爆弾発言!3章最終話!
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遊びすぎた俺は、視聴者と共に急いでカマクラホテルに戻り、なんとかダンスイベントに間に合わせた。
「遅いわよ!」
「ごめんごめん!」
俺はトリカから叱責を受けたので、手を合わせて軽く謝る。
「…じゃ、ようやくヒノキも来たことだし──早速、ダンスイベントを始めるわ!」
トリカの宣言とともに、キャンプファイアーの炎がボッと大きく燃えあがる。
同時に、歓声が湧き上がった。
しばらくすると炎が安定して、ゆらゆらとオレンジの大きな炎が揺らめく。
ゆらゆら。ゆらゆら。
少しの間、自然と俺はこの大きな炎に見入っていた。
沸き起こったファンたちの歓声が一度収まると、トリカがキャンプファイヤーのルールを説明し始めた。
「ルールは簡単!その場のノリに合わせて踊るだけよ!各々、全力で楽しみなさい!」
うむ。分かりやすくてよろしい!
ダンスといっても簡単なもので、トリカの演奏する音楽に合わせ、ペアで軽いスキンシップを交えたダンスをするだけだ。
チップ経由で、どうやって踊ればいいか、どう動けばいいかをリアルタイムで伝えているので、何をすれば良いのか迷うことはない。
火を囲みながら踊るだけというシンプルな娯楽でも、本気でやるとかなり楽しいものだ。
早速トリカが空高くへ飛んでいき、ピアノを演奏し始めた。
会場に宇宙で一番有名なフォークダンス曲が響く。
さあ、皆で踊って楽しもう!
そして、俺も仕事を果たさないとな。
俺は扇動役としてこのダンスイベントに抜擢されている。
その扇動役というのは、
「お前ら!どんどんペアを作れ!一節踊ったら他の人と交代!ほら!恥ずかしがるな!もっとはっちゃけろ!あ、でも、はっちゃけすぎて脱ぐのは禁止な!」
こんなふうに、空中からどんどん口出しする役目だ。
俺の仕事は、皆をとにかく楽しませること。そのためなら何でもして良いと伝えられている。
コイツらは案外ノリがいいので、どんどん俺の扇動に乗ってくれる。
でも、まだ足りない。もっと、もっと盛り上がれ!
「ほら?お前ら、そんなもんか?もっと楽しめ!騒げ!俺が仕事をする必要がなくなるくらい盛り上げろ!扇動の必要がなくなったら、俺も参加するからな!というか、俺も参加させろ!俺だってセリやトリカとダンスしたいんだからな!」
俺がそう伝えると、会場から温かな笑いが溢れた。
その後も、突然ファンたちの中に乱入したり、ペットたちを投入して、この場をめちゃくちゃにしたりして、俺はこの場を精一杯盛り上げた。
トリカのいたずら心で、曲のスピードが突然めちゃくちゃ速くなったこともあれば、逆にとても遅く演奏されて、ダンスが大きく変化する場面もあった。
この場はハチャメチャになったが、それでもみんな、笑顔だった。
大盛り上がりの末、このダンスイベントは終了!
「さあ、後は酒を飲んで騒ぐだけよ!酒場でアンケートを提出してくれた人には、ヒノキが作った足踏みワインが試飲できるからね!」
ドドドドドッ……
トリカのその言葉を聞くと、ファンの群れが我先にと、一直線で酒場へと走っていった。
急がなくても、トリカなら約束を反故にしたりしないぞ?先着順とかでもないんだけどなあ…
ふぅ…でも、やっとこれで少しゆっくりできるな。
今までの大収穫祭は、来てくれるファンのためのものだった。
だが、ここからは俺たちが楽しむ番だ。
今日は俺もいっぱい酒を飲んで、みんなと大騒ぎして、騒ぎまくるぞ!
あ、でも、一応チップに頼んで、アルコールを自動的に分解する設定にはするけどな。
俺は失敗から学ぶ男。以前のように、酒での失敗はもうしないのだ。
「宴の前に、今から俺とツーショットで写真を撮る時間にしようと思ってたんだが、みんな行っちゃったな…」
俺は視聴者に向けて、ぼそっとそう呟いた。
>あっ
>そんなこと言うと…
>ほら?聞こえてこないか?猛獣たちの足音が…
ドドドドドッ!
