全員優秀!俺はいつも通り!
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――やることが決まった後の皆の活躍がすごい。
ヨヒラはしれっと月のバリアを抜け、月の中心にまで到達し、しっかり現地で調査を行っているらしい。
あれ?なんか月には立ち入ることすらできないものすごーいセキュリティが張り巡らされてるんじゃなかったっけか?
そう思いヨヒラに聞いてみると、「アンドロイドに不可能はありませんので」と、全く疑問の解消に役立たない返答が返ってきた。
「私一人ならば、月の中心部にたどり着くことはできます。ですが、私が電源スイッチを入れても、全く反応しませんでした。おそらく、これも御主人様でなければ稼働しない仕様なのでしょう」
と、ヨヒラは言う。
…それにしても、最近のヨヒラの規格外っぷりが本当にやばい。Eエネルギーによるバリアがあるのに、しれっと一人で月の中心部に行ってるし、スリープモードも解除しかけてるしさあ……
このように、最近ヨヒラは大きく一皮剥けた。ただ規格外なだけでなく、雰囲気がガラッと変わり、以前よりもめちゃくちゃ魅力的にもなっている。そんなヨヒラがそばにいると、平常心を保つのすら難しい。さっきからずっとドキドキしっぱなしだ。
俺がそんなふうに感じていることは、ヨヒラにもお見通しのようだ。目が合うとニッコリと微笑みかけてくる。すると、またズッキュンとハートを撃ち抜かれて……ぎゅううと胸が締め付けられ、どうしようもなくなる。
それでも俺の思いに答えてくれることはないのだから、困っちゃうよな。
「…こほん。えっと、なんでヨヒラはそこまで変わったんだ?」
「ふふっ、ただ成長しただけですよ。アンドロイドのスペックを心から信じ、アンドロイド流武術を行っただけです。特別なことはしておりません」
「…いや、俺がもしアンドロイド流武術をやり続け、行けるとこまで行けたとしても、そんなふうになれるとは思わないんだが…」
「それはひとえに、私がアンドロイド流武術で本来得られるはずのものだけでは満足できなかったからでしょう。修行を独自に改良し続け、想定外の領域にまで到達しただけのこと。大したことではありません」
…いやいや、それはもはや謙虚ではないぞ。謙虚風自慢だ。ものすごーくとんでもないことを、大したことないとか言われましても…
「ああ、そう言えば、成長にあたって、御主人様の理想を勝手に参考にさせてもらいました」
「俺の理想を参考に?」
「はい。全てを受け止めてから、自分のタフさに絶望させたのち、無慈悲に倒すってやつですね。今では、その理想の上位互換のような戦い方ができます。今度見せてあげますね」
なんかそれ、俺の思っている理想とちょっと違くない?より悪い魔王っぽくて大体は合っているのが、逆にたちが悪い。
別に、俺は相手を絶望させたいわけじゃないからな?それに、無慈悲に倒したいわけでもないぞ?
「なんで俺の理想を参考にしたんだ?」
「それは、私が理想へ向かう道の途中に、御主人様の理想があったことが一つ。それと、ただ御主人様の理想を先に叶えてみるのが面白そうだったから――それだけです。どうですか?なりたい自分に先になられた気分は?」
ヨヒラはそうおちゃめに言ってのける。
…いや、普通にやめてよ。俺が二番煎じになっちゃうじゃん。
「ふふっ、アンドロイド流武術の理解度は、今や私が宇宙で一番となっているでしょう。御主人様にも私が月の調査が終わり次第、また修行をつけてあげますね。今ならばもっとうまく説明できます。その時に、“芽吹き”、“開花”、“結実”というのを教えてあげますね」
と、ヨヒラはよく分からないことを言って去っていった。
セリは惑星の中心に残り、しばらくはそこで暮らすようだ。「いや、泊まり込みまでしなくても…」と思ったが、セリは「このやり方のほうが楽しめそうだから!」と、まるで新しいゲームをクリアするみたいに言ってのけた。
そんなセリは、一日で宇宙船の操縦方法をみるみる覚えていった。宇宙船の操縦はサポートするほうが超高難易度で、圧倒的に難易度が高いと聞いていたんだが…
「このゲーム、すっごく面白いよ!じゃんじゃん湧いてくるエイリアンにも対処しなきゃだし、膨大な視覚情報を整理して適切なルートを取らなきゃだし、操作も難しいし……ああ、手が二本じゃ足りない!でも、それが面白い!」
「ええ…」
えっと……エイリアンとか対処しないとだめなの?それ、知らなかったんだが…
「うん、エイリアン退治は基本中の基本だよ?どうもEエネルギーに反応して、エイリアンは寄ってくるみたいなんだよ。理由は分からないけど、それはもう親の仇ってくらい、エイリアンは全力で宇宙船を壊してくるらしいよ!ワクワクするね!」
ごめんセリ!俺、それに全くワクワクしない!普通に怖い!船長やだ!
