家族集合!その2!とにかく引っ掻き回す母!
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「やっほー、セリちゃん。久しぶり~。いつもヒノキの面倒を見てくれてありがとうね。こんな筋肉以外は常識内の駄目息子だけど、見捨てずにいてあげてね?」
「うん、久しぶり、ヒイラさん。せっかくだし、あのゲームしない?まだ時間あることだしね」
「私もちょうどそう提案しようと思ってたのよ!流石はセリちゃんだわ!」
そう言って、セリと俺の母はこの場でチップインストール型ゲームをし始めてしまった。
…どちらもマイペースだなあ。
まあいいや。ゲームしてたら、あの母も多少は大人しくなるだろうし。
俺の母――ヒイラと、セリは大の仲良しだ。
もともと母はセリのことを俺と同じくらい可愛がっていたが、セリがゲームにハマりだしてから、より可愛がっている。
なんなら、我が子である俺より可愛がっているのでは?と思ったことも何度もある。
母もかなりの廃ゲーマーだからな。似た者同士、共鳴する物があったのだろう。
「あ、そうだ。ヒノキ。あなた、さっさと心を決めて、セリちゃんと結婚しなさい。あと、トリカちゃんとも早く結婚したほうが良いと思うわよ?というか、さっさと結婚しなさい」
ボタンをポチポチしながら、俺の母は俺にしれっとこんなことを言ってきた。
いや、そんな軽い感じで言われましても…
そういうのに関しては、俺は慎重なんだ。デリケートな問題だから、ゆっくり決めさせてくれ。
「その様子じゃ、うちの愚息はまだ呑気にのんびり考えようとしているのね。はあ……ごめんね。セリちゃん。トリカちゃん」
「うん。ヒノキはそういう人だって分かってるから。大丈夫。僕もゆっくりやるつもりだし」
「ええ。これはもう、しょうがないことですわ。こんな男を好きになってしまった者の定めですもの」
…あれ?やっぱりこれ、俺が悪い感じなのか?
なんか、微妙にいたたまれない気持ちになってきたんだが…
「男ってみんな、うちの息子みたいにのほほんとしているのかしら?女からすると、危機感がなさすぎて、どうしても心配になってしまうわ。まあ、男女比がこれほど偏っているから、仕方ないことなのかもしれないわねえ…」
「大丈夫だよ。だって、ヒノキは僕のことが大好きだし、僕もヒノキを絶対に見捨てたりしないから」
「ええ。お母様が心配することは一切ありませんわ。だって、わたくしはもう、この男と一生を過ごす覚悟をもう決めていますもの!」
俺の恋人がかっこよすぎる件。普通に嬉しいんだが…
そして、そんなあまりにも真っ直ぐな二人の発言に、思わず母は声を上げた。
「あなたたち…最高のお嫁さんたちね!ヒノキにはもったいないくらいだわ!」
母は、俺もまとめてセリとトリカをぎゅっと包容した。
…ちょっと癪だが、俺も母と同じ意見だ。この二人は、俺にはもったいないほど素敵だもんな。恋人になってから、それは何度も感じていることだ。
「あ、だからヒノキ。なるべく早く決断しなさいよ。どうせ悩んだって結論は変わらないんだしね。だって、あなたが木だとすると、セリちゃんは土で、トリカちゃんは恒星光なのよ。だから、絶対に必要な存在なのよ」
セリは土、トリカは日光ね。
…たしかに、言いえて妙だな。まさしく俺にとって二人はそんな感じだ。
「…そう考えると、ヨヒラちゃんはあなたにとって空気、ウツギちゃんはヒノキという種子を運搬して、種を増やす動物ってところかしら。うん。どちらもあなたにとって絶対に必要ね」
ヨヒラは空気、ウツギは種子を運ぶ動物ね。
うん。妙に例えがスッと心に入ってきた。いい例えをするね。
どうやら俺はいつの間にか、生きるためにこの四人が必要不可欠な存在となっていたようだ。
そんな本質的なことを、まさかあの母の言葉から気づかされるとはおもわなかったなあ…
「そして、私はあなたが大きくなるように、こまめに水をあげた存在というわけ。ということで、私も含めた五人、まとめてさっさと孕ませちゃいなさい!私が許可するわ!」
……おい!
なんだか、途端にずっこけたい気分になった。
珍しく感心していたのに、結論がそれかい!
――その後も俺の母は、俺にお酒のツマミを作らせたり、肩を揉ませたり、やりたい放題自由に過ごしていた。
正直、俺に何かさせるくらいなら、まだ可愛いものだ。
だが、普通にしているだけで平気で爆弾発言をしてしまうところが、俺の母の最も厄介なところなんだよな…
例えば、
「ウツギちゃんはこれからも存分にヒノキのことを弄んであげてね。浮気相手だろうがなんだろうが、母が許可するわ!メスの力を見せつけてやるのよ!」
だとか、
「ヨヒラちゃん、嘘でもいいから。他の男といちゃいちゃしている姿を、ヒノキに見せつけてくれない?きっとヒノキは寝取られたと感じて、情緒がぐちゃぐちゃになるはずだわ!きっと面白い反応が見られるわよ!」
とかだ。
あの!お願いですので、口を閉じてくれませんかね!?
