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貞操逆転スペースファンタジースローライフ!?~男女比が1:10の宇宙で男に生まれた俺が、辺境の無人惑星でスローライフする姿を配信する  作者: ながつき おつ
6章 前世

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修行終了!みんなのおかげ!

読んでいて少しでも感情が動いたら、評価・リアクション・ブックマークをお願いします。




――きっかけは些細なことだった。



 俺はしばらくの間、グルメカントリー関連のイベントで忙しく過ごしていた。


 連日働き詰めだったので、その日はリラックスのため、俺はセリの家で配信も休み、休息を取ることにしたんだ。


 …この日は気持ちいいくらい晴れていたっけな。


 セリと一緒にゲームをして、一緒に料理を食べて、


「そう言えばさ、いずれ僕たち二人で宇宙船の操縦をすることになるじゃん?」


「そうだなあ。もう合わせ練習も終わったしな。俺の方は車の運転くらいの難易度だったから助かったわ」


 こんなふうに一緒におしゃべりして。


「雰囲気づくりのために、最近新しく発売された船の操縦のゲームを買ってほしいなー。お願い、ヒノキ!」


「うん、まあいいよ。俺もあのゲームは気になってたしね」


「わーい!ありがとう!ヒノキ大好き!」


 セリがおねだりし、俺が「仕方ないなあ」と買ってあげる。セリがぐぎゅっと抱きついてきて、キラキラした目で大好きと言われる。



――いつもの日常。いつもの光景。


 ただ、この日は何かが違っていた。


(…ん?今なんか…)


 満たされた。そう感じた。


 何に満たされたとか、具体的なことはよく分からない。ただ、満たされた。そうとしか思えなかった。


 そして、それを自覚した瞬間――


(なんだこれ……?見える世界が変わった?何かが俺の中に直接流れてきている……?)


 形のない“青く深く透き通った何か”がセリの全身から俺に向かって発されている。それを名付けるのなら「波動」とでも言えばいいのだろうか?とにかく、とんでもない量の奔流が、俺に向かって流れ込んでいるのだ。


 俺の体からも似たような“キラキラした何か”がセリの体に流れ込んでいる。見た目は全然違うものだけど、この二つは同じだと直感的に分かる。


 セリから波動が流れてくると、俺は心がポカポカして嬉しくなる。俺から波動がセリに流れていくと、セリも幸せそうだ。


(よく見ると、セリ以外にもたくさんの波動が俺に流れてきている)


 弾けるような波動、燃えるような波動、香り高い波動……その他にも、大量の雑多な波動が俺に向かって流れてきているのだ。


 この大量の波動一つ一つが、俺を満たした――その考えには妙な納得感があった。


(嬉しいなあ……幸せだなあ……尊いなあ……)


 この波動を認識して、波動が俺を満たしているのを肌で感じて、本能が歓喜している。泣きそうになるくらい、この波動一つ一つが愛おしくてたまらない。


 この時、波動の正体がなんとなく分かった。この答えが妙にしっくりきてしまった。


(…もしかして波動って――愛?)


 この時、俺の心がパンと弾けた。    


 俺の胸の中がキラキラと輝く。

 

 ジーンと来て、ポカポカして――



「セリ、結婚しよっか?」



 自然と口に出していた。


 口に出さないとどうしようもなかった。言わずにはいられなかった。

 

 胸がいっぱいで、体の底から指の先まで力がみなぎっていた。体の中でなにか力強いエネルギーが奔流となって走っていた。無限に湧き上がってくる愛しい気持ちをこれ以上抑えることはできなかった。


「結婚しよう。セリ」


 一度ダムが決壊すると、もう止まらない。


「愛してる。大好きだ、セリ」


 俺の細胞一つ一つから、セリに波動が流れ込むのが見える。


 愛を口にすればするほど、世界が鮮やかに見えていく。


 セリの灰色の目は美しく潤み、全身が歓喜に震えている。

 

「もちろんだよ!僕もヒノキのことが宇宙一大好き!結婚しよう!」


 セリの波動と俺の波動が混ざり合い、宇宙一鮮やかな一輪の花を咲かせた。




――俺は完全に開花したと、直感的に分かった。ずっと整えてきた準備がついに満ちきり、その最後の一滴が落ちたことで、この日に開花が引き起こされたのだろう。


 開花してから、俺の世界は明確に変化した。


 今まで全く感じ取れなかった、人に纏うオーラのような、波動のような……そんな不確かな何か。それを俺は感じ取れるようになった。


 この波動の正体は、愛だ。明確な根拠はない。けれど、俺にはそうとしか思えない。


 俺は【愛の可視化】ができるようになったのだ。


 

「ヒノキ、いつもよりあったかい。温かくて力強い。それに、新緑の葉っぱのような……新鮮でみずみずしく、力強い香りがする。そばにいると、すっごく安心する。そっか、これが本来のヒノキなんだね」


 俺がプロポーズの言葉をこぼしてから、セリは俺の腕の中でこのような事を何度も口にする。


 セリは俺の変化に俺以上に敏感だ。セリがそういうのなら、今の俺が本来の俺なのだろう。


「ふふふ。ヒノキから、優しくてあったかくて力強い、どこまでもまっすぐ伸びる大木のようなエネルギーが流れてくるのが分かる。今のヒノキには、いつも以上に甘えたくなっちゃうな」


