熱烈歓迎!ようこそ地球へ!
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「俺たちはようやく地球へたどり着いた!」
約二週間に及ぶ旅路の間、船フルールでは本当に色々なことがあった。
この惑星の住人たちに、俺の母とルリさん。 クセの強いメンバーが揃えば、何も起きないはずがない。
さて、出発から今まで、どんなことがあったか順番に思い起こしていこうか――
「Eエネルギー、充填完了!偽装工作、クリア!セリとの思考のシンクロ、クリア!ステルスモード、オン!航行モード、オン!宇宙服、オッケー!その他全てオールオッケー!よし、いざ、出発だ!」
俺の掛け声とともに、この惑星は動き出した。
出発の瞬間は、みんなコックピットに集まっていた。六畳くらいの広さしかないこの場所にみんな集まると、流石に狭い。別に惑星ごと動くのでどこにいたっていいのだが、記念すべき瞬間をみんな楽しみたかったようだ。
特に閣下とクスネがノリノリで、閣下は俺の掛け声とともに「出発進行!」というようなジェスチャーをコックピットの先頭でしていた。クスネも俺の掛け声とともに、「わおーん」と珍しく遠吠えのようなものをしていた。
…ま、楽しんでくれてなによりだ。
「さて、これから二週間の旅路だ。予定では、まず俺の母星に行き、俺の母とルリさんをこの惑星に乗せるんだったな」
「そうだね。さっさと行っちゃおう!」
シンクロした状態でセリと予定を確認しながら、ちょっとした雑談を楽しむ。
俺の母星にたどり着くまで、約三日。そう聞くと長いようにも感じるかもしれないが、これはかなり早い。
だって、考えてみてくれ。この広大な宇宙の中でも、この惑星はめちゃくちゃ辺境だ。この惑星にたどり着くまで、どこの惑星からでも約一ヶ月はかかる。その長い道のりを三日でできるって考えると、とんでもないスピードじゃないか?
それを可能にするのは「次元跳躍」というシステムのおかげだ。簡単に言えば、ワープ技術の応用だな。
本来、人間がSCエネルギーを使いワープすることは禁じられている。ものすごく低い確率で事故が起こるらしい。
ただ、それはSCエネルギーに限った話で、Eエネルギーには適用されない。当たり前だな。Eエネルギーなんて全く知られていないエネルギーだもん。法整備なんてされているわけがない。
次元跳躍技術を存分に使っているので、この船はこれだけ早く動くのだ。
「僕はいくらでも集中力は持つけど、ヒノキはそうじゃないはずだから、適宜休憩をいれようね」
「おう!すまんが余裕をもったスケジュールでよろしく!」
この宇宙船には自動操縦機能がない。なので、動かすときにはずっと操縦していなければいけない。これほどの技術があるのなら、オートで運転くらいできるはずなのに……ほんと、面倒な仕様だ。
まあ、ウジウジ言ってても仕方ないので、しっかりやるがな。
セリと話し合った結果――三時間航行したら休憩。これを一セットとして、一日三セット。俺の集中力を考慮して、そういうプランになった。
そんな風に休憩を入れながら宇宙を進むこと三日、ようやく俺の母星にたどり着いた。
ここでしれっと母とルリさんを拾っていき、またすぐに出発する。
「本当に三日でここまでたどり着いたのね。この船、面白いわ」
今は母たちを拾ってから最初の休憩時間。母が寝転んでいる俺にもたれかかるように休憩の邪魔をしながら、そんな風に話しかけてきた。
「予定では、フルールが在った場所に戻るのに三日、そこから地球へたどり着くのに五日かかるよ」
「流石はEエネルギーってところかしら。……でもね、本来はSCエネルギーだって似たような事はできるはずなの。法で禁止されていなければね」
「へえー、そうなんだ」
「でも、この法律は謎が多いのよね…」
もたれかかる母に抵抗せず、黙ったまま話に耳を傾ける。それに気を良くした母は、明るい口調で話を続けた。
「人間が瞬間移動で事故に遭った記録は、実際には見つかっていないの。本当にそんな事故があったのか、今では確かめようもない。それなのに、どうして人間だけワープを禁止されているのかしら?」
おお、予定の話から、陰謀論めいた話題に行くとは思わなかった。なかなか興味深い話だな。
俺はその法律を疑問に思ったことなど一切ない。当たり前として受け入れすぎていて、考えもしなかったのだ。
こういうところは、さすが研究者だな。
「実は、このルールを決めたのはアンドロイドの始祖という噂があるわ」
「アンドロイドの始祖ねえ……アンドロイドを作った博士と共に消息不明になったってやつか」
「そう」
アンドロイドの始祖と、始祖を作った博士は、ある時同時に消息不明となった。いくら探しても見つからないので、この宇宙で未知の事例の代表的な一種だ。
