観光案内!その2!運動音痴は可愛い
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――ここの観光地、最高!作ったやつ天才だろ!
と、このように俺自身が乗り気になったからだろうか?ここから、時間はあっという間に過ぎていった。
ラフティングの次に行ったのは、ウツギ主導のスキー・スノボ体験。
俺、ヨヒラ、トリカ、カブトさんも、みんな運動神経が良い。ペットたちと戯れながらも、スイスイと滑って楽しんでいた。
セリは、俺の母と楽しくおしゃべりしながら、のんびり楽しんでいる様子だ。途中二人に、「僕たちを背負って滑ってみて」と頼まれたので、二人まとめて背負いながら俺はスノボを楽しむ一幕もあった。
ふっ……俺にかかれば、それくらい余裕ってもんよ!
一方そのころ、蓮華さんは足をガクガクさせながら、へっぴり腰で騒いでいた。どうもこの中で一番運動神経が悪いようだ。
「はあ…はあ…こんな滑りやすいものを足につけて、移動できるわけないでしょう!立つことすら難しいのですけれど!ああ、また勝手にうごっ――ウツギ、助けて!」
蓮華さんは、股が裂けそうになるほど足を開いた状態で、助けを求める。
…ああ、自分の意思とは関係なく、勝手に滑っちゃうやつね。分かる分かる。なんたって、前世の俺は蓮華さんより運動神経が悪かったからな。雪国出身のくせに、スキーなんてできる気がしなかったくらいだもん。
でも……あれだな。大人のしっかりとした女性の、ああも弱々しい姿って、愛くるしいな。失礼ながら、かなり微笑ましかったです。
そして、この時ばかりはウツギも蓮華さんに対して強気に出て、きゃーきゃー騒ぐ蓮華さんにサイキックでいたずらするなど、かなりのはしゃぎようだった。
スキー板をつけた蓮華さんでは、逃げるウツギにはどうしようもないからな。
…まあ、案の定スキーが終わった後に、こっぴどく叱られていたのだが……そりゃそうなるよ…
で、ここまで話に出てきていないおばあちゃんに関してだが…
彼女の滑りを見て、俺は腰を抜かすことになった。
おばあちゃんには常人離れした滑走技術があり、ニコニコしながらスキーで見事な空中三回転を披露したり、驚くほど美しい着地をやってのけたのだ。
その姿は、まるで氷上の女神。
「昔は六回転までできたんだけどねえ…よる歳には勝てないね」
…おいおい。ちょっと、すごすぎないですか?
その次はセリ主導で、のんびり動物・昆虫ウォッチング。
生物が多く存在する場所で、ただ野生の動物・昆虫たちを観察する場所だ。
ここでは、地中まで透けて見えるグラスで地中の虫を観察したり、透明になり、存在感を消すことができる薬などを用いて、そおっと動物を観察したりできる。
それで見えた生き物を、セリが解説するといった流れだ。
「蓮華さんが見ている、あそこの洞窟で火を囲み、集団になって丸くなっているのは、メラハリネズミという動物です。火に集まってくる習性があり、灰を食べるそうですよ。あ、カブトさんが見ている虫は――」
うん。解説はバッチリだな。
ここでは、基本的にみんなのんびり楽しんでいたのだが、俺の母と、おばあちゃんだけは、少し例外だ。
俺の母は生物が好きなのか、テンションが上がりすぎて、大喜びで虫を地面から掘り起こすというルール違反をして、トリカからしこたま怒られていた。
「いい大人なんだから、ルールは守ってください!いいですね!」
「はい…」
いいぞ。もっと言ってやってくれ。
おばあちゃんに関しては、ふと気づけばこの場からいなくなっていた。どうも、「面白い生物を見つけた」と言い残し、この場から離れたらしいので、追いかけに行ったのだろう。
そして、数十分後に、無事にこの場にやってきたのだが……登場の仕方に、また俺は度肝を抜かされた。
おばあちゃんは、とても小さい「氷の龍」みたいな生き物に乗って、空からやってきたのだ。
って、龍!?
そんな生き物、今まで見たことないぞ!?あんなのがここに生息してたのかよ!すごいすごい!