「それはよかった。俺、甘えられるの好きだからね」


 優しくセリの髪を撫でる。


「僕もヒノキに甘えるの大好き!」


 この日は一日中、俺たちは愛を確かめあった。




 次の日。


 今日も昨日と引き続き、雲一つない気持ちのいいお天気だ。


 朝から俺はトリカの家に来ていた。


「おはよー、トリカ」


「あら?朝から来るなんて珍しいわね。どうしたの?」


「トリカ、結婚しよ?」



「………は?」


「トリカ、結婚しよう。返事は?」


「ちょ、ちょっと待った!いきなり過ぎるわ!玄関で何言ってるのよ!雰囲気ってものがあるでしょうよ!それに、こちらにも心の準備ってものが――」


 口では何を言おうが、トリカから発せられる愛の波動は俺にどんどん流れてきている。頬も赤く、俺を受け入れる気があることは明白だ。今の俺は愛に敏感なので、何も言わなくてもそういうのが分かってしまう。


「あ、そうだ。これ言ってなかったな。俺はプロポーズを断るなんて許しません。ってことで、トリカ、結婚しよう」

 

 俺はトリカの肩を掴み、真剣な目で迫る。


「ま、待った!強引過ぎるわ!おすわり!ちょ、待て!!待てと言ってるでしょ!」


「ふふふ、待ちませーん!トリカ、愛してる。結婚しよう。ほら?返事は?」


 頭のてっぺんから足のつま先まで満ちた愛情を、そのままトリカの耳元にそっとささやきかける。


「うぐっ、な、なんで止まらないのよ!一回止まりなさい!というか、話を聞きなさいよ!わたくしはもっとドラマチックなプロポーズしか認めないわ!そして、その時の様子を歌にして披露するのよ!」


「大丈夫、ドラマチックでロマンチックなプロポーズも今度やるつもりだから。今日は意思確認だけしにきたんだ」


「…それなら、まあ……ていうか、チョロいあなたはどこへ行ったのよ……あなたってそんな攻めっ攻めのキャラでしたっけ?」


「あ、ちなみにだけど」


「話を聞きなさいよ!」


「もうこれ以上俺は返事を待てそうにありません。よって、これ以降『イエス』以外の返事をしたら、唇を強引に塞いで黙らせます」


「はあ…」


「トリカ、結婚しよ」


「…はぁ。仕方ありませんわね。わたくしが結婚してあげます……ぅむ――!」


 言い終えるよりはやく、俺は強引にトリカにキスをした。


「ちょっと!?話が違うじゃない!イエスの返事なのに、なんでキスするのよ!」


「いや、したくなったから。てへ」


「てへじゃないわよもう…」


 トリカは嬉しさと呆れを交わらせた表情を浮かべた。


「で、なんで突然プロポーズしたのよ?」


「俺、待つのはやめたんだ」


 もうね、どうしようもなかったんだ。俺の中に積もり積もったトリカの愛が、俺を突き動かしたんだよ。


「…答えになってないわよ、もう。今日のあなたは強引すぎるわ」


「きっとこれからの俺はこんな感じだから、よろしくね」


「…まあいいわ。今日は突然のことで遅れを取ったけれど、わたくしは猛獣の扱いくらい心得ているわ。今後はこんなふうに負けないですからね!リードするのはいつだってわたくしでしてよ!」


「別に勝ち負けじゃないんだが」


「いいの!こういうのは気持ちの問題なの!リードされるのは今日だけ!もう」



 それから、トリカは俺の腕にすっぽりと収まり、たくさんの文句をぶつけてきた。


「あなたのトラウマ対策に、前世にも届く歌をようやく作れたってところだったのに」とか、「トラウマを克服したあなたが、感極まってわたくしにプロポーズするところまで予定を立てていた」など、俺のために色々画策していたのが台無しになってしまったようだ。


「ごめんごめん、でも、トラウマとか今やどうでもいいや」


「ほんとに……あなたっていっつも想定通りにはいかないんだから……厄介な男を好きになっちゃったわ」


 小言を言いながらも、トリカの愛をビシバシ感じる。それが俺は何より嬉しい。


 すまんな。何度でも言うが、トリカが愛しくてどうしようもなかったんだ。諦めて俺と一緒に未来を過ごそう。もう絶対に逃さない。逃がす気もさらさらない。覚悟してくれ。



 それから、一ヶ月くらいは、配信もしつつ、とにかく二人と愛を深めまくった。配信で惚気話もたくさんした。視聴者からはもう良いからとうざがられるくらいには、俺はのろけていたらしい。


 視聴者にも感謝を伝えまくった。俺が開花できたのは、視聴者からの愛のおかげでもある。前世は弱さじゃないことや、前世の俺に対するうがった見方など、気付かされることも多かった。


 そんな事をしているうちに――ようやく地球行きへの準備が全て整った。


 いつの間にか季節は十二月に入り、本格的な冬の様相を見せていた。ただ、この日以降俺はトラウマに苦しむことはなかった。


次回予告:ここで今までの過去を振り返ってみよう!

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