聞こえてきたのは、さっき走っていったファンの集団たちの足音。
さっきの集団の半分くらいが、Uターンして戻ってきたのだ。
「あのー?写真良いですか?」
「私も写真!」
「ワイも!」
どうやら、現地にいても、コイツらはしっかり俺の配信を確認していたようだ。
視聴者によると、俺がサプライズでラフティング場へと遊びに行ったことも、現地にいるのに配信を確認する一端となったらしい。
真っ先にワインを試飲するか、俺とツーショットを撮るか。
ここに来た人は、悩んだ末、ツーショットを選んだようだ。
俺の不用意な発言によって、この場に無用な混乱を招いてしまった。
やっちゃったなあ…
「…仕方ない!早いもの勝ちな!さっさと終わらせるぞ!」
俺が酒場で楽しめるのは、もうちょっと後になりそうだ。
◆
爆速でファンと写真を撮り終え、俺は酒場へ向かう。
酒場の雰囲気をみるに、もう出来上がっている人も結構いるな。
流れるようにツーショットを撮ったとはいえ、一時間くらいはかかったからなあ…
「あっ、やっと来た!もう、遅いよ〜。こっちこっち!」
セリがほんのりと頬を赤らめたまま、誰よりも早く俺を見つけ、手招いてきた。
あの様子だと、おそらくセリはほろ酔いだな。
そんな風に思いながら、誘われるままに俺は席に座る。
この席の周りには、この惑星の皆と、ペットたちが勢揃いだ。
「先にお酒はいただいてるよ~」
セリが俺に、今飲んでいる酒の瓶をゆらゆらと揺らし、見せつけてくる。
「おっ!これがウツギが作った酒か!評判はどんな感じ?」
この酒場の酒は、この惑星で採れた果物や作物を原料に作った酒しか置いていない。
そんな地元産にこだわった酒を、俺たちは「辺境の全力酒」と名付けた。
この辺境の全力というのはシリーズ化予定で、今後何か観光客向けに売るときは、全てにこの文言を付ける予定らしい。
「ウチが作ったんだから~、ヒック!良いに決まってるでしょ?」
りんごのように真っ赤な顔のウツギが、ふらふらしながら答える。
「え?なんでウツギだけこんなに出来上がっちゃってるの?」
疑問に思った俺がそう聞くと、代表してヨヒラが俺の問いに答えてくれた。
「ウツギ様はここにきた千人のファンたちに、『もっと飲め』と煽られまくり、そのたびに律儀に酒を飲んでいらしていたのです。まあ、ある種ウツギ様なりのファンサービスですね」
なるほど…
愛されているのか、いじられているのか…
「そうだ!あにゃたがきた所で、ヒック!あにゃたに言いたいことがあるにょよ!聞きにゃさい!」
「えー…酔っぱらいの相手、面倒なんだけど…」
「酔っ払ってないわよ!ヒック!」
助けを求めるように周囲をみるが、みんな俺に目を合わせてくれない。
だれも俺を助ける気はなさそうだ。
ま、この手の相手って、面倒だもんな。
「うーん…ウツギにはちょっと休んでもらうか。俺の宇宙船に連れていって、休ませてくるわ」
「さっさと戻ってきてね」
「了解」
ということで、来たばかりだが、すぐに離脱することに。
俺はウツギを背負い、店を出ようとする。
「やだ~。うちはまだ飲みゅの!飲み足りない!じぇんじぇん酔っ払ってない!やだやだやだ~」
駄々っ子のように俺の背中で暴れるウツギ。
「あ、そうだ!ヒック!うち、あにゃたに宣言したいことがあったんだ!自分探しの氷上へいってから、ヒック!やっと心が決みゃったのよ」
そう言うと、ウツギは俺の背中からふっと姿を消し、次の瞬間空中に現れた。
うげ、ウツギってテレポートつかえるもんな。捕まえるの面倒だな。
そんなウツギは、空中から俺に指を指し、大きな声で宣言した。
「うち、ヒック!これから、あなたの”浮気相手”になることを目指すから!覚悟しておいてね!」
「は?」
思わず、間抜けな声が漏れた。
──衝撃の一言。
酔った勢いで発言したのは間違いない。
ただ、その言葉には妙に本気っぽいニュアンスがあった。
宴会場の空気が、一瞬ピタリと静まり返る。
だが、少しすると、
「「「いいぞー!」」」
「「「お前なんかがそんな良い立場になれるわけないだろ!」」」
「「「なんか面白そうだから私は応援するぞ!」」」
「「「浮気相手wwwなんでそうなったwww」」」
このような、大量のやじが飛んできた。
みんな、酔っ払っているからな。他人事かと思って、好きに騒いでいるのだろう。
で、だ。そんな衝撃の宣言をしたウツギはというと、
「ありゃ?ヒック!むにゅ…えっと…応援ありがとう!あ、もう無理…」
そういい残すと、電池が切れたように力が抜け、そのまま空中から落下した。
危ない!
なんとかギリギリでキャッチする俺。
図らずも、お姫さまだっこすることになってしまった。
「「「ヒューヒュー!」」」
途端に飛んでくる野次。
うるせえな!
仕方ないだろ!危なかったんだから!
というかウツギ、色々説明してく……寝てるし!
「ちょっと!?ウツギさーん?一人満足そうな顔して寝ないで!色々どういうこと!?浮気相手って何?ねえ、起きてよ!ねえ!?」
俺はウツギの肩を揺すって起こそうとするが、全く起きる気配がない。
なあ?頼むから説明してくれ!浮気相手を目指すってなに!?
ふと、さっきまでいた席から鋭い視線を感じ、振り返る。
そこから、俺の恋人であるセリとトリカが、厳しい目で俺を見ていた。
その目は、こう語っている。
「浮気なんてしたら、どうなるか分かってるの?」
……俺の背中に冷たい汗が流れる。
もちろん!浮気なんてしません!
たとえウツギが本気で言っていたとしても、誘惑になんて負けない!
俺を信じてくれ!
そういうメッセージを伝えるように、俺も目線で返事をしてみた。
だが、全く俺のことを信用している様子はない。
…まあ、わかるよ。たしかに俺はちょろいもんな。
特に二人は俺のそういうところを山ほど見てきたから、信用できないのも仕方ないか。
でも、今回は絶対大丈夫!なにせ、今は恋人がいるんだからな!
あ、あと!そこで机をバンバン叩いて爆笑しているヨヒラ!
いつも言っているが、人の修羅場を笑うな!
あーもう、めちゃくちゃだよ!
俺はウツギを背負い直し、大量の野次と笑い声に背中を押されながら、この酒場を後にする。
宇宙船に運ぶ道中。
強烈な風が吹き、俺たちの髪をめちゃくちゃにした。
「くすぐったいな…」
ウツギの髪が、俺の顔にふわっと触れる。
同時に、酒の匂いと、ウツギのココナッツのような甘い体臭が、俺の鼻腔をくすぐった。
ドキンッ……じゃねえよ、俺の心臓。バカ。
──なんだか、これからの生活が、もっと波乱万丈になる予感がした。
三章終了
次回予告:閑話休題を四話はさみ、四章の始まり。四章:夏休み編




