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貞操逆転スペースファンタジースローライフ!?~男女比が1:10の宇宙で男に生まれた俺が、辺境の無人惑星でスローライフする姿を配信する  作者: ながつき おつ
4章 夏休み!

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他星出張!ヨヒラの挨拶!

読んでいて少しでも感情が動いたら、評価・リアクション・ブックマークをお願いします。



 俺たちが海で遊んだ帰り道。


 ヨヒラから「二人きりで少し話がしたい」と言われたので、俺はヨヒラと共に北の拠点を訪れることに。


 話がしたいと言われて、「え?告白?もちろんオッケーです!」なんて、一瞬頭に浮かんだ。ただ、どうもヨヒラはシリアス顔をしていたので、空気を読んでその言葉は飲み込んだ。


 …あの時ふざけなかった俺、偉い。


「相変わらず、ヨヒラの拠点はすごいなぁ。季節のたびに、見える景色が違うんだもん」

 

 拠点の外観を見ながら、思わずそんな声が漏こぼれた。もはや見ているだけでも楽しい。隣のヨヒラも、それを聞いてふっと表情を緩める。口には出さないが、どこか誇らしげで、嬉しそうだった。



 ヨヒラの拠点は、俺が来るたびに進化している。


 この惑星に着陸したばかりの頃、ヨヒラの家を配信で紹介したことがあった。そのときは、キッチンなどの生活空間と、ウッドデッキ、地下室、それから外には作業場や肉の解体場、木材置き場があるくらいの、小さな家だった。まあ、小さいとはいっても、ヨヒラ一人が住むには十分な広さだったけどな。


 俺はその時点でも十分魅力的な家だと思っていたが、ヨヒラは「この拠点の完成度はまだ五割」なんて、信じられないことを言っていた。ただ、今のこの家を見る限り、その言葉は本当だったようだ。


 ヨヒラはあの時から、自分が納得するまで拠点を改築し続け、リフォームや増築を繰り返していた。結果、今ではまるで豪邸のような、立派な木造建築になっているというわけだ。



「おじゃましまーす」


「どうぞ、上がってください」


 ヨヒラと共に家に入ると、柔らかな木の香りがふわりと鼻をかすめた。なぜだが、それだけで心から歓迎されているような気がする。


 そんなことを思いながら、俺はヨヒラに居間に案内されて居間へ向かう。


 手作りの木の椅子に腰を下ろすと、ぎし、と木が優しく音を立てた。角の丸みが心地よく、座った瞬間にじんわりとぬくもりが背中に伝わる。


 ヨヒラは「少し待っていてください」と言って、台所へ向かった。


 湯を沸かす音が、奥から小さく聞こえてくる。茶葉をポットに入れる時の小さなサラサラとした音も聞こえてきた。どうもヨヒラは飲み物作りに関しては、原始的な方法を好んでいるようだ。


 …ああ、いいな。この待っている時間が、すごく落ち着く。こういう穏やかな時間が、俺は好きだ。


「ふふっ」


 気づけば口元に笑みが浮かんでいた。そっと息を吐いて、背もたれに深く身を預ける。その状態で、なんとなしにこの部屋を見渡してみた。


 地産地消を意識しつつ、高度な技術も使って作られたこの木造建築。外観だけでなく、内装も丁寧に造られていて、細部まで洗練されている。


 けれど、どこか張り詰めた感じはなくて――素朴だが、心地いい。


 湖のほとりに建てられているため、静かに揺れる水音が絶えず耳に心地よく響く。木の温かみのある色合いや香りのおかげか、室内の空気までもが柔らかく、ただここにいるだけで、穏やかに心を癒してくれる。


 窓からの景色も、また格別だ。


 大きく作られた窓からは、陽の光にきらめく湖の水面が見え、周囲にはヨヒラが植えた木々や花々が美しく咲き誇っている。


 ここに居ると、時間の流れすらゆっくりになったような感覚がする。息をするだけで、心がほどけていくようだ。

 

 …これは、まさに俺の理想とする暮らしそのもの。


 スローライファーである俺としては、どうしたって性癖にぶっ刺さってしまう。この家が羨ましくて、仕方がない。


「どうぞ、ハーブティーです」


「おっ!ありがと!」


 出されたハーブティーを一口飲む。



 ……ええ…このハーブティー、ちょっとびっくりするほどうまいんだけど…なにこれ?


 ハーブティーって、こんなに美味しいものだったんだな。まさかの美味しさに、ちょっと震えたわ。


 そんな俺のリアクションを見たヨヒラの口角が、ほんのりと上がる。


 なんだか、俺の内心が全て見透かされているようで、ほんのり恥ずかしい。


「で、話って何?」


 恥ずかしさを隠すように、わざと軽い口調で切り出す。けれど、自分の声が少し上ずっていたのは、たぶん気のせいじゃない。


 ヨヒラは「こほん」と小さく咳払いをした後、ほんの一拍おいてから、こう切り出した。


「結論から申しますと、少しの間この惑星から離れることになりました」

「え?駄目!行かないで!」


 俺は反射的に、ヨヒラを引き止めた。


「ゴホッ、ゴホッ……! けほっ!」


 …早とちりして声を出したせいで、ハーブティーが気管に入った!痛い!


