惑星調査!ヨヒラとデート!
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一日しっかり寝て、朝。
「ご主人様、今日は私とともにこの惑星の近海宇宙を回りませんか?」
と、朝食中にヨヒラからデートの誘いがあった。
俺はみんなとイチャイチャする以外に特にやりたいことはないので、それならちょうどいいと付き合うことにした。
あいにく他のみんなは各々やりたいことがあるらしい。
例えばウツギなんかはここのグルメを食べ尽くす旅に出たのでもういない。
セリは昨日の深夜からこの惑星のゲームなどを調査する旅に出かけた。
母ーズに関しては、いつの間にかこのホテルにはいなかった。
相変わらずまとまりと協調性のない人ばかりだが、これはもう仕方ないね。
「もちろん行く!ヨヒラとのデート楽しみだなあ!」
「いえ、デートでは……まあいいでしょう」
何かヨヒラが呟いていたが、気にしない。以前より格段に愛に対する感度が高くなった俺は、ヨヒラがまんざらでもないことが分かってしまうからな。
「ふふっ」
「ニヤニヤしないで下さい。不快です」
「ごめんごめん。嬉しくてな」
そんなやり取りをしつつ、俺たちは案内人のナギさんに頼み、二人乗りの小型宇宙船を借りた。
それに乗って宇宙に飛び立ち、地球を見て回ることに。
「ここに来てから、私は体調が万全ではありません。ご主人様はどうですか?」
宇宙まで飛び立つと、軽い雑談とばかりにヨヒラは俺にそう話しかけてきた。
「俺はいつもと変わりなく元気いっぱいだけど……というか、アンドロイドに体調が悪いなんてことがあるの?」
「いえ、通常はそういったことはないはずなのですが…」
そうだよね。それは心配だ。
「体をスキャンしても何も問題はない?」
「はい。データ上では体は健康そのものです。ただ、常に小さな頭痛があるような、そんな症状があるのです」
「ああ、それはだるいなあ。分かるわぁ…」
転生してからは脳内に埋め込まれたチップの影響で頭痛なんてないが、前世は酷かったからなあ。
ほんと、なんで気圧とか天気の影響で頭痛が起こるんだよ。人間の体、繊細すぎないか?
「なんとなくですが、頭痛の原因に心当たりがありまして。今日はそれを確かめるため、ご主人様と共に近海宇宙にきたのですよ」
「心当たりって?」
「どうもこの惑星の空気が全体的に淀んでいるように感じるのです。それが原因で頭痛が引き起こされているのではと推測しました」
「空気が淀んでるねえ…」
そんなこと、ここに来てから一度も俺は感じたことはない。なんなら植物も多くて、気持ちのいい空気だとすら思っていた。
でも、ヨヒラが嘘を言うとも思えない。
ヨヒラは地球から離れるにつれ、実際に頭痛がマシになっていると言う。それなら原因は地球の空気にあることは間違いないのかもな。
「…あれ?それを確かめるだけなら、俺って必要なくない?」
ふと頭に浮かんだ疑問をこぼすと、ヨヒラは言いにくそうに視線を泳がせ、申し訳なさそうに答えた。
「ご主人様の周りの空気は不思議と清い感じがするのです。近くにいると体調がとても良くてですね……ですので、空気清浄機として隣に居てほしかったのです」
「そんなの、頼まれなくともやるぞ!」
ってことで、俺はヨヒラの隣にピッタリとくっつく。
「そこまでくっつかなくても大丈夫です。近くにいるだけでいいので……というより、分かっていてやっていますよね」
「まあね。俺もヨヒラとスキンシップを取りたいんだよ。ダメ?」
「いいですけど…」
よし!ゴリ押し成功!
てか、別にそんなこと程度で申し訳なく思わなくていいのに。なんなら頼られて嬉しいだけなのにね。
それにしても、トリカはなにかに気づいているし、直感が鋭いセリも違和感があると呟いていたし、ヨヒラまで頭痛があると言い出した。
どうも地球には何かあるのは確定っぽい。
「その頭痛の原因って、宇宙遊泳すれば分かるようなものなの?」
「はい。私の推測が正しければですがね。ですので、よろしければもう少しだけお付き合い下さい」
「もちろんオッケー!ついでに恋人としてのお付き合いも始めよう!な?」
「……ふふっ」
笑っただけで返事は曖昧なまま。相変わらずつれない。
それでもヨヒラからの愛情はしっかりと感じるから、俺からガンガン行くのはやめない。
てか、ヨヒラのそういう控えめなところも好きです。はい。
さて、そんなところである程度地球から離れた場所まで来た。ここからなら地球が一望できるはずだ。
――それから、ヨヒラと共に地球を一周し、その道中で色んなものを見た。
この惑星の衛星、星々、無数の都市の明かり、オーロラの帯、雲海を走る稲妻。
どれもこれも美しく、心が揺さぶられた。
「なるほど、大体分かりました」
そこから先、ヨヒラは淡々と語った。
ヨヒラにはこの惑星自体が淀みによって大きく歪んでいるように見えたらしい。なにかものすごいことが起こり、それを強引に修復した後のような――そんな違和感があるとのこと。
「ほえー」
口をボケーと開けて頷く。なんか難しいことを言っていたので、スルッと頭に入ってこなかったのだ。
てか、俺にはこの惑星が全く歪んでいるようには見えない。同じものを見ているはずなのに、ヨヒラと俺でここまで見え方が違うものなんだなあ…
「おそらく原因はこの惑星の中心にありそうです。あそこから、今まで見たことがないほどとんでもない量の淀みがにじみ出ています」
地球の中心?それはまた…
「また惑星の中心に何かあるタイプなのか」
惑星の中心に何かを隠す、そういうの流行ってるのか?
