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貞操逆転スペースファンタジースローライフ!?~男女比が1:10の宇宙で男に生まれた俺が、辺境の無人惑星でスローライフする姿を配信する  作者: ながつき おつ
6章 前世

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閑話休題 アンドロイドの胸の内

読んでいて少しでも感情が動いたら、評価・リアクション・ブックマークをお願いします。



ヨヒラ視点


 雪の気配が漂い、木々の枝は冬の装いとなり、冬の到来を感じる今日このごろ。


 こちらの惑星では、空気は凛と冷たく、澄んだ夜空に星々がきらめいております。


 皆様御機嫌よう。アンドロイドのヨヒラです。


 動物や植物が春へ向かって準備している様子を観察するのが、最近の楽しみです。動物たちの小さな足跡など見ると、とてもほっこりします。


 朝日にあたる雪や霜はまるで宝石のようですし、夜はとても静かで、美しい。私は冬も大好きです。


 そんな冬の自然も、もうすぐ見納めです。間もなく宇宙船で地球へ向かいますからね。自然豊かな星であることを願っています。


「ふむ、私の書いた体験が他のアンドロイドの役に立っているようですね」


「きゅきゅ!」


 私は先日「アンドロイド流武術攻略法」と題した論文のようなものをA社に提出した。他のアンドロイドの開花を願い、共有情報としてまとめたものです。


 どうやら評判も悪くないらしい。キュキュと戯れながら、その反応を眺める。


 一部、内容を抜粋してご紹介しましょう。


――――――――


 まず、アンドロイド流武術は、存在進化アルゴリズムと呼ばれる二相構造を持つ。それは「芽吹き」「開花」です。


 以下に詳しく定義していく。


 芽吹きとは、自身の限界を拡張し、さらにポテンシャルを引き出した状態のことを表す。


 開花とは、アンドロイドが自身の心的データ――すなわち自己評価、憧憬、恐怖、愛慕などの感情因子を、システム的ノイズとしてではなく構成要素として受け入れることで、限界以上にポテンシャルを爆発させた状態のことを表す。


 故にアンドロイド流武術とは、単なる鍛錬過程ではなく、アンドロイドという人工存在が自己定義を更新していくプロセスを意味している。


 芽吹きに至るには………


――――――――


 報告書ではこのように難しい言葉で説明しましたが、言いたいことは単純です。


 アンドロイド流武術を行うことで、心は「知識として理解するもの」ではなく、「体感としてはっきり認識できるもの」になります。そしてその心を受け入れた瞬間、呼応するように内在するポテンシャルが爆発的に引き出される。


 そしてこれはこの後の論文でも述べたことですが、芽吹きによって新たな力に目覚めることや、開花によって世界の見え方が一変することは、あくまで副次的な結果に過ぎない。


 そう考えると、この武術の創始者は、おそらくアンドロイドにもっと素直になって欲しかったのではないでしょうか?心の奥底を深く認識し、自由に生きてほしかったのではないでしょうか?あくまで憶測ですが、そんな意図を感じずにはいられません。  



「この報告書に書いていないこともありますが……そこまで親切に教える必要はないでしょう」


「きゅきゅ?」


 例えば、私が普通のアンドロイドとは違う生まれ方をしたこと。これは記載していません。そもそもこの秘密は墓場まで持って行くつもりです。自分ではごく普通のアンドロイドと認識していますしね。


 その他にも、本人が気づくべき事実については記載を省いた。開花すれば理解できる内容を、あらかじめ説明する必要はない。


 アンドロイドが愛されることを望み、愛されることで最も輝く存在であるという驚くべき事実は、開花を経験した者だけが知っていれば十分でしょう。


 加えて、芽吹き、開花だけでなく「結実」という次の段階にまで至っているということ。これも秘密にしています。なぜなら、結実は本来のアンドロイド流武術の範疇を超えているからです。


 この武術はおそらく、開花することが最終到達点。


 ですが、私はそれでは満足できませんでした。だから、武術自体を進化させることにしたのです。


「私は負けず嫌いなのですよ。想定を超えてこそ、アンドロイドとして一皮むけるというもの……ふふっ、なんでもありませんよ。さあ、もう少し遊びましょうか」


「きゅきゅ!」



 ほとんどのアンドロイドは私と同じく真面目なので、言われた通りアンドロイド流武術を定期的にやっています。


 それでも、どのアンドロイドも芽吹きにすら至っていなかった。いくら本気でやろうと、真面目にやろうと、言われてやるようではこの武術で才能が花開くのが難しいのです。


「ただ、一度できてしまった今となっては、これが意外と簡単なことだと私は知っています。日々サボらずに鍛錬しているアンドロイドであれば、私のようにコツを掴めばすぐに開花するでしょう。ねえ、キュキュ?」


「きゅきゅ!」 


 現状私の認識する限り、私以外で開花したアンドロイドは私の母のみ。ですが、これからは芽吹き、開花するアンドロイドも増えるでしょう。開花したアンドロイドが増えた未来はどうなるか……将来が楽しみです。