 胸を押さえながらむせ返る俺を、ヨヒラが呆れたように見つめている。なにも言わず、ただ、無言で。


 せめて、何か言ってくれよ!



 さて、と。ようやく落ち着いたので、仕切り直しだ。


 さっき、なぜ俺は思わずヨヒラを引き止めてしまったのか――少しだけ、自分の気持を探ってみる。あんなふうに、反射的に強く反応してしまった理由。


 …たぶん、それは。


 ヨヒラのさっきの言葉から、「過酷な戦いの場へと行ってしまう人特有の匂い」を強く感じたから、かな。


 一応は俺、闘技場の戦士だったからな。そういう匂いには敏感なんだよね。


 あの時のヨヒラには、どうしようもなく遠くへ行ってしまいそうな雰囲気が、確かにあった。


 だから、引き止めずにはいられなかったんだ。


「もしかしてだけど…この惑星から離れる理由は、仕事関係?それに、あんまり気が進まない(たぐい)の」


「…はい。ご明察です」


 俺が仕事関係と考えた理由は、最近、ヨヒラがかなり忙しそうにしていたことに理由がある。


 何度聞いても「仕事」としか言わず、それ以上語ろうとしなかったし、どこかそれ以上は聞かないでくれ、という空気もあった。


 だから俺も、それ以上は踏み込めなかった。


 そんなときのヨヒラは、今日ほどじゃないにせよ、確かに「戦いに向かう人特有の匂い」をまとっていた。


 だからこそ俺は、今回も同じように仕事の延長なのだろうと、自然にそう思ってしまったのだ。


「やっぱり、そうなんだ」


 俺は軽く息をついて、目を伏せた。


 この場に沈黙が流れる。


 こんな風にヨヒラは、あまり多くを語らない。


 ただそれは、意地悪などではなく、俺たちに手伝えることが何もないからだ。


 話してくれないのは、ヨヒラの優しさからきた、ヨヒラなりの気づかい。そう、頭ではちゃんと分かっている。


 ただ、なんだか俺は…


「寂しい」


 言わずに心にしまい込もうとしていた言葉が、小さく漏れた。


 何も言ってくれないというのは、やっぱり少し寂しい。俺はきっと、たとえ何もできなくても、話を聞き、重荷を一緒に背負うことくらいはしたいと思っていたんだろうな。



「…どうやら、私は少し反省しなければいけないようですね」


 ヨヒラが俺の表情を見て、ポツリと何か呟いた。ただその言葉は、小さすぎて俺の耳には届かなかった。


「コホン。私は三日後には必ず帰ってきます。だから、そう心配しないでください。ただ、面倒事(しごと)を片付けるだけですので」


「…優秀なヨヒラなら大丈夫だと思うけど、絶対帰ってきてね」


「はい。必ず戻ってくると、約束します。なにせ、私は仕事が嫌いなアンドロイドなのですからね」


 ヨヒラが場を明るくするために少しおちゃらけてみるが、それでも俺はなんだか、しんみりしてしまったままだ。


 でも、俺がくよくよしたって、ヨヒラが困るだけだよな。


 俺は気持ちを切り替えるために、意識して明るく、ヨヒラに違う話題を振ってみることにした。


「でも、三日も家を空けるのか。ヨヒラってたくさんペット飼ってるけど、大丈夫そう?」


 ヨヒラは本当に多くの生物を飼っている。


 家には大量の水槽・虫かごなどがあり、湖に生息する綺麗な小魚たちが優雅に泳いでいる。その他にも、巨大な蟻塚、大量のカブトムシ系の甲虫、たくさんの種類のヤモリなどの爬虫類系、珍しいカエルやイモリなどの両生類などを、俺は見せてもらったことがある。


 これだけ見て、俺が見たのは一部らしいので、どれだけ多くの生物を飼っているのかは、想像もつかない。


「はい。虫や魚などの生物は自動的に適した環境になり、餌を投下する仕組みになっていますし、他の中型から大型の生物も、そもそも私が自然と同じ環境で飼うようにしているため、三日くらいならば何も問題はありません」


 うん。なら大丈夫そうだな。


「あ、でも…」


 ふと一瞬、ヨヒラの表情が曇った。なにか気がかりでもあるのだろうか?


 それから語られたヨヒラの(うれ)いは、俺の想像の斜め上のものだった。


次回予告:浮気はいけませんよ!

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