その小さな氷の龍は、サービスとばかりに弱い氷のブレスをお見舞いしたのち、おばあちゃんを地面に丁寧に降ろし、遥か彼方の空に飛んでいってしまった。
うん。絶対ここにはまた来よう。俺も龍に乗りたいもん。
次はトリカ主導のスケートリンク。
一面氷の地面を、トリカの音楽に合わせて、滑って楽しんだ。
ここでは、トリカとカブトさんによる、親子での生歌対決が行われ、今までで一番の大盛りあがりだった。
やっぱり、歌の持つ力ってすごい。人間には酸素や食べ物、水などだけでなく、歌が必要なんだと、身にしみて感じたもん。
対決と言いつつ、勝敗などはつけず、曖昧なまま終わった。
あえて勝敗を付けるとすれば――個人的にはトリカの優勝だな。
そもそも俺は、トリカの歌を宇宙一だと思っているからな。いくらカブトさんの歌唱力がすごかろうと、俺にはトリカの歌の方が、どうしたってテンションが上がってしまう。なんというか、トリカの歌を身体が求めてやまないんだよね。
…ま、俺がそう思っていようと、トリカ自身はどうもこの勝負の結果に満足していないようだがな。
トリカは対決が終わった後、とても悔しそうな顔をしていた。なにか思うところがあったのだろう。
別に悔しがる必要なんてないと思うんだけどなあ…
あと、肝心のスケートに関しては、みんなやったことがなかったらしく、滑ることに苦戦していた。
そんな中、おばあちゃんだけは初めからスイスイ滑っていた。音楽に乗りながら華麗に滑る姿は、まさに銀盤界の帝王。
…ちょっと何をするにしても、無双しすぎじゃない?おばあちゃんって、何者だよ?
あと、結局最後まで蓮華さんはまともに滑ることができなかった。運動音痴な蓮華さん、可愛い。
最後に、ヨヒラ講師によるスローライフ体験。
ここでは薪割りをしたり、その薪で火起こししたり、その火でかまどに火を入れてみたり、最後にみんなでパンをこねてみたりした。
実は俺もパンを焼くのは初めてだったので、スローライファーである俺自身が、他の誰よりも楽しんでしまった。
なんだか温かい目で見られてしまったが、すごく楽しかったのでまあ良いだろう。
こんな感じで、俺たちは観光地を楽しみつくしたのだった。
◆
予定していた観光案内が終わり、気づけば日も落ちてきた。
だが、この観光地は、夜も見どころが多い。
俺が最初に作った「自分探しの氷上」は、夜こそ素晴らしいものだし、他にも酒場、温泉などもある。
とはいえ、昼にたくさん遊びまくって、流石に疲れてきているはずだ。
そこで、まずは温泉で身体を休めてもらうことにした。
その後、それぞれ思い思いに自分探しの氷上に行ってもらい、最後に酒場で騒いで締めくくる――そんな流れで夜を楽しんでもおうと考えている。
「さあ!ヒノキ!せっかくの温泉だ!親子で一緒に裸の付き合いするぞ!」
その瞬間、この場の空気が張り詰めた。
カブトさんや蓮華さん、なんならウツギまで、俺がもしかしたら女風呂に入るかもしれないと、俺と母のやり取りをゴクリと息を飲んで見守っているのだ。
「…いやいや!流石に俺は女風呂には入らないぞ!」
でも、周囲の目は俺を疑っていた。「あのヒノキならもしや?」とでも言いたげな顔だ。
だから言わせてもらおう。そもそも、このカマクラホテルの温泉は、そんな甘い作りじゃない!
このカマクラホテルの温泉のセキュリティなどについて説明しよう。
もちろん風呂は、男女で分かれている。これは当然だな。
そして、男風呂に入るには、身分証明、ボディチェック、チップによる性的嗜好チェックなど、厳しいチェックがある。
これだけセキュリティが厳しいので、どうやったって男しか男湯には入ることができないのだ。
さらに、男風呂の前で男が出入りするのを待つ女性対策もしっかりしているので、独り身男のお忍び旅行すらも安心の設計となっているのだ!
あ、もちろん、女性が無理やり男性を女風呂に連れて行くこともしっかり対策しているぞ。そんなことしたら、一発で警報が鳴り響くからな。
そのようなことを、母にしっかり説明したのだが…
「でも、男が自身の意思で、女風呂に入ることに関しては、何にも問題ないってことよね?ヒノキ。命令よ!あなたは女風呂に入って、私たちにご奉仕しなさい!」
「やだよ!……ちょっと、やだって言ってるでしょ?引っ張らないで、やめてくれ!」
「あら~?口ではそう言いつつ、セキュリティに引っかかっていないわよ?嫌がって無理やり男を連れて行ったら、警報が鳴るんじゃなかったっけ?ふふ、あなたも本心では、女風呂に入りたいってことよね?……ほんと、エッチな息子なんだから~♪」
ぎくっ。
いや、そりゃあね…
男にとって、女風呂に入るのはロマンだから……ね?
…いや!ダメだ!いくら俺の本能がそれを望んでいても、相手方の母親たちの裸体を見るなんて、さすがに失礼すぎる!
それに、いくらこの社会が、男が女風呂に入ることが合法だとしても、俺の中で、それは立派な犯罪だ!
俺は、犯罪者にはなりたくない!
ということで…
男湯に、逃げろー!
「あら?残念。別に、女性は裸体を見られることなんて、全く気にしないし、なんなら男に見られることは、嬉しいことなのにねえ。それになにより、男の裸体を見られるチャンスを、逃す女性なんていないわよ……ほんと、女心が分かってない息子だわ」
母が何か呟いていたが、必死で逃げたため、俺の耳には入らなかった。
次回予告:俺はHINOKI。職業?ただのNo.1ホストだぜ?




