地球観光!説明会!
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そんなところで、地球側の準備が整ったようだ。これから俺たちにどんなふうに過ごしてほしいのか、指示とともに連絡があった。
「とりあえず一週間ほど指定のホテルで暮らしてもらって、ここのルールに慣れてもらうって流れになりそうだ」
なにせ星間断絶していた惑星だ。こっちだけでなく、地球側も色々準備があるだろう。
「なるほど。この宇宙では当たり前のことでも、ここでは違う可能性もあるものね。それがいいわ」
ということで、俺たちはワープジャンプで指定の場所に移動した。指定の場所はホテル。どうやらここが、俺たちが一週間過ごすことになるホテルらしい。
エントランスには大量のホテルスタッフが並び【ようこそ地球へ!我々は勇者一行を大歓迎しています】なんて垂れ幕まで掲げられていた。
その視線の一つ一つが、俺たちへの期待と羨望をはっきり物語っている。
「ついに、私は地球へ降り立ったわ!」
ルリさんが大喜びで叫ぶ。とっても嬉しそうだ。
「ねえ!外を見て!男がいっぱいいるわ!それも、本物の男よ!」
母もかなりはしゃいでいる。二人ほど分かりやすくはないが、みんなもどこか楽しそうだ。
「私としては、様々な種類のアンドロイドがいることが驚きですね」
ヨヒラがつぶやく。
「たしかに、めちゃくちゃ露骨にメカメカしいアンドロイドとか、顔がなく、機械の手が十本あるアンドロイドとか、見たことないのばっかだなあ」
アンドロイドは会社ごとに作られてはいるが、制作には厳密なルールがあり、どれも人間に似せた姿になるのが普通だ。ここまで露骨にメカメカしい個体は、地球以外ではまず見かけないだろう。
と、一通りここに来た感想を話し終え、落ち着いてきたところで、
「ようこそ!勇者御一行様!改めて自己紹介しますね。私は案内人のナギと申します、これから一週間よろしくお願いします!」
歓迎してくれていた一人である、ナギさんが俺たちの前にやってきた。
地球での案内人とは、かなりの権力を持つ人が、暮らしなどをサポートしてくれるシステムのことだ。何があってももみ消せる人でないと、案内人にはなれないとのこと。
…ナギさんは相当権力のある人で確定っぽいな。
案内人は、疑問があれば機密以外のことはなんでも答えてくれるし、何か問題が起こったときでも強引に対処してくれるらしい。何から何までありがたい限りだ。
「ナギさん、よろしくな!」
「皆さん、よろしくおねがいします!ああっ!生で見るとカリスマオーラがすごい!僕は今感動しています!」
俺たちは握手を交わした。ここまで持ち上げてくれると気分がいい。それに、嘘が混じっている感じもしない。
ナギさんには後でサインをしてあげよう。
「さて、ここで滞在するにあたり、皆さんに渡すものがあります。こちらへどうぞ」
ナギさんの案内に従い、俺たちは別室へ移動した。
「まず、皆さんの身分証をお渡ししますね。ここでは普段使っているチップは使えません。そのため、仮の身分証が必要なのです」
「たしか、地球専用のチップみたいなのがあるんだよね」
「はい。この惑星はEエネルギーが主体の街です。SCエネルギーと親和性のある従来のチップでは、不都合があるのです」
「でも、チップなしで過ごすのって、難しくないかしら?」
「そのとおりです。ですので、これもお渡ししますね」
ナギさんから腕に巻くリングのようなものを人数分渡された。
指示通り装着すると、溶けるように腕に吸収され、見えなくなった。
「これは?」
「これがここで過ごす間の擬似的なチップの代わりです。これを使えば、チップでできることは全てできるようになっています」
「…なるほど。例えば買い物の時とか、ナギさんと連絡を取る時などはこれを使えばいいってわけか」
「その通りです!」
その後、ここで使える貨幣と交換したり、ちょっとした情報を得てみたり。リングをつけたり外したりして、この場で軽く練習した。
チップと使い方はほぼ同じで直感的に使えるので、不都合はなさそうだ。
「ただし、一つ注意点があります。ゼロから何かを生み出す時――その時は注意して下さい。SCエネルギーと仕様が全然違いますからね」
「というと?」
「Eエネルギーには『その人のやりたいことを拡大解釈して叶えてしまう』力があるのです」
「…説明されてもよく分からんな」
「では、ヒノキさん。実際に試してみてください。……そうですね。では、ここにこの世にはないヒノキ様オリジナルの花を出してみて下さい。それで分かるはずです。あ、Eエネルギーの量をとても少量に絞ってくださいね。そうしないと、とんでもないことが起こる可能性がありますから」
よく分からないが、とりあえず言われたとおりにやってみるか。
「じゃ、Eエネルギーさん。とりあえずなんかいい感じの美しくて華やかな花をよろしく!」
俺がEエネルギーを使うと、この場が光りだし――目の前の机に俺のイメージした通りの花瓶に刺された一輪の美しく華やかな花…
とは全く関係のない、あるものが置かれていた。
「ヒノキ、えっち」
「もう、何をしてるのよ」
「そんなにうちのことが好きなら、襲ってくれてもいいのよ?」
「…セクハラです」
「あらあら、息子はお盛んねえ!母である私にまでそんなことするなんて。でも、母は嬉しいわ!」
「いや、えっと……違くて」
なんで?なんでこうなった?花は?
