地球観光!その2!男女比について!
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「うん、歩いている感じ、都会と自然の融合って感じの場所だな」
「料理も普通に美味しいし、全ての水準が高いわね」
「国交断絶していた割に、住民の愛想はかなりいいわね」
「ほんとにどこもかしこもEエネルギーを使ってる!おもしろーい!」
「アンドロイドが人間と一緒に生き生きと暮らしてますね。それを当然のように受け入れている人間というのも不思議です」
「強いて欠点を挙げるとすれば、この星特有の尖った娯楽が少ないことかしら?」
「どこへ行ってもキラキラした目で見られるわね…」
「まあ、勇者だから仕方ないよ」
「勇者様!あれ美味しそうだから奢って!」
「ちょっと!あなたまで勇者って呼ばないでくれる!まだ頭が追いついていないんだからね!」
「勇者ねえ……それってどういう意味なのかしら?」
このように、しばらくのあいだ、ダラダラと会話しながらゆっくり歩いていった。俺も色々食べたり、軽く人と交流してみたりして、普通に楽しんでいる。
――キャー!勇者様御一行よ!
――すっげーーー!!!生で見るとかっけえ!!!
――勇者様こっち向いて!
――ありがとうございます。ありがとうございます
――僕も将来あんなふうになる!
――オーラがすごい!これがスターなのか!
耳を澄ますと、あちこちから歓声が聞こえてくる。街を歩いているだけで、老若男女を問わず尊敬の眼差しを向けられるものだから、少し照れくさい。
調子に乗って手を振ってファンサなんてしちゃったり。
それでも、声をかけてきたり過剰にはしゃいだりする人はいない。皆どこか節度をわきまえているのが、慎ましくて好印象だ。
「でもあれだな。最近の観光地とか違って、なにかに特化してるみたいなことはあまりなさそうかな」
会話の合間に、ふとこう切り出した。
正直、最初は未知の惑星というのだから、どんなびっくり箱かと構えていたのだが……そこまで尖ったものはここにはない。
考えてみれば当然だ。ここは星間断絶していた惑星であって、観光用に作られた場所じゃない。ただ、人が暮らしているだけの星なんだ。
そう考えれば、刺激や目新しさを過剰に求める方が野暮というものだろう。
それでも、周辺をざっと回った俺の印象は悪くない。衣食住に娯楽まで何でも揃い、この宇宙ではあまり見ない結婚式場などもある。なんでもあるといった印象だな。
「ご主人様…」
「あら?目に見えて特化してるものがあるじゃない」
「あなたの目って節穴なのかしら…」
「ヒノキ、それは流石にどうかと思うな」
「…え?」
なぜか、みんなから馬鹿な子を見る目を向けられてしまった。
俺が何気なく呟いた言葉が、そんなに的外れだったのか?
普通に過ごしやすそうな街って感じで、特徴という特徴は見つからなかったのだが…
「ほんとに分からないの?」
ウツギが信じられないといった様子で、もう一度再確認してきた。
「うん。別に普通の住宅街って感じじゃない?」
俺の返答を聞き、心底呆れた様子だ。
「よく見なさいよ!明らかにイチャイチャしてるカップルが多いじゃない!そんな景色、この宇宙じゃそうそう見られないわよ!」
「…あっ」
たしかに。言われて初めて気づいた。てか、それを特別なことと認識していなかった。
ここでは、異性が当たり前のように愛し合っている。
街を歩いている人たちも、ほとんどが男女の二人組ばかり。見渡す限りカップルばかりだ。
それは街の作りにも表れている。
ごく普通の飲食店にカップル専用の特別メニューがあったり、カフェにはカップル専用の席が多かったりと、何かとカップルが贔屓にされているのだ。
「…でも、なんでこんなカップルが多いんだろうな」
「今ナギさんに聞いてみたんだけど、閣下の影響だってさ。ちなみに、ここでは閣下って呼び名じゃないらしいよ」
セリが腕のリングを使い、手早く俺の疑問を解消してくれた。
「そっかそっか。地球にはあのふわふわした謎の生き物がいっぱいいるんだったな」
確か閣下は地球では恋のキューピッド扱いされてるんだったな。以前ルリさんから聞いていたのをすっかり忘れていた。
「特徴はそれだけじゃないわよ」
トリカは俺にそう語りかける。
「ん?まだ何かある?」
「普通に本物の男がこれだけ街を歩いているのって、すっごく違和感よ。こんな景色見たことないもの」
「…ああ、そっか。そういえば俺の母星でも男が街を歩いているなんて見なかったわ」
ここでは、男女比に偏りがない。
