急流滑降!俺も遊ぶぞ!
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「さて、炊き出しの後の俺の本来の予定は、休憩時間なんだが…」
俺は普段から体を鍛えているので、この程度の疲労感ならまだまだ余裕だ。
なんなら今は、元気に動き回りたい気分だ。
>ん?
>その言い方だと、これから休憩する気はないの?
>あ、今私の元にヒノキの作った料理が届いた!抽選に当たったぞおおお!!!
>私も!きたきたきたきたあ!
どうやら俺が余分に作った料理が、今視聴者に届いたようだ。
この千人への炊き出しが終わった後、俺が作った料理は一万人分の残りの九千人分が視聴者にランダムに配られる事になっている。
ちなみにその九千人分の配膳は、ヨヒラの高速配膳技術によって数分で終わった。
…それにしても、あまりにも効率的で、美しく、素早い配膳だったなあ。
「届いた人はおめでとう!当たった人は運がいいな!」
>くそおおお!!外れた!!!
>神は…いない…
>……おかしいな、涙って……勝手に出るんだね……
>オブラートに包んで言うと、当たった人◯ね
>あ……ああ、あああああ
>はあーあ…宇宙崩壊しねぇかなあ…
>当たったあああ!!!ハズレた人ざまあ!日頃の行いが悪いんじゃあないですかあ???
九千人分も配ったのだが、ハズレた人たちのコメントが目立つ。
俺の料理なんてそんなに需要ないだろと思っていたが、視聴者の言う通り、全く持って量が足りなかったらしい。
…ま、ドンマイ!ということで。
「で、だよ。本来ならこの炊き出しの後、休憩してから、あまった時間で視聴者を遠くから眺めて楽しみつつ、数時間後のダンスイベントに備えるつもりだったんだが」
>炊き出しが終わったら、祭りも終わりじゃないのか
>ハズレた時点でもう私の中では祭りは終わってるよ
>そういえば、祭りはまだ序盤だったな
ちょくちょく勘違いしている人もいるようだが、この大収穫祭のメインイベントである「炊き出し」が終わっただけで、大収穫祭自体は終わっていない。
「そもそも収穫祭っていうのは、この惑星のみんなで、食物や作物に感謝をするっていう祭りだぞ?まあ、正直これはほとんど建前だけどな」
>現代の祭りってそういう堅苦しいのないしな
>感謝!とにかく感謝!その後祈祷!みたいな原始的な祭りじゃなくてよかったよ
>祭りも娯楽だからな
そう。現代の祭りというのは、堅苦しい雰囲気とは無縁なのだ。
今や祭りとは、完全に娯楽に振り切った、自由でにぎやかなものとなっている。
だから、祭りの日は、「みんなで大騒ぎする日」という意味合いが強いのだ。
そんな気楽な祭りの中で、唯一ルールがあるとすれば、ただ一つ。
それは、「楽しむこと」
適当に「いやぁ…めでたい!」とか言いながら、酒を片手にたくさんの人と交流し、楽しく大騒ぎする。
これが、この宇宙でのある意味正しい祭りの日の過ごし方なのだ。
「…そういえば、この惑星に住むみんなは、今なにをやってるんだっけか?」
>セリさんとトリカ様はペット達の触れ合い回を今やってるはず
>ヨヒラ様は裏方って言ってなかったっけ?
>ウツギは特にやることがなくて、自分だけ観光を楽しんでいるらしいぞwww
ああ、そうだったそうだった。
…あれ?
ウツギって、今の時間は裏方の手伝いをしているんじゃなかったっけ?
あれかな?ヨヒラがあまりに優秀すぎて、仕事がなくなったのかな?
なんか、視聴者のコメント的に、そうっぽいな。
いいなあ!羨ましい!俺も観光したい!
…ん?よく考えれば、俺の現状って、今のウツギと同じようなものだよな?
じゃあ、俺もこの時間に観光したって良いんじゃないか?
うーん…
「よし!俺も観光しに行こう!」
ほら?祭りは楽しむものだろ?だから、主催者の一人だろうが、ちょっとくらい遊んでも良いよね?
>唐突で草
>運営が遊ぶなwww
>ま、まあ。休憩時間になにしようがいいっちゃあいいのか?
そう!別に休憩時間なんだから何してもいいんだよ!
次の予定までに帰ってきてさえいれば、何も問題はないはずだ!
さて、そうと決まれば、さっそくどこかへ向かおう。
どこへ行こうかな〜。
時間的に、行けても一か所くらいが関の山だろう。
それなら、一番楽しそうな所に行きたいな。
ラフティング、白と黒の苔の森、スキー・スノボ場、スケートリング、動物ウォッチング、昆虫ウォッチング、未開の地の探検などなど、色々トリカは用意してくれている。
その中で選ぶなら…
「やっぱり一つだけ選ぶなら、ラフティングかな!こういうときは王道に限る!」
なにせ、トリカが実際に王道のアクティビティって言っていたからな。
ということで、大急ぎでラフティングができる川まで向かおう。
びゅーん!
