出発直前!その2!いざ地球へ!
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出発前、俺たちはコックピットに集まった。
「さて、視聴者に新婚旅行でしばらく配信を休むとも伝えたし、全ての準備が整ったな」
長い間消息不明になる言い訳として、俺は新婚旅行に行くと視聴者に説明した。事実俺は地球に新婚旅行に行くつもりなので、別に嘘はついていないつもりだ。
「そうね。じゃあわたくしはこの時間でゆっくり仕事に取り組ませてもらうわ。セリ、ヒノキ、操縦は頼んだわよ?」
「オッケー。でも、この宇宙船なら意外と早く地球へつくけどね」
「…ねえ」
小さく呟いたウツギの声は、あっさりと俺たちの賑やかな声にかき消された。
「セリとの操縦、楽しみだなあ……俺、あの時間が大好きなんだよ!なんか、一段階上のイチャイチャみたいで幸せで仕方ないんだよね!」
「えへへ~。僕もあの時間が大好き!おそろいだね!」
「ねー!」
俺とセリは熱っぽく見つめ合って笑いあう。
「あら?そんなにその操縦の“シンクロ”とやらがいいものなの?わたくしもやってみたいわね。今度ヒノキのお母様に頼んで、その状態を再現できるものを作ってもらいましょうか」
「私もそのシンクロとやらを体験してみたいですね。アンドロイドと人間は思考を溶け合わせることができるのでしょうか?」
「…ねえ!」
今度は少し強めの声。しかし、楽しくイチャイチャしている俺たちは全く気づかず、会話は軽快に転がっていく。
「あ、みんなはいつも通りの生活をしておいていいぞ。どうせこの船まるまる動くから、どこにいたって一緒だからな」
「では、私はお母様としばらくゆっくり過ごさせてもらいますね。家族水入らずで、積もる話もありますし」
「…あ、そうだ。ヒノキのお母さんを拾っていくために、ヒノキの母星に寄り道するからね。せっかくの功労者が地球へ行けないなんてダメだもん」
「そうだな。もし母を置いて地球へ行ったら、一生ぐちぐちと文句を言われ続けることになるだろうし、そうしてくれると助かるな。あ、セリもトリカも、連れていきたい人がいれば一緒に連れて行ってもいいぞ?親とか友達とかな」
「あいつらは別にいらないわ。邪魔だし」
「あいつらってトリカのお母さんとシベ子のこと?シベ子はあれだが、カブトさんは連れて行っても面白そうだな」
「わたくしが嫌だから、絶対に連れて行かないわ」
「まあ、トリカがそう言うならそうするか。セリは誰か連れていきたい人はいるか?」
「僕も別にいいかな。お姉ちゃんは引きこもるのが好きだし、おばあちゃんはあまりそういうのに興味ないタイプだからね。えへへ~。ヒノキすき~。ちゅ~して良い?」
「いいぞ!」
「ねえってば!」
「さっきからうるさいわよ、ウツギ。わたくしはヒノキの背中を堪能するのに忙しいの。なにか文句でもあるの?」
「聞こえてたんなら返事しなさいよ!」
ふとウツギの方に目を向ければ、かなり怒っている様子がうかがえた。会話に夢中になりすぎて、ウツギを無視してしまっていたようだ。
…トリカはしっかり聞こえていた上で無視していたようだが。
「あなた達、距離が近すぎる!それに、当たり前のように濃密なスキンシップしないでくれる!ヒノキの周りだけ湿度が高いのよ!イチャイチャしてるのを見せつけられてるみたいで、すっごくムカつくわ!」
…なるほど。それで怒っていたんだな。
確かに今の俺は、膝の上にセリが向かい合って座り、背中にはトリカがぴたりと張り付き、隣ではヨヒラの細い腰を腕でぐいっと引き寄せている。これでもかというほどイチャイチャしている――まさにそんな状態だ。
けれど…
「ゴメンな、ウツギ?我慢してくれ。俺は今、三人と愛を確かめ合わずにはいられないんだ…」
三人から流れてくる愛の波動が気持ちよくて仕方がないんだ。多少イチャイチャするのは許してくれ。
「ふふふ、わたくしの夫がごめんなさいね」
「ねえ。その夫ってもう一回言って?」
「あら?夫なんてこれからいくらでも呼ぶことになるわよ?今は我慢しなさい」
「えー、俺は今その言葉が聞きたいのに。お願いお願い!」
「だからあ!うちの目の前でイチャイチャするなって言ってんの!端的に言ってウザいわ!」
…おっと、また世界に俺たちしかいないみたいな空気感にしてしまった。失礼。
そんな俺たちを見て、ウツギは大きくため息を吐いた。
「ていうか、まだセリとトリカは恋人だからまだいいわ。でも、なんでヨヒラもあんたのハーレムに入ってるのよ!なんでヨヒラもそれを強く抵抗しないのよ!」
