動物競争!ツラ構えが違う!
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「ういーす。拳闘妖狐ムキムキイケメンのヒノキでーす。今日はサプラアァ~イズで、ペットたちとヨヒラと共に、カマクラホテルに来ています!」
俺の今いる具体的な場所は、巨大キャンプファイヤーの前。そして、ヨヒラや他のペットたちは、今は俺の宇宙船で待機している。
>告知してから始めろ
>今日も楽しみ
>サプライズの言い方がムカつくwww
>ねえ?そうやって突然来るんじゃなくてさあ、事前に知らせてくれよ…
>今日旅行に行っている人、羨ましい!
「今日のダサTも文字は“むはい”だ!今からやるイベントも、負けるつもりはないからな!」
>そんな弱っちいフォントのむはいって文字見ても、強そうに見えないんだよなあ…
>というか、後ろがざわざわしてうるせえな
>ぞろぞろ旅行者が集まってきたなw
>というか、ヨヒラ様は!?ヒノキなんていつでも見れるんだから、ヨヒラ様はよ!
ドタバタ。ざわざわ。きゃあああ!うおおお!!
野次馬どもの声が絶えず聞こえてきて、今この場はとにかく騒がしい。
この観光地が相変わらず人気で、賑わっているのは何よりなのだが…
正直、ちょっとやかましすぎる。
コメント欄も、この場もますますハチャメチャになってきて、収集がつかなくなってきた。
みんなそんなに慌てるな。配信の最初の挨拶くらい、いつも通りさせてくれな。
「今からやるのは、観客参加型のちょっとしたイベントだ!題して『賭けて駆けろ!ペット大集合!障害物競走!』」
>障害物競走?
>ペット大集合だって!?
>ペットはよ!ペットを早く配信に出せ!
>くそう!なぜ自分は昨日帰ってしまったんだ……!!今日までいれば、そのイベントに参加できたのに……!!!
>昨日帰ったやつ、ざまあwww
「ルールを軽く説明するぞ!まあ、ルールといっても、ただのレース。誰が一位になるか予想して、当たれば賞金ゲット!ってだけだな!詳しいルールはヨヒラがまとめてくれているらしいから、各自チップで確認しておいてくれ!」
>相変わらず、説明が適当だな
>視聴者にも賭けに参加させろ!なんで現地にいる人のみ参加可能なんだ!
>どんな障害物とか、誰がレースに参加するかとかは、しっかりヨヒラ様がまとめてくれてるみたいだ
>あれwwwルールよく読んでたら、レース参加者はみんな動物なのに、一人ヒノキが混じっているんだがwww
>まあ、ヒノキはトリカ様のペットだしねwww
そうなんだよ。なぜかこのレース、トリカのツルの一声で、俺も参加することになったんだよね。
流石に障害物競走だと、俺は負ける気はしない。身体能力には自信があるからな。
とはいえ、どうやらこの競技では、それぞれの動物に合わせて障害の種類が変わるらしく、難易度も調整されるらしい。
となると、俺にもそれ相応のハードな障害が課されていると、覚悟はしておいたほうがいいだろう。
「じゃ、今から一時間後にスタートするから、それまでに説明を読んだり、誰が勝つかを予想したり、色々準備しておいてくれ!ま、どうせ勝つのは俺だろうけどな!」
>はいフラグ乙!
>確かに身体能力じゃあヒノキが一番だろうが…
>素早さならモグちゃんが一番じゃないか?
>噂のブルルちゃんっていう、デカい黒馬も出るのか!
>ブルルちゃんは最近産んだ子どもといっしょに参戦するらしいぞ!
>我は閣下が勝つと愚考しますゾ!閣下しか勝たん!閣下ファイト!
コメント欄も賞金こそ出ないが、それでもいい感じで盛り上がっていて何よりだ。
――説明も終わったので、俺はこの一時間で、ここに旅行に来た視聴者たちと握手したり、写真をとったりなどの交流をして、時間を過ごした。
その中で、たまたま以前選抜を抜けた千人の、ケモミミギャルと再会。
俺のお願いもあり、また顔にペイントをしてもらえることに。
今回彼女はテンパっていなかったので、ごく一般的なペイントを描いてもらえた。
フェイスラインに沿って線だけで描く、シンプルなラインアートだ。
派手すぎず、それでいて華やか。うん、いい出来だ!最高の仕事をありがとう!
そんなふうに過ごして、あっという間に一時間が経ったのだった。
「じゃあ、始めるか!ヨヒラ!スタートの合図は任せた!」
俺はスタートラインに立ち、準備万端だ。
「実況・解説・その他諸々、全てお任せください」
流石ヨヒラ。頼りになる。
じゃ、俺はただレースに集中させてもらおうかな。
目の前には、ヨヒラによって作られた即席のレース場。隣にはライバルたち。クスネ。閣下。ロイヤル。キュキュ。モグちゃん。ブルル。その子のクルル。みんなやる気満々だ。
俺はスタートラインで軽くストレッチしながら、今回走るコースを見渡す。公平性のため俺はコースの詳細を知らされていないので、今見渡して拾える情報だけで、どうやって障害を攻略するか考えないといけない。
ええっと…ざっとみた感じ、俺もどの参加動物も、走るコースは三つのエリアに分かれているっぽいな。
第一、第二、第三エリアをクリアすれば、ゴールになるようだ。それ以外はスタートラインから隠されていて、もう拾える情報はない。
ま、何がこようが関係ないけどな。俺はぶっちぎりで勝つ!
