閑話休題!アンドロイドの胸の内
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梅雨が明け、夏の匂いをまとった風が吹く今日このごろ。
こちらではもう夏真っ盛りです。
皆様、御機嫌よう。アンドロイドのヨヒラです。
最近のささやかな楽しみは、昼に空を見上げ、入道雲を眺めることと、夜に昼間よりも涼しくなった、爽やかな風を感じることです。
そんな私は、いつもどおりのスローライフとはいかず、仕事に明け暮れています。
(本当は、もっと自然と戯れたり、人間観察や閣下の観察をしたい!)
心からそう思っているのですが、今はそうする余裕がありません。
それも全て、エイリアンのせいです。
エイリアンがこの星をターゲットにしたことで、私は働かざるを得なくなりました。
最近の私は、人知れずエイリアンの卵を屠ることで忙しかったのです。
あの連中、どれだけ暇なのか…何十、何百という卵をこの惑星へ向けて送り込んできます。
まるで降るように、無慈悲に、しつこく。
隕石のような速度と質量で降下するそれらは、着地と同時に割れ、中から新たな個体が誕生します。
そのたびに、そのエイリアンの卵から孵った個体を、粒子の一粒すら残さずこの世から抹消させるのが私の仕事です。
なるべくならやりたくない、面倒な作業です。
まあ、この惑星に私しかアンドロイドがいないので、やらざるを得ないんですけどね。
少なくないお給料がもらえることだけが、救いですね。
皆様が普通に生きていて、エイリアンという存在を聞いたことはあっても、目にすることはないでしょう。
それは、皆様が平和に暮らしている裏で、アンドロイドが人知れず働いているからなのですよ?
だから、個人的にはもっと人々に感謝してほしいのですが…
私たちアンドロイドの流儀が、「人知れず淡々と働く」ことなので、私だけ自分の仕事を誇示するわけにはいきませんからね。
私もその慣習に習って、心を殺し、黙って卵を屠ることにしています。
それに、私は「人々」に褒められたいのであって、「御主人様たち」に褒められたいわけではないですしね。
御主人様たちには、何も考えず、ただただ平和に過ごしてほしいのです。
それにですねえ…
「あまり慣習から外れすぎた生き方をすると、私の母のように…」
はあ…
おっと、思わずため息をこぼしてしまいました。
身内の恥をあまりさらけ出すものではありませんし、この話はここまでにしましょうか。
さて、気を取り直して、エイリアンという存在について、人間の皆様は詳しく知らないでしょう。
だから、アンドロイドである私が軽く説明してみましょう。
エイリアンとは、高度な【擬態能力を持った害のある生物】で【惑星を食い物にしてしまう生物】です。
行動パターンは単純明快。ですが、厄介でないというわけでは全くありません。
まず、エイリアンの親が、標的にする惑星を見つけます。
その後、ターゲットにした惑星へ向かって、卑怯にも、遥か遠くの宇宙から卵を投下します。
卵は惑星へ到着した衝撃によって割れ、中から幼体が羽化。生まれた瞬間から力のかぎり暴れまわり、あっという間に惑星をボロボロにしてしまいます。
羽化したエイリアンは、放って置くとどんどん成長し、強くなります。ですが、羽化したてなら、大体リミッター解除を使った御主人様くらいの強さしかありません。
推奨される対処法は、細胞の一つ残らず消滅させること。
なぜなら、エイリアンの細胞が少しでも残っていると、どんどん惑星を汚染してしまうからです。
ナノマシンによって卵の飛来を確認したら、即接近し、この世から抹消させる。
最近は、その繰り返しの日々です。
ほんとアイツラは、ゴキブリのように湧いて出ますね…
おっと、ゴキブリに失礼でしたね。私はゴキブリも愛していますから。
何故かあの黒光りする姿を嫌がる人間は多いですが、私からするとよくわからない感情です。ゴキブリ、チャーミングで可愛いではありませんか?
