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貞操逆転スペースファンタジースローライフ!?~男女比が1:10の宇宙で男に生まれた俺が、辺境の無人惑星でスローライフする姿を配信する  作者: ながつき おつ
6章 前世

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閑話休題 毒花女達!

読んでいて少しでも感情が動いたら、評価・リアクション・ブックマークをお願いします。



セリ視点


――セリ、結婚しよっか


「うひ、うひひひひ」


 ジ・アースに向かっている道中、僕とヒノキの就寝時間中のこと。


 自室で一人、ニヤケが止まらない。ベッドの中でこの言葉を頭の中で何度も何度も反芻している。



 あれは本当に突然のことだった――


 感情の起こりが分かる僕はそのとき、これまでに感じたことのない感覚を受け取った。


 ヒノキが満ちていく。


 満ちる瞬間。そうとしか言えない。そうとしか言いようのない感覚。


 まるで、新しい生命が生まれる場面に立ち会ったかのようだった。


 僕が甘えることが引き金になり、ヒノキが弾けるようにキラキラ輝き出して――あの時のヒノキの姿に、僕は心底見惚れた。


 だから、その直後ヒノキの口から発された言葉に、すぐに返事ができなかった。頭が言葉を認識するよりも早く全身の細胞がギュンギュンと歓喜して、喉に声が引っかかったのだ。



――結婚しよう。セリ


 力強い言葉だった。ヒノキがお腹から力を入れて発した、真っ直ぐで純粋な言葉。


 この直後の僕は夢と現実の狭間にいて、これまでの記憶が走馬灯のように流れていた。


 生まれてから、ずっとヒノキと一緒だった。

 何をするにもヒノキと一緒がよかった。

 優しいヒノキは僕を誰よりも甘やかしてくれた。

 当たり前に僕と居ることを許容してくれた。

 これからもずっとずっと、一緒にいると思っていた。

 

 でも、幼い頃から直感の鋭かった僕は、この先の嫌な未来をなんとなく理解していた――


 

『真っ直ぐに生きるだけじゃ、ヒノキとは結ばれない』


 僕は幼い頃から、不思議とそんな直感があった。


 ヒノキと、僕なんかじゃ到底敵わない格の違う誰かは、運命の赤い糸で結ばれている。僕は本当にただの幼馴染としての、ちっぽけでくそったれな役割しかない。


 そんな嫌な予感を、なぜか胸の底で確かだと感じてしまっていた。


 そして、今なら分かる。その直感は正しかった。


 ルリさんによると、ヒノキはヨヒラさんとこの惑星で出会い、恋をすることが運命で決まっていたらしい。ほんと、運命って残酷だ。



――もちろんそんなこと、受け入れられるわけがない。


 ヒノキの温かさを一度知ってしまえば、そんな運命を作り上げた神様にだって喧嘩を挑むことは、僕としては当たり前のことだ。


 だから、僕は考えた。他愛もない存在の僕にできることは、考えて、策を練ることくらいしかない。


『弱いものが、強いものに抗う方法』


 そこで思いついたのが「毒」の存在。


 毒とは、弱い生き物が強い生き物に抵抗する、最後の手段だ。毒ならば、時に運命にすら対抗できる。僕はそう信じることにした。


 例えばドクセリという植物。それは根が腐りやすく、乾燥や暑さに非常に弱い環境の変化に敏感で、移動もできない弱い植物だ。湿地や川辺など、他の植物が生きにくい場所に生えるため、生態的に弱い。


 そんな弱さ故に、ドクセリは強力な毒を持つに至った。圧倒的強者の捕食者に立ち向かうため、そう進化したのだ。


 弱い僕には、毒を得て進化するしかなかった。全てに勝つために、毒が必要だった。


 …それに、僕の名前と似ていて、なんだかシンパシーもあったしね。


 ヒノキに僕という毒を回そう。ゆっくりじわじわ、ねちっこく徹底的に。幼い僕は運命に立ち向かうため、そう決意したのだ。



――愛してる。大好きだ、セリ

 

 明らかに熱っぽく、真剣な眼差し。絶対に冗談で言っているわけではない。受け止めきれないほどの幸せが、僕をおかしくさせる。ここが現実なのか、夢なのかが判断できない。走馬灯のように、どんどん記憶が流れていく――



 依存、支配、安心感、色気、執着、香り、声、仕草、肌触り……


 ヒノキのために作り出した僕の毒は多岐にわたる。


 でも、ヒノキはとても大きな存在だ。僕の毒はほんの少しずつしか効かない。


 それでも僕は諦めない。ヒノキの中で、僕の存在を少しずつ大きくしていくように、地道な作業を続けていった。


 それからは、いっぱい遊んだり、闘技場で戦うヒノキをサポートしたり、この惑星に逃げたヒノキを追いかけたり、強引に恋人関係になってみたり、閣下と出会ったり、りんごと出会いゲーム友達になり、今ではまた新たな関係になったり、ヒノキのお母さんの研究を手伝ったり、コックピットに泊まり込んで操縦の練習をしたり……


 そして今、ようやく僕の作り出した毒がヒノキの全身に回った。だから今、僕はプロポーズされている。


 走馬灯の流れが現在に追いついたことで、僕は現実に舞い戻ってきた。


(ヒノキの中で、プロポーズはとっても大きな決断だろう)


 だからこそ嬉しい。大きな決断をしてくれたことが、とっても嬉しい!