――なんで机の上にみんなのつけていたホカホカの下着が出現したんだよ!
「…コホン。まあこのように、一筋縄ではいかないのがEエネルギーです。この通り、使用者の秘めたる願いを望む望まないに関係なく叶えてしまうことがあるので、使用には気をつけて下さいね」
この微妙な空気の中、ナギさんが強引にまとめてくれた。ナギさんまで恥ずかしそうなのが、俺の申し訳なさを加速させた。
「ねえ?ヒノキは花よりも女性の下着の方が美しくて華やかだって思っていたから、こうなったってことかな?」
そんな微妙な空気の中、セリが聞きにくいことを追撃する。
…いや、この話はもういいじゃん。ね。
「…はい。おそらくセリ様のおっしゃるとおりです。すみません」
ナギさんもそんな消え入りそうな声で答えなくても。
「コホン。では、Eエネルギーをこう使うと犯罪になるケース、その他細かいルール、禁足地などについても説明しますね。ああ、これを言い忘れていました。この惑星では配信が保安上の観点から、配信などの発信行為はいかなる方法でもできません。そこはご了承下さい」
――その後は変な空気にはなることなく、つつがなく説明が続いていった。
ナギさんの話は面白く、この国の成り立ちや地球での権力の仕組みまで、必要ない部分まで深掘りしてしまったほどだ。
「これで説明は終了です。最低限のルールさえ守ってもらえば、何をしてくれても構いません。是非自由にお過ごし下さい!では!」
「わん!」
「かっか!」
もう自由にしていいと悟ったクスネは、弾丸のように走り出した。それにつられて閣下も飛んでいった。二匹とも楽しそうだ。
この星は相当治安がいいらしいので、自由にさせても大丈夫だろう。
「さて、これからどうしようか」
俺はそう言って、みんなを見回した。
現状できないことは、地球のトップの住まうという禁足地に行くことくらいだ。それ以外は何でもできる。思わぬ自由さに、逆に何をしたらいいか分からなくなる。
禁足地にはトップと呼ばれる地球の一番偉い人と、禁書庫などの重要な施設があるらしい。一介の観光客である俺たちが立ち入り禁止なのにも頷ける。
「とりあえず用意された部屋を各自見てから、無難に周辺の観光にでも行きましょうか」
「そうだな」
…でも、あれだな。
今までならこういう時、絶対に各自自由行動だったはずだ。それが今回は、自然と一つの方向にまとまっている。
まだ全員が打ち解けたわけじゃない。それでも、少しずつ噛み合い始めているのが分かる。
その変化が、俺には妙に嬉しかった。
母とルリさんはやりたいことがあるようなので、結局、二人を除いた面々で行動することになった。
ルリさんは俺たちに何も言わないまま、さっさと単独行動に出た。説明が終わるや否や誰よりも早く動き出したあたり、よほどここでやりたいことがあるのだろう。
母はしばらくの間ナギさんとの会話を楽しむらしい。美少年と話すのが楽しいからだってさ。ついでに禁足地にある禁書庫にはどうすれば入れるようになるのかなども聞いておくとのこと。
ただ…
「ねえナギさん?ここって男の子もいっぱいいるんでしょ?なら、お酒と生の男の子とのやり取りが楽しめる酒場みたいなのってある?」
母が猫なで声でナギさんに絡んでいた声が耳に入ってきてしまった。あの様子じゃ、本当に情報収集するつもりなのかは謎だ。
…ま、俺からは何も言うまい。母なりに地球を楽しんでくれればそれでいいや。うん。
さて、各自自室を見終わり、みんなが集まり、動き出す準備ができた。
「よし!準備もできたし!適当にブラブラ歩きながら楽しもう!」
次回予告:アハ体験苦手勢