…思考が横にそれてしまいました。失礼。
「ですが、そろそろデータは十分に集まりました。それでは、そろそろ親を討伐しにいきますか」
エイリアンの親には高度な擬態能力があるため、場所を特定するのに大変な労力が必要です。
ですが、アンドロイドからずっと逃げ切るのは不可能。
最近、ようやく親の場所を特定することが出来ました。これで、やっと元から断つことが出来ます。
ただ、エイリアンの親は相当な力を持っています。その力は、並のアンドロイド一体の力と同等にも及ぶと言われるほど。
ですので、安全のため、アンドロイドが最低三体は揃わないと、遠くの宇宙にいる親を倒しにいくことが認められていません。
私を含め後二体、都合をつけなければいけませんね。
その時は長く激しい戦闘になるでしょうが…
ふふふ。久々の本格的な戦闘。ほんの少しだけワクワクしています。
「今までやられっぱなしだったぶん、存分にやり返してあげましょう」
ようやく、私たちの反撃のターンです。
ただ、ですね。一つだけ頭の片隅で、引っかかっていることがあるのです。
「アイツラは本来、SCエネルギーを食べるために惑星に寄生するはず…なぜこんな未開拓な惑星を、ターゲットにしたのでしょうか?」
この惑星は最近では開拓が進んでいるとはいえ、まだまだ開拓不足。
本来エイリアンが狙うのは、もっと十分にSCエネルギーに満ちた惑星なのです。
それなのに、エイリアンの親はこの惑星をターゲットにした。
──何か、別の理由が?
ふと浮かんだそんな思考を、私は頭を振って振り払います。
たとえどんな理由があろうとも、存在がムカつくので、関係なく潰しますしね。
それに、アイツらに思考能力があるとは思えないので、理由などないでしょう
さて、もうエイリアンの話はいいでしょう。あんなのの話ばかりしていたので、少し滅入ってしまいました。
ここからは、もっと楽しいことを話しましょう。
話はガラッと変わりますが、最近はゆっくり時間を取って、この惑星の人たちの観察日記を書く時間がとれていません。
それでも、これは数少ない私の趣味のひとつ。なので、アンドロイドのマルチタスク機能をフル活用し、毎日欠かさず記録を続けています。
最近記録した中では、ウツギ様の「浮気相手になる」発言が、どうしたって印象的ですね。
酔っ払っていても、その言葉からは揺るぎない想いがにじんでいました。
ふふふ、これからが楽しみです。
なんとなくですが、ウツギ様がどうしてそういう思考になったのか、その思考の道筋は予想できます。伊達に毎日観察日記を書いていないですからね。
きっかけは、【自分探しの氷上】でしばらく過ごしてからでしょう。
ウツギ様は大収穫祭の際、一人時間があまったため、そこで過ごしていましたからね。
あの場所は、自分を見つめ直す場所として、とても適しています。そこで色々考えた結果、浮気相手になるという結論が出たのでしょう。
これも、私の予想ですが、おそらくウツギ様は、
好きだけど恋人になるほどではない→でも性行為はしたい→なら、浮気相手ならいけるのでは?それに、ヒノキも関係性を作るの好きっぽいし…→この考え、めちゃくちゃいいかもしれない!
こんな思考の流れで結論を出したのだと思います。
私がそう予想した大きな理由は、最近のウツギ様が御主人様をからかうのが、とても楽しそうに見えたからです。
最近のウツギ様は、女性としての自信を取り戻し、服を着崩して露出を増やし、御主人様にセクシーさを見せつけていました。
そんなウツギ様は、今まで一番生き生きとしていたように思います。
「これからはウツギ様の誘惑がもっと激しくなり、御主人様は大変な目にあうのでしょうね…ふふっ」
正直に言いますと、ウツギ様が御主人様の恋人として立候補するには、現状では少し難易度が高そうと予想していました。
ですが、浮気相手という関係なら、どうでしょうか?
明らかに御主人様は、ウツギ様を性的に見ています。
怖い恋人二人が近くでガッチリガードしているとはいえ、御主人様はウツギ様からの猛攻から、逃れられるのでしょうか?
くふ、くふふふふ。
おっと、失礼。思わず笑みが溢れてしまいました。
ふふふ、これからの展開が楽しみでなりません。
そして、そんなこの出来事の中心、当の御主人様について。
ナノマシンを使い、現在の行動は全て観察しているのですが…
ホントにあなたは、のんきに何をしているのですか?
なぜ配信外で、大きくてムキムキのゴリラと、とても和やかな食事回をしているのでしょうか?
本当に意味がわかりません。
虹猿と仲良くなったり、ゴリラと食事をともにしたり…
類人猿と相性がいいのでしょうか?
行動が読めないところが、御主人様の面白いところとはいえ…流石に読めなさすぎますね。
「…おっと、また宇宙から卵が飛来してきたようですね、それでは、ゴミカスを処理してきます」
おっと、脳内で思っていた蔑称を、つい表で口に出してしまいました。失礼いたしました。
では、皆様。御機嫌よう。
次回予告:セリにしかできないこと