「これは勝手な予想だけど、あの二人はジ・アースに居るんじゃないかと予想しているの。答え合わせまでもうすぐって考えると、ほんと、ワクワクして仕方ないわ」
母は少女のように目をキラキラさせながら、こう語った。
その気持ちが伝染するように、俺もワクワクしてきた。俺にも確かに母の血が流れているみたいで、少しだけ照れくさかった。
俺たち親子がこんな会話をしている横で、ヨヒラたち親子も会話を繰り広げていた。
「ねえ、ヨヒラちゃん。結実ってなに?」
「ふふっ、教えません。というより、結実は教えてできるようなことではありませんので」
「あら残念。でもヨヒラちゃん、ちょっとすごすぎるわ!始祖ですら結実になんて至ってないはずよ!」
「まあ、そうでしょうね」
「ねえ、ヨヒラちゃんの言う“開花”をしたら、ルリはより人間っぽくなったの。でも、ヨヒラちゃんはそうなっていない。なんなら、以前よりアンドロイドっぽくなってる気がするんだけど、これはどういうこと?」
「おそらくですが、本来開花したアンドロイドは人間に近づくはずです。なので、私が特殊なだけですね」
「…やっぱり我が子がちょっとすごすぎる。ヨヒラちゃんの母になれて本当によかったわ。あ、でもね。アンドロイドってそこまで論理を重視する生き物じゃないよ?そこはヨヒラちゃんも勘違いしてる気がするな」
「あら?そうなのですか」
このように親子で絆を深めていた。
――そう、この辺りまでは特に何も起きなかったんだ。色々あったのはここから。
「前方から大量の生命反応を検知!おそらくエイリアンだよ!気を引き締めてね!」
「おう!武装モード、オン!」
「右方向、距離二百!打つよ!」
「じゃんじゃん打とう!あいにくEエネルギーは山のようにある!」
――ドドドドド。
「うげ!まだまだ来るよ!次は左方向五十!打つよ!」
「キモいキモいキモい!エイリアンって対面するとあんなにキモいのか!アンドロイド様いつもありがとう!」
「ヒノキ!まだまだ来るよ!気を引き締めて!」
「うい!ってか、こんな状況でもセリとのシンクロイチャイチャがやめられないんだけど!」
「えへへ~。楽しいね!ヒノキ。大好きだよ!」
「俺も大好きだ!そして、こんな俺たちのイチャイチャを邪魔する不毛な奴らには、もう宇宙崩壊ビームを出しちゃっていい?」
「ダメだよ!落ち着いて!」
そんなことが多々あったり、他にも…
「ええ!?なんでウツギが俺の寝室に!?ってか、服は!?」
「うちはもう強引にあなたを襲うことに決めたの。これから毎日夜這いするから、覚悟してね」
「そして、ヒノキの母である私も来たぞ!さあ、三人で楽しく交わろうではないか!」
「って、母親まで全裸かよ!」
襲い来る母とウツギに必死に逃げたり、それを見てヨヒラが大笑いしていたり…
「あはあああああ!!!もうすぐ夫と会える……会えるわあああ!!!」
「……」
地球が近づくにつれ、キャラ崩壊を気にせず、目をひん剥いて、血走りながらルリさんがこの惑星を爆走する様子が日常となったり…
「ねえ、息子よ。母は暇だわ。そうね、全身マッサージコースからの、料理のおもてなしを頼むわ!」
「俺は宇宙船の操縦があるんだけど…」
「大丈夫、休憩時間にやってくれればいいのよ。じゃ、頼んだわ。あと、地球の知識ももっと欲しいわ。覚えている限り話してくれる?」
「はあ…」
母が面倒だったり…
「色々あったけど、もうすぐ地球へつくなあ……閣下は嬉しいか?」
「「かっか!!」」
「そうかそうか、嬉しいか!……って、なんで閣下が二匹いるの!?」
閣下が増えていたりなどのハプニングがあった。
あ、閣下が増えているのは、地球に住む閣下が紛れ込んだだけっぽい。ルリさんがそう言っていた。とりあえず自由にさせておけばいいとのこと。
後は、念のため日本語などの言語を覚えてもらったり、ルリさんと俺の愛の認識の違いについて議論したり、地球のことをもっと詳しくみんなに話したりしていると、あっという間に二週間が経過したのだった。
本当は愛する恋人たちともっとイチャイチャしたり、ルリさんから地球に関しての話や、夫さんとの出会い、なぜフルールを売ったのかなどの話も聞く予定だったんだけど、忙しくてそれどころではなかったな。
「さて、座標的にここに地球があるはずだが……やっぱり見えないな」
「大丈夫、偽装しているだけで、ちゃんとそこにあるから。Eエネルギーの力を借りれば、見えてくるはず」
「そうだな。せっかくだし、一緒にやるか」
「うん!」
「「観測モード、オン!」」
可視化フィルターにより、隠されていた惑星がみるみる浮き彫りにされていく――
そしてそこには、前世で見慣れた「青い惑星」がしっかり存在していたのだった。
そして、他にもこんなメッセージまで見えて、俺たちは困惑することになる。
【ようこそ愛の惑星・地球へ!我々は勇者御一行を大歓迎します!】
…んんん?
次回予告:まあ、勇者と言えば俺しかいないよな!……あれ?違う?