人間もアンドロイドも区別なく、自然に隣を歩いている。
「なるほど。だから“愛の惑星”なんですかね」
ヨヒラは自問自答するようにそう呟いた。
「俺はみんながイチャイチャしてるから愛の惑星って呼ばれてるんだと思ってるけど、違うのかな」
この街の人たちを見ると、まさに愛の惑星って感じがする。てか、なんにも考えずにのんきに歩いていた俺にはそうとしか思えない。
「おそらくそれも理由の一部でしょう。ただ、それだけではない気がします。何か別の理由があるような…」
俺はその考えが一番しっくりくるのだが、ヨヒラは納得がいっていないようだ。
大体こういう時はヨヒラの方が正しい。俺の認識でも間違っているとまではいかなくても、どこか足りていないのだろう。
「…なんかあれだな。みんな色々考えながら楽しんでいるのな」
「だって、どうしたって星間断絶していた惑星なんて気になるじゃない。この惑星は謎だらけなんだから」
「いやあ……俺なんてみんなと一緒に観光できるのが嬉しくて、浮かれっぱなしだぞ?そんなこと考えたことなかったわ」
「ま、一人くらいそんな呑気な人がいるほうがいいのよ。あなたは難しいことは考えず、あなたらしく楽しんでいなさい。きっとそんなあなたにしか見えないものがあるはずよ」
「そうですね。私は未知を解き明かすことが好きなので、色々注意深く観察しているというだけです。言ってみればただの趣味。各々自由に楽しめばいいのですよ」
トリカやヨヒラもそう言ってることだし、そうさせてもらおう。難しいことはパス。
「…でも、なんでここは男女比が偏っていないんだろうな」
と思いつつも、みんなに影響され、今更ながら気になってきた。
「ほんとよ、羨ましい限りだわ。もしこの世の女がここを見つけたら、天国扱いしそうね」
ウツギは少し悔しそうに答える。
「でもさあ、さっきからウツギは『まさに天国!』みたいな反応じゃなくない?」
「そりゃあ、あなたがいるからに決まってるじゃない。今更並の男じゃ満足できないのよ。だから、責任取ってよね」
ウツギが俺に向かって挑発的に微笑む。
「ま、それは諦めてくれ。これからもよき友達でいような」
なるべく挑発に乗らず、スカすように平然と返す。
…そう言いつつも、ウツギの燃えるような瞳が可愛くて、ちょっとドキッとしたのは内緒にしておこう。うん。
「うーん……なんかおかしいような…」
俺たちがそんなやり取りをしている隣で、セリが地球の住民たちを見て、首をかしげた。
「あら?セリも違和感を感じたのね。なら、わたくしの推測は当たっていそうね」
一方トリカはセリが違和感を持ったことをヒントに、何かを確信したようだ。
そのトリカの表情は、まるでなにか「挑戦の種」を見つけたときのようで――トリカらしくてとっても魅力的だった。
「トリカは何に気づいたんだ?」
「男女比が等しいからくりに気付いただけよ。大したことではないわ」
さも簡単なことのように言ってのけるトリカ。
この発言には周りのみんなも驚いている。
トリカは続けて、
「でも、わたくしの口から言うことでもないわ。多分ですけど、黙っていてほしいことでしょうしね。そして、本人たちもうっすらその事実に気づいていそう。ああ、あなたたちはなんにも気づかず、普通に接してあげてね」
こんな事を言ってのけた。
何を言っているのかほとんど分からなかったが、トリカがそう言うのなら普通に接しよう。
てか、俺はなんも違和感を感じなかったし、そもそも普通にしかできないってだけだがな。
「さて、わたくしはやることができたわ。少し抜けるわね……ふふ、ここでならようやくやれなかったことができるみたいね。しかも、これはわたくしにしかできない。楽しみね」
そう言い残し、トリカは手首のリングを使い、ワープジャンプで惑星フルールに戻ってしまった。スキップしているような足取りの軽さだったので、トリカなりに楽しんでいるのだろう。
「せっかく地球に来たのに、もう観光は終わりか。もったいないなあ…」
「まあ、トリカがすっごく楽しそうだったから、いいんじゃないかな」
そうだな。俺たちが最近まとまってきたとはいえ、マイペースであることには変わりない。こっちの方が俺たちらしいかもな。
…てか、みんなよく違和感を拾うなあ。なんにも感じ取っていないのは俺だけかもしれない。
この辺りで日も暮れてきたので、俺たちは指定のホテルへ帰ることに。
みんなほどほど疲れているので、今日はゆっくり休んで、明日からもっと楽しもう。
次回予告:0→100でテンションMAXになるタイプの人