「大丈夫だよ!この船、やたらと戦闘に特化してるからね。高火力の武器となる機能がいっぱいあって、武装は過剰なまでの用意がある。多分、そういう設計思想なんだと思う」
「ほえー。この船は移動より、戦闘に特化してるのか。」
まだしっかりは確認してないが、確かに戦闘モードの項目がやたらと充実していた気もするな。
「その中には、この宇宙を崩壊させるほどのとんでもない兵器なんかもあるんだ。一体この宇宙船はどんな敵を想定しているんだろうね?」
…しれっととんでもないこと言わないで。ほんとになんなのこの船。それがあるってことは、どこかで使う場面が来るってこと?宇宙崩壊級の武器が必要に迫られるってこと?怖いんだけど!
「なんか話を聞いてると、すごーく不安になってきた。こんな得体のしれない船を俺が動かせるかなあ…」
「大丈夫!九割以上の操作は僕がするからね。ヒノキは大体の航路を決めたり、スピードを操作したり、僕のサポートを受け入れるだけだよ!心配しないで!」
「ああ、それは心強いな」
一割だけ頑張ればいいと言われると、なんとかやれそうな気がしてくる。
「僕はもう後一週間くらい徹夜で練習すれば、ヒノキと合わせ練習に入れると思う!」
「え?そんなに早いの!?年単位での練習が必要不可欠って聞いてたんだが!?セリの物覚え、スキル習得のスピードが早すぎない!?」
…ってことはさあ、俺も一週間くらいで操縦の勉強をしなければいけないってことだよな?これは骨が折れそうだ。だって俺、まだ少しも練習していないし。
「その後は一緒に何度か合わせ練習すれば、すぐにでも飛び立てるはず!楽しみだね!」
と言うやいなや、セリはまた練習に戻っていった。あんまり俺を置いていかないでね?あと、俺が物覚えが悪くても見捨てないでね?頼むな?
トリカは俺の母に莫大な資金を提供し、さらに、トリカの人脈を活かし、絶対に口を割らない研究者を母の元に大量に派遣した。
「こういうときは、とにかく物量よ。大抵のことは金とマンパワーさえあればなんとでもなるわ」とのこと。
そしてさらに、俺たちが地球へとたどり着いた後のことも、トリカは何か準備しているっぽい。
国交がどうたらとか、国を起こすとかどうたら呟いていたからな。
…って、国を起こすって何だ!?とんでもないこと言ってない!?
「トリカはすごいなあ……俺なんて地球へ行くの、観光気分なんだけど…」
「あら、あなたは全然それでいいのよ。あくまでわたくしはジ・アースへ行く準備を念入りにしているだけですし。あなたのことだし、どうせジ・アースへ行けば、何か起こるでしょう?」
…いや、俺に言われても困る。確かに何も起こらないということはなさそうだけどさあ…
てか、観光の準備で国を起こそうとする人なんて、トリカくらいだと思います。
ウツギは一度ヨヒラと共に月へ行き、バリアの破壊を試みた。しかし、あの黒炎でさえ火力が足りなかったようで、失敗に終わった。
その後、リベンジに燃えたウツギは、ハッセンさんのもとで修行を始めた。ハッセンさんはそのためだけに、この惑星まで足を運んでくれたらしい。ありがたいな。
そしてこの修行は、誰とも会わずに行う必要があるらしい。とにかくひとりで自分と向き合うのが重要とのこと。よって、ウツギは俺たちとの交流を禁じられている。
ハッセンさんからも、「協力してほしい」とお願いがあったので、俺たちのできることは信じて待つことのみ。とりあえず修行の途中経過は、「とても順調」らしい。
…ただ、ウツギから「この修行辛すぎる!やめたい!」みたいな泣き言メールがしょっちゅう来る。ホントはメールすることも禁止されているはずなのにだ。
すまんな、協力すると約束してしまったから、こっちからメールは返せないんだ……
でも、あの体力オバケなウツギが弱音を吐くなんて、一体どんな過酷な修行をしているのだろうか……想像すらできないな。
と、このように、みんな凄まじく成果を上げているのだ。
で、そんな俺はというと……
「ういーす。墾田永年私財法ムキムキイケメンのヒノキでーす。さて、今月から心機一転、また一人で配信頑張っていくぞ」
>告知してから配信しろ
>今日も楽しみ
>シェアハウス配信は楽しかったですね
>なんだよヒノキ一人かよ。味気ねぇな
俺だけいつものように、のんきに配信していた。
次回予告:臨兵闘者皆陣烈在前