「あっ、じゃあさ。その淀みを掃除してしまえば、ヨヒラの不調も治るのかな」
「理論上はそうでしょう。ただし、あれほどの淀みの塊をどう掃除すればいいのか、皆目見当もつきません」
その声には、ほんのりと怯えが混ざっていた。怖い物知らずのヨヒラにしてはかなり珍しい。
それから、もう少し詳しく「淀み」とやらについて話を聞いて、俺なりにまとめてみた。
通常「淀み」というのは、少ししかないものらしい。どんなものにも少しの淀みがある。それが普通。
なので「淀みの塊」なんてものは存在しないはずの概念とのこと。
そう聞くと、なんだか俺もちょっと怖くなってきた。俺には淀みなんて全く見えないのにね。
「さて、私はこの一週間で、あの淀みの塊に対抗する術を考えておきます。今の状態であそこに行ったとて、ただ危険に身を晒すことになるだけでしょうしね」
ただ、負けっぱなしで終わらないのがヨヒラだ。恐れを抱こうが、対抗する気満々だ。
「それなら、俺も力になるからな。空気清浄機くらいにしか活躍できないかもだけど、いつでも頼ってくれよな!」
「ええ。頼りにしていますよ」
ということで、今日のヨヒラの目的は達成したことだし、そろそろ帰るか。
俺は小型宇宙船を運転し、地球の拠点であるホテルへ向けて進み出す。
「でも、俺には地球がただの綺麗な青い惑星としか認識できないのに、ヨヒラはすごいなあ…」
「…え?」
何気なく呟いた俺の言葉に、ヨヒラは思わぬ反応をした。
「どうしたヨヒラ?」
「…ご主人様、今、この惑星が“青い”とおっしゃいましたか?」
「おう。そう言ったよ。だって青いじゃん」
「…なるほど」
俺の言葉を受け、ヨヒラは深く考え込んだ。
「え?なになに?ヨヒラにはそう見えてないってこと?」
「ええ。私にはこの惑星は黒く見えております」
「地球が黒い?マジでか」
衝撃。
…俺とヨヒラでそこまで見え方が違うのかよ。
「私は淀みに対する感度が人よりも敏感です。ですので、膨大な淀みによってそう見えてしまうのでしょう。やはり、中心の淀みの正体は相当なものですね。通常ここまで見え方が変わることなどありえませんから」
何度見ても俺にはそうは見えない。綺麗な青い惑星だ。
それを黒い惑星と勘違いしてしまうほど、その淀みとやらはヤバいものなのらしい。それなら、体調を崩すくらい仕方ないのかもな。
「まあ、原因が分かったのなら、ある程度対処できます。心配は不要ですよ」
「…そうだな」
心配だが、俺にできることはせいぜい空気清浄機になることくらい。心配は不要というヨヒラの言葉を信じよう。
それはそれとして、心配なので俺はヨヒラにもっとぎゅっとくっつく。ヨヒラは抵抗することはなく俺を受け入れた。
仲良くくっついた状態で、俺たちはホテルへと戻ったのだった。
「さて、ご主人様。これから先は普通に観光しましょうか」
「そうだな!ゆっくりデートしよう!ようやく新婚旅行っぽいことができるな!」
とは言ったものの、さて、どこへ行こうか…
「ご主人様はここでしっかりとしたプロポーズを考えているのでしょう?そのための協力は惜しみません」
「協力してくれるのはありがたいけど、俺はヨヒラにもプロポーズするからな!それは認識しておいてね」
「ふふっ」
楽しそうに笑うばかりで、しっかりとした返事はくれない。
ただ、俺たち二人の纏う空気は柔らかな日差しのように温かい。
「この惑星のカップル共に負けないくらいイチャイチャしような!」
「みっともないのでそれは結構です。節度ある楽しみ方でお願いします」
相変わらずヨヒラはつれない。でも、愛の波動はガンガン感じる。
俺はヨヒラの手を優しく握る。ヨヒラも自然と受け入れる。
なんかさ、いい雰囲気じゃない?今ガンガン押せばヨヒラの好意を引き出せそうな気がする。
「でも、そういうところがまた――」
「あ、見て下さい!閣下が大量に居ます!すごいすごい!あそこに行きましょう!」
「…おぉん」
突然のヨヒラ大興奮タイムにより、この場のいい雰囲気はぶっ壊れた。もはやデートどころではない。
…まあ、閣下が大量に居たんだから仕方ないってことにしておこう。
次回予告:推し活の邪魔をすると死ぬ