「ウツギの方はまだいいとしても、ヨヒラへの提案は本当にやめてくれ!想像するだけで心臓がキュッとしたわ!」
「あら?やっぱりそう感じるのね。あなたかそう感じたってことは、どこかヨヒラちゃんを自分のものだと思っているってことじゃないの?」
うん?うーん…
なぜか、うまい反論が思いつかない。
ってことは、母の言うことは、図星ってこと?いやいや、それは流石に極端か。
でも、俺の中で多少なりともそう思っていたことも事実。
俺って、無意識でそんな傲慢なことを考えていたのか…
「ねえ?そんなショックを受けるほどヨヒラちゃんを思っているなら、ヨヒラちゃんも恋人にしちゃえば?」
「いやいや…そんな軽い感じで言われましても。そもそもヨヒラはアンドロイドだからな。恋愛はしないんだよ。それくらい分かってるだろ?」
「常識を捨てなさい。ヒノキ。それに、ヨヒラちゃんのことを本当に愛しているなら、これからつらくなるだけよ?ほら、もう一度想像しなさい。ヨヒラちゃんの隣に、あなたよりイケメンで、優秀な男が寄り添っている姿を…」
うわああああ!!!俺の心を破壊しに来るのはやめてくれ!
つらい!つらいんだが!?
でも、こんなにつらいのなら、俺ってヨヒラのことが好きってことなのか!?
ヤバい!どんどん混乱してきた!
「お言葉ですが、ヒイラ様」
スッと、この場に冷静なヨヒラの声が入ってきて、頭が少し冷える。
「あら?なにかしらヨヒラちゃん」
「御主人様は私のことが好きなのではなく、ただ憧れているだけだと思いますよ」
…そうだよな。
憧れと言われ、一番しっくり来た。
そうか。俺がヨヒラに抱いていた気持ちは、憧れだったのか。母の言葉のマジックによって、少し変に考えてしまっていたようだ。
「ふふ、たしかにうちの子がヨヒラちゃんに抱いている気持ちは憧れでしょうね。でもね。うちの息子って、すんごく大雑把なのよ。ヨヒラちゃんも知ってるでしょ?」
「そうですね。他の男性が持つ繊細さが、御主人様には感じられません。ですが、それがどうしたというのでしょうか?」
「これ、実はすごく大事な要素なのよ。だって、雑な息子にとって、『憧れ』も『恋』も一緒みたいなものだもの!!」
……数秒、空気が固まった。
ヨヒラを指さして堂々と言い放つ俺の母を見て、いたたまれなくなった俺は、思わずそっと目をそらした。
「あらら?なんだか、私が変なことを言ったみたいな空気になっていない?おかしいわね?」
変なことを言ったんだよ。うん。
だが、こんな空気になろうが、俺の母は止まらない。
「いいや!私は間違ってない!ヒノキ!憧れと恋心の違いを言語化してみなさい!絶対にうちの息子にはできないはずよ!」
ほんと、往生際が悪いなあ…
仕方ない。最後まで母の言い分に付き合ってやるか。
「憧れと恋なんて、ぜんぜん違うだろ。だって……例えば……えーっとねえ。うん。あれだ。具体的に言葉こそ出てこないけど、違うもんは違う」
なんだか、ヨヒラたちから馬鹿な子を見る目で見られてしまっている!俺の言語化スキルが雑魚なせいで、母が正しいみたいになってしまった。
…あれえ?こんなはずではなかったのだが。
「ほら!息子は分かってないでしょ!?母には息子の心なんて、お見通しなのよ!だから、息子はヨヒラちゃんのことを愛している!はい、論破!証明終了!QED!」
「……たしかに、俺はヨヒラのことを愛しているのかもしれない!ヨヒラ!好きだ!結婚してくれ!」
俺はやけっぱちでそう叫ぶ。
ヨヒラはそんな俺に対し、ため息を吐きながら、何かをすぐ答えようとした。
――ただ、ヨヒラはこの時、口を開けたまま、実際に言葉を発することはなかったのだった。
ん?なんだ?いつもならこういう時、ヨヒラはすかさず鋭いツッコミを入れてくれるのだが…
俺にはまるで、言おうとした発言を、寸前で飲み込んだかのように見えた。
ヨヒラはこの時何を思い、何をためらったのだろうか?それはヨヒラ自身にしか分からない。
次回予告:糸目キャラは大体強者




