずセリはEエネルギーの使い方が上手いなあ…」
俺もセリのようにエネルギーを使うこと自体はできなくはない。
ただ、何にでもエネルギーの力で対処するのは難しいのだ。
エネルギーにより何かを起こすのにはわずかな遅延がある。全てにエネルギーで対処していたら、状況判断が間に合わなくなるはずなのだ。
それをいとも簡単にやってのけるセリは、本当に規格外だ。しかも、SCエネルギーではなく、より扱いの難しいEエネルギーで。
「ちょっとしたコツがあるんだよ」
「Eエネルギーを使うコツ?それはちょっと聞きたいな」
Eエネルギーは癖の強いエネルギーだ。勝手に使い手の深層心理の深くまで読み取り、意図を拡大解釈され、結果が出る。
それをよく手足のように使いこなせるよなあ…
「Eエネルギーは制御するというより、自由に遊ばせるイメージだね。想像力を解放して、全力で楽しんで使うんだ。そうすると、Eエネルギーは望んだ以上に期待に応えてくれる。このエネルギー、僕はかなり好きだなあ…」
セリがEエネルギーを使い、ボールを手元に持ってきた。その後、手でボールを壁に向かって投げると……空を縦横無尽に飛びだした。
そして最後には、ボール入れにスポンと入った。うん、お見事。
「要は、子供のように純粋に楽しめばいいんだな。参考にしよう」
俺もちょっと使ってみるか。
まずはボールを手元に持ってこよう。
自由に遊ばせるイメージで、想像力を解放して、全力で楽しんで…
ドカーン!
「…球が爆発したんだけど」
「わあ!綺麗!ボールが花火になったね!」
「ああ……これは怒られるやつだわ。弁償してくるな」
店員さんの元へ行き、理由を話して追加でお金を払う。
セリと同じような結果をイメージしただけなんだがなあ…
とぼとぼとセリの元へ帰りながら、またセリの隣の地べたに座り込む。
「あーあ。ほんと、厄介なエネルギーだわ」
「でも、失敗してもいいじゃん。僕だって何度か失敗してるからね」
「え?最初から上手かったわけじゃないんだ」
「…まあ、最初からうまかったのもあるけどね。僕って天才だから。って、そんな目で見ないでよ!」
実際セリのことは天才だと思っているが、自分の口から言われると冷たい目で見たくなるもんなんだよ。
「で、どんな失敗したんだ?」
「ここに来て試しに落ち物パズルゲームを作ってみようとしたんだ。シンプルで簡単なやつね」
「それで?」
「実際にできたのは、超カオスな4D落ち物パズルゲームだったんだ。突如パズルが爆発したり、色ごとにあまりに複雑な相性があったり、突然パズルを使った3D銃撃戦が始まったりと、散々だったよ。コツを掴むまではこんなのばっかりできちゃった」
そう言うやいなや「よいしょ」とセリは立ち上がる。
そして、くるりとターンしたのち、
「だからさ、失敗ごと楽しんじゃえば良いんだよ」
それはもう輝くような笑顔で俺に手を差し伸べた。
俺は差し出された手を掴み、立ち上がる。
「…ま、そうか。そうだな」
要はスローライフと一緒か。
セリだってそうなのだから、俺も失敗するのを恐れず進もう。
この後は俺もEエネルギーを程よく使い、二人で色んなスポーツを楽しんだ。
そしてその後はゲームショップへ行き、たくさんのゲームを衝動買い。帰りに「結び姫神社」に寄り道。そこでゆっくりしてから、帰ってからホテルでEエネルギーを使ってたくさん遊んだ。
Eエネルギーは相変わらずじゃじゃ馬で、たくさんハプニングが起こった。でも、それでもいいんだ。だってほら、俺もセリも笑っている。
この日俺は、Eエネルギーのことがもっと好きになった。
次回予告:これが俺なりの刺激的なデートだ!