確かにその疑問はごもっともだ。ヨヒラにはまだまだ絶賛アプローチ中。付き合っているわけでも、将来を誓い合ったわけでもない。ヨヒラから愛の波動自体は感じているが、実際にヨヒラの口から「愛している」とは聞いていないのだ。
この状態も、俺が強引に引き寄せているだけだしね。
「私は御主人様の愛を拒むことをやめたのです。決して付き合ったり結婚したりはしませんがね」
「そう!ヨヒラが俺の愛をある程度受け入れてくれるようになったのは嬉しいけど、どれだけ言っても深い関係にはなってくれないんだよ!ヨヒラからの愛もガンガン伝わってるんだから、付き合ってくれてもいいだろ!」
「私はアンドロイドとしての矜持を大切にしています。私が私である限り、人間と付き合うといったことは起こりえません。ただ、アンドロイドが人間から好かれるというのは、もはや自然の摂理です。よって、愛は受け入れるのが自然なのです」
「こんな謎の理論武装で拒否されて、俺は困ってるんだ。頼む、ウツギからもなんとか言ってやってくれ」
俺の本気の悩みを聞いたウツギは、こめかみを揉みながら、俺たちをバカな子を見るような目で見る。
「はあ~。変に自信をつけたヒノキってめんどくさいわね。前のヒノキの方が扱いやすくて良かったわ…」
「でもさ、そんな事言いつつ、ウツギからの愛もビンビン感じてるぜ!」
「うるさい!」
「あら?結局あなたもハーレムに入りたいだけじゃないの?おほほほほ!」
「トリカもうるさいわ!ぶっ飛ばすわよ!」
「きゃー!助けてヒノキ!」
トリカが棒読みでそう叫びながら、柔らかな体を俺にぎゅっと押し付けて抱きついてくる。
「なんであなたまでこんな馬鹿になってるのよ……歌姫として歌っている時はあんなに輝いているのに、見てられないわ」
「大丈夫、わたくしはメリハリをつけてイチャイチャしていますから。今は全身全霊、全力で愛を確かめ合って脳を溶かしているだけよ」
「まあ、確かにあなたはメリハリをつけようとしているだけまだいいわ。それができているかどうかは別としてもね。でも、問題はセリ。あなたよ」
「えへへ~。僕もね。へへへ~。多少のメリハリはつけてるよ?」
「いいや!セリに関してはいつ何時でもとろけるような顔してるわ!」
「えへ~」
「えへ~じゃないわよ、もう…」
ヨヒラは心底呆れているようだ。
「まあまあ、ウツギ。みんなが羨ましいのは分かるが、落ち着いてくれ」
「う、羨ましくなんてないわよ!言っておくけど、イチャイチャして喜んでるのは本人たちと閣下くらいなものなんだからね!」
ウツギはぜえぜえと息を切らしながら言い放った。
「ねえ、ヒノキ。そう言うウツギからも愛の波動をバンバン感じるのよね?」
「ああ、そうだな。でも波動を見る限り、ウツギの愛は性欲直結型っぽいから、俺のことが魂から好きってわけじゃあなさそうなんだよ」
これは愛が可視化してから分かったことなんだが…
どうも俺って愛に関しては潔癖っぽいんだよね。愛に多少性欲が混じっていてもいいけど、性欲ばかりだと不満がある。
例えるなら、ヨヒラやトリカ、セリの愛は「ごはん」のような、絶対に必要なものに対して、ウツギは「甘いデザート」のような感じかな。
俺はいくら甘くておいしかろうが、デザートと一生をともにするつもりはない。
でも、だからこそ油断できない。このデザートはめちゃくちゃ、それはもう心底魅力的だ。誘惑に負けず、強い心で自制しないとな。
「なによ!女としては性欲直結なのが普通でしょ!そういう愛もあるのよ!それに、最近のあなたがやたらエロいのが悪いのよ!」
「ねえ?開花してから、そんなに俺って魅力的になったの?」
「ムカつくけど、今のあなたは男としてめちゃくちゃ色気があるの!無骨な魅力に湿度が加わったの!香り立つほど色気があるの!!普段より自然体で優しく微笑むようになったの!!ムカつくけど!!!」
そんな二回言わなくても……でも、シンプルに嬉しいな。
「いやあ……へへへ」
そんな俺を見て、ウツギはため息を吐いたのち、挑発的な目で俺の瞳の奥を覗き込む。
「…絶対にうちと不倫してもらうからね。結局セフレくらいが一番いいのよ。それに、あなたが満たされて以前ほどチョロくなくなったとは言え、人並みのチョロさになっただけだってことをうちは知ってるわ。調子に乗っているのも今のうちよ」
「がはは!大丈夫大丈夫!」
――ウツギが言うように、今の俺は確実に調子に乗っているのだろう。なんとなくそれは自分でも分かっている。でも、やめられない。
なにせ開花したばかりだ。こんな大量の愛を向けられて、調子に乗るもの仕方ないだろ?
どうせこの状態もいずれ慣れてくるのだろう。それまでは広い心で許してくれよな。
「さあ!新婚旅行へ行くぞ!」
次回予告:閑話休題を4話はさみ、7章の始まり 7章:地球へ新婚旅行!