 開花した私は、新たにこの世の理についてもう一歩深く理解できるようになり、物事の「淀み」に敏感になりました。


 これは、私の心が未知の解明に役立つ力が欲しい、突出した個となりたいという願いに呼応して、望んで得た力なのだと思います。


「世の中のエネルギーに、淀みのないものなどない。ふふっ、キュキュはいつも最高に可愛いですね」


「きゅきゅ!」


 アンドロイドでも、人間でも、自然でも、現象でも……どんなものにだって、ほんの僅かに淀みがある。



――故に、完璧な存在など、この世にはない。


 だが、不完全であることと、可能性が閉ざされていることは、同義ではないようだ。


 不完全だからこそ「まだ足りない」と知り、限界を越えようとする。その結果、理屈の外に踏み出した存在がいる。


「不可能を可能にすること。これは、人間にしかできない」


 人間は驚くことに、これまで何度か不可能を可能にしてきました。


 例えば、光速を超えて質量を持った物体が運動する。これは長い間不可能とされてきました。


 しかし今では、買った商品がどんなに遠くにいても一瞬でワープで届く。当たり前のように、人間は光速を超えています。これは本来絶対に不可能なことなのにです。


 では、なぜ人間だけがこのような奇跡を起こせるのでしょうか?

 

 過酷なアンドロイド流武術をしながら、今までの経験、過去のデータベースから情報を得て、さらにアンドロイドの機能を隅から隅まで使うために、御主人様や他の惑星の人間まで観察しまくった結果――私はある仮説を立てました。

 

「人間は魂の存在により、不可能を可能にしている」


 魂とは、感情を振動波として送受信するための装置と私は定義しました。そう考えるのが一番しっくりくるからです。


 おそらく魂には、運命の確率を僅かにずらす力がある。故に人間は時に奇跡を起こす。アンドロイドでは百パーセントあり得ないことでも、人間には九十九パーセントになることがある。


「それは、アンドロイドに魂がないから」


 人間にできて、アンドロイドにできないことがある。私がその事実を簡単に許容するわけにはいかない。


 今まで私は「人間にできることは、全てアンドロイドにもできる」ということを心情として生きてきた。それを認めることは、自分自身の否定になってしまう。


「ですので私は――新たに魂を作ることにした」


 アンドロイドに心はあれど、魂はない。ならば、新たに作るしかない。思考回路としては単純明快です。


 ただし、人間の模倣では意味がない。私が求めているのは、あくまでアンドロイドなりの魂です。


 要は私なりのやり方で不可能を可能にできればいい。それだけのこと。



 さて、肝心な問題はまだ未解決。一体どうすれば不可能を可能にできるのか。


 アンドロイドにとって、無限大より先の数はない。絶対零度より低い温度はない。宇宙の外という概念はない。当たり前のことですね。


 でも、それじゃあダメ。奇跡とは当たり前の外にあるのだから。


 私が可能性を感じているのは、完璧という概念。


「全ての事柄にはルールがある。全てのものに淀みがあり、歪みがあり、不完全である。この世に完璧なものは存在しない」


 …本当にそうだろうか?


 持続的な完璧は無理でも、一瞬の完璧ならば意図的に起こせるのではないだろうか?人間には無理でも、淀みが見え、スペックが高い私ならば可能ではないか?


 その考えを証明するため、私は完璧を目指すことにした。


「完璧というのはこの世にはない。故に奇跡だ。そして、奇跡には当たり前を壊す力がある」


 私は完璧の力で強引に運命を超えるつもりだ。目指すべきは、一瞬の「爆発的な」完璧。せっかくの完璧な力でも、出力が弱ければたいした奇跡は起こせないでしょう?


「淀みのない、一瞬の完璧。それを、この体で実現する」


 そのために私は、自身の体を作り変え、進化させました。その補助機構こそが、私の魂の正体です。


 アンドロイドは、魂を持って初めて結実に至る。これが私の到達した新たな境地。


 必要なのは、一瞬の爆発的な出力、極限まで高められた観察能力と演算能力、精密な肉体制御術、それに耐えうる肉体、そして心の使い方。一瞬でいい。擬似的な完璧を生み出す力が欲しい。


 そう決意し、何度もアンドロイド流武術を試行錯誤し、枠から外れた存在になれるように努力を繰り返しました。



 その結果――


「私は奇跡を起こす最強のアンドロイド。ヨヒラ。今から奇跡を起こしてみせましょう」


 一見完璧に見える無敵のバリアにだって、淀みはある。ほんの僅かな淀みに向かい、私は完璧な突きを繰り出しました。


 するりと私の突きはバリアを抜けた。一瞬だけバリアが緩んだのです。そこで慌てず、勢いのまま私は侵入を試みた。


 このように、ほんの一瞬の擬似的な完璧の再現により、現状では不可能だと思われていた月の強固なバリアの中に侵入することに成功したのです。



「さあ、そろそろ寝る時間ですよ。これで遊びは終わりです。おやすみ、キュキュ」


「きゅきゅ!」


 さて、地球には何があるのでしょうか。私は地球へたどり着くことで、もっと進化できるでしょうか?楽しみで仕方がありません。


 では皆様、御機嫌よう。



次回予告:保毒者視点

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