 そして僕は、


「もちろんだよ!僕もヒノキのことが宇宙一大好き!結婚しよう!」


 いつもより力強く、ヒノキに抱きついたんだ。



「ふふふ……ふふふふふ」


 と、こんなふうにあの時は考えていたんだよね。


 はあ……何度思い出しても、最高だ。あまりの快楽に脳がおかしくなりそう。



 思えば長い道のりだったなあ…


 約二十五年ヒノキを求め続けて、ようやくそれが叶った。


 それも、この惑星フルールというヒノキとヨヒラさんが結ばれるためだけに用意されたような場所にも関わらずだ。僕は見事に掴み取ったのだ。


 僕の頑張りがなければ、二人は今頃理想のラブラブカップルになっていたかと思うと、僕は僕を褒めてあげたい。



「かっかっか~♪」


「あ、閣下おはよう。今日もごきげんだね」


「かっか!」


 ベッドで一人ニマニマしていると、さっきまで眠っていた閣下が起きてきた。


 最近の閣下はいつもごきげんだ。


 いざ本当にジ・アースにたどり着けるとなった今、閣下は弾むように空中を浮遊し、歌いながらあっちへこっちへ行ったり来たりしている。


 本当に心の底から地球へ行くのが楽しみのようだ。


「閣下にとっては里帰りになるんだもんね。そりゃ楽しみか」


「かっか!」


 船長帽を被った閣下が胸を張る。帽子の中から色々な色の光が漏れている。眩しいくらい光っているので、相当ハイテンションなのだろう。


 ちなみにあの船長帽は、あまりにウキウキとした閣下に触発され、僕がプレゼントした物だ。僕にしては珍しく、手作り。気に入ってくれているようで何よりだ。


 閣下は、僕とヒノキが操縦しているとき、あれを被り、しょっちゅう先頭でふよふよ浮いている。その姿はまるで船長が指示をだしているかのようで、とっても可愛いんだよね。


「閣下、僕とヒノキを祝福してくれてありがとうね」


「かっか!」


 閣下が「もちろん!」と言った様子で鳴く。何度も何度も閣下は僕とヒノキの関係が成就するように後押ししてくれた。そして、本当に誰よりも僕とヒノキの関係を祝福してくれている。それが嬉しい。


「ふふっ、閣下の生まれ故郷かあ……どんなところなんだろうね?」


「かっか!」


 ルリさんからは、閣下のような生物がたくさんいると聞いている。愛の惑星と呼ばれているとも聞いた。


 愛の惑星と聞いて、ヒノキは「地球で結婚式を上げよう!」と密かに息巻いていることを僕は知っている。船の操縦でシンクロすると、お互いの考えてることなんて筒抜けになっちゃうからね。


 この宇宙では関係性を作るということは重視されない。それはひとえにそういう文化だから。ゆえに、結婚式場なんてものはファンタジーな存在だ。


 でも「愛の惑星」と呼ばれているジ・アースならば、結婚式場もあるのではないか?とヒノキは考えているみたい。


「結婚式かあ……なんだかとっても夢のある話だなあ……」


 ヒノキは盛大な式より、こじんまりとした結婚式が好きらしい。ホントは僕の家族なんかも呼びたかったらしいが、ジ・アースという場所の特性上そうできないのが残念そうだった。


 …まあ、ヒノキはそれでも「何度でも結婚式をすればいい!」とやる気満々なんだけどね。いずれこの惑星にも結婚式場を作るつもりだってことを、シンクロした僕は知っている。


「でも僕、ウェディングドレスなんて似合うかなあ…」


 あんな白くてふわふわした服を、僕は着たことがない。虚弱で自堕落なゲーマーに、あんな素敵な衣装を着こなせるだろうか?

 

 ヒノキが楽しみにしているから着るつもりはあるけれど、まだ真っ黒なドレスとかのほうが似合う気がするなあ…


「かっか!」


 閣下が「大丈夫、大丈夫!」と僕の肩にぽんと手を置いた。


「うーん……そうだよね。どんな格好だろうと、ヒノキなら可愛いって言ってくれるよね」


「かっか!」


「でも、ヒノキは女性のファッションのことなんて詳しくない。それに、服のセンスはイマイチだからなあ。ウェディングドレスなんて、特にふわっとした印象しか持ってないだろうね」


 これは、あれかも。僕もたまには世の女性らしくファッションを頑張らないといけないかもしれない。それに、ヒノキに任せるより、僕が自分でコーディネートしたほうがヒノキは喜んでくれるはず。絶対にそうだ。


「ジ・アースではおしゃれ、頑張ってみようかなあ」


「かっか!」


「応援ありがとう、閣下」


 少し未来のことを思うと、胸がくすぐられるような気持ちになる。ヒノキのことを考えると、幸せでいっぱいになる。


 今のヒノキは僕を見る視線に常に甘く痺れる熱が混ざっている。それはもう明らかに、全身で僕を愛してくれている。だから、ジ・アースでも僕たちはもっともっと愛を深め合うだろう。


「ふふふ……っと、いけないいけない。そろそろ寝ないと明日の運転に影響しちゃうね。じゃあ、閣下、おやすみなさい」


次回予告:現実的で信念のある歌姫視点

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