多目的シューズを使うことで、あっという間に到着。
空の旅は、なかなか快適で気持ちよかった。
「おお!意外と人がいるな!」
>千人の内の数十人がここにいるね
>みんなペットのふれあい体験に行っていると思ってたわ
>ヒノキを見て途端にざわざわしだして草
>まさかヒノキがここに来るとはおもわないよなwww
周囲のざわめきには目もくれず、俺はラフティングの列へ加わった。
そんなに人もいないし、列の流れもスムーズ。すぐに順番は回ってきた。
ボートは六人乗り。順番的に、俺は一番うしろの右側席に座ることになった。
「あ、隣座るな?よろしくー」
「よよよ、よろしくおねがいします!!」
>ヒノキの隣のラッキーガールは、ケモ耳ギャルか
>結構隣の距離が近いから、めちゃくちゃ緊張してるね
>この子、おしゃれだよね
>一見モテなさそうには見えないが…ここに来ているってことはやべえやつなんだろうな
>あっ、友達だ!このコ、特異体質なんだよね。でも、性格は優しい子だよ!
俺の隣に座ったのは、瞳に小さな星がきらめいているメイクをしており、顔におしゃれなペイントをした、少し派手な女性。
特異体質というのは、この子の体臭のことだ。
この子からは、恐ろしい程の濃い獣臭がするのだ。
普通の男なら、絶対に近づかないだろう。
だって、この匂いを嗅ぐだけで、俺ですら「あ、俺、今から性的に捕食される!逃げなきゃ!」と、本能が警鐘を鳴らしたくらいだもん。
ま、その後すぐ、「でも、この子すごい可愛いな。申し訳なさそうな表情してるのもいいね。もう匂いとかどうでもいいわ」という思考に秒で切り替わったがな。
そして、一度好意的な目で見始めると、あの強烈な体臭も、ただの個性としか感じなくなってしまった。
だから、俺にとってこの子は、モテないやべえやつではなく、何の問題もない普通の女性なのだ。
なんなら、可愛くて優しい子のとなりに座れて、ラッキーとさえ思っている。
「ねえ?ちょっとだけお願いがあるんだけどさあ。この待ち時間の間に、俺にも顔になにかペイントしてくれない?その顔のペイントのメイクがすごい祭りっぽくて、羨ましいんだ!お願い!」
俺がそう伝えると、その隣の彼女は、まるで「ありえないことを頼まれた」かのような表情をした。
彼女はしばらく頬をさすったり、ボーッとしたりしたのち、俺に返事をしていないことに気が付き、慌てて返事をした。
「ううぇえ!あわわ。も、もちろん、い、良いですよ!!!でも、失敗したらごめんなさい!」
「おう!俺にはメイクのことなんてさっぱりだから、全て任せた!」
その後、この少しの待ち時間の間に、彼女は俺の顔にメイクをした。
彼女のメイクする指からドキドキ感染して、俺も少しだけドキドキしたのは内緒だ。
>なあ?男にメイクするの、普通に羨ましいんだが
>なんか、目をつぶって待っている男って、全てを任されているみたいで、エロいよな
>私がこの状況なら、めちゃくちゃに口づけしちゃうwww
>ケモミミギャルもテンパりながらも楽しそう。メイク、好きなんだろうな
>というか、なに描いているんだよwwwテンパりすぎだろwww
「か、完成しました!」
これは…
あまり待ち時間がなかったから、こうなったのか?
何故か俺の頬に、リアルなバナナの絵と、違う側の頬にリアルないちじくの絵が描かれていた。
…うん。なんか意味深な気がするが…ま、気にし過ぎか。
それに、顔がちょっと華やかになって、気分がいいしな。細かいことは気にしないでおこう。ありがとう!ケモ耳ギャル!
さて、書き終わった所で、
「いざ、ラフティングだ!」
──このラフティングが楽しすぎて、この後俺は何度もここで遊び倒した。
景色も綺麗だし、スリルもあるし、同乗した人と一体感も生まれるし、最高だ!
ざっくりどんな流れだったかを説明すると、序盤は先頭に表示されたトリカのホログラムの指示に従って、緩やかな流れを景色を見ながらパドルを漕ぐ。
中盤では高低差のある急流を楽しむ。
終盤はラストスパートとばかりに、トリカの熱い歌が流れ、猛スピードで川を駆け下りる。って感じだ。
あー、いっぱい声出したわ。楽しかったぜ!
次回予告:3章最終話。