「では、いきます。……よーい…スタート!」
(リミッター限定解除!両足!)
俺は全力で地面を蹴り、ドンと地面から爆発音が鳴るほど、爆発的なスタートダッシュを決めた。
爆速スタートダッシュにより、現状は圧倒的に誰よりも先頭だ。
リミッター解除さえすれば、たとえ素早いモグちゃんだろうが、俺には追いつけない!すまんなペットたちよ。今回は俺が無双させてもらう!
『さて、先頭は御主人様!圧倒的一位です!二位はモグちゃん!流石の素早さ!三位はロイヤルと、キュキュ!同じくらいでしょうか、デットヒートを繰り広げております!馬のブルルは、最近産まれた子のクルルに並走しています!まるで、こうやって走るんだよと、教えながら走っているかのようです!』
ふむふむ。なるほど。現状はそんな感じなのね。ヨヒラの実況、走りながらでも聞きやすくて助かるわ。
それに、隠れた強敵だと思っていたブルルが、子のクルルに付き添ってくれているのはラッキーだな。
だってブルル、性格こそわがままお嬢様のようであれだが、身体能力に関してはめちゃくちゃ高いからな。
ブルルという馬は、キリッとした目元に、引き締まった筋肉を持つ。全身真っ黒なその馬体は、まさにイケメン黒馬。重さは二トンもあるというのに、軽やかに駆け、見事なジャンプまでこなしてしまうという、まさに名馬。
な?強力なライバルとしか思えないだろ?
『御主人様が先頭で最初のコーナーを抜けました!第一エリア、“アスレチックゾーン”に入ります!御主人様は、この障害物を抜けることができるのでしょうか!』
第一エリアに入ると、目の前に厄介そうな地形が次々と現れた。長く、険しく、難易度が高そうだ。
一方隣のレーンのクスネの障害物をちらりと見ると、ちょっとしたすべり台と、小さなハードルくらいしかない。
なるほどね。こうやって難易度調整をしてるってわけか。今はぶっちぎりだが、ここで苦戦していると、あっという間に追いつかれてしまうだろう。
…ま、俺がこんなところで苦戦するわけないんだけどな!
「余裕余裕!」
迫りくる鉄球のような障害物、高所で細いロープを渡る場所、ただただ重すぎる扉など、それらを俺は楽々クリアする!
多少苦戦したのも、ローションによってツルツル滑る床と、超強力な向かい風の組み合わせくらいだ。ここは足の指に力を入れて、死ぬ気で踏ん張り、なんとか突破した。
きっと、以前の俺ならここまで簡単にクリアできなかったはずだ。
ここを楽にクリアできたのは、最近俺のやっている「超重力化ラジオ体操トレーニング」のおかげだろう。ただ超重力化でオリジナルのラジオ体操第百をするというだけのものだが、そのおかげで、以前より俺はぐんと身体の使い方が上手くなっているのだ!
最初は思いつきで始めただけなのだが、あのトレーニングは思った以上に効果があったようだ。こうして目に見えて成果が見えると嬉しいな。
「おっと、御主人様がこのアスレチックエリアも楽々クリア!ぶっちぎりです!どうやら私の想定よりも、身体能力が成長していたようです!この男、どこまで成長すれば気が済むんだ!」
よしよし!まだぶっちぎりだから、後ろを振り返る余裕すらあるな。
ぱっと見た限り、モグちゃんをはじめとする足の早いペットたちは、アスレチックに苦戦している。足の遅いペットたちは、今ようやく第一エリアにたどり着いたみたいだ。
さて、独走しすぎてちょっと白けさせちゃったかもだけど……空気なんて気にせず、このまま一位をかっさらってやりますか!
『御主人様がアスレチックエリアを抜け、第二エリアに到着!ここは視聴者による“参加型妨害ゾーン”です!皆さん!御主人様が来ましたよ。妨害の準備はいいですか?』
「「「おお!!!」」」
第二エリア前で、大量の観光客が俺が第二エリアに入るのを待っている。どうやらコイツラが今回の「障害物」のようだ。
俺のレーン以外でも、妨害しようとしている観光客がいる。この様子だと、誰を妨害するかは観光客の自由なようだ。
第二エリアは、観光客自身が、自由に俺たちを妨害する場所ってことか。そしておそらく、妨害はなんでもありとはいかないはず。
例えばクスネを妨害する場合、ひょいと捕まえさえすれば、もう何もできないからな。
そんなことが許されるのなら、クスネの勝ち目がなくなってしまう。
だから、妨害にも何かしらのルールがあると思うのだが…
「おらあ!閣下様を勝たせるんだ!全力で止めてやるよ!」
「キュキュちゃんが勝つために、ここを通すわけにはいかない!」
「くすねキュン!私も頑張るから、頑張って!」
「じゅるり…合法的にセクハラするぞおお!」
「ふへへへへ!ヒノキ!めちゃくちゃにしてやるぜ!」
「ワイはヒノキが勝つのに賭けたが、男の身体に合法的に触れるそうだから、妨害させてもらいますね」
まるで「ここでは治安など存在しない」と言わんばかりの態度をした観光客が、ニヤニヤ笑いながらたむろしている。
高笑いする人もいれば、ナイフを舐めてる奴もいる。
えっと……もしかして、俺だけルール無用?
次回予告:ヨヒラとの結婚生活




