大収穫祭!その2!思わぬ人物の登場!
読んでいて少しでも感情が動いたら、評価・リアクション・ブックマークをお願いします。
ここに集まった非モテ女性千人について、俺は炊き出しをしながら思いを巡らせてみることにした。
(視聴者も、さっきの俺もコイツらをやべえやつだと一度は思ったが、冷静に考えてみると、正直男を前にした女性なんて大体こんな感じなんだよなあ…)
俺から言わせてもらえば、俺に対する反応に関しては、他の一般人とそんなに差は感じない。
だから、視聴者どももこの千人をやべえやつ下に見て、笑う資格はないと思うのだが…
ま、これは言わぬが花か。
要するに俺としては、この千人をやべえやつという言葉で一括りにするのは、少しだけ不適切な気がするってことを言いたかったんだ。
俺には、この千人に見える共通点が、二つある。
一つはやべえやつだということ。これは、さっき言った通り。
そしてもう一つ。これはきっと、俺だからこそ感じたものだろう。
二つ目は「女性としての本能が強すぎる」というものだ。
「女」として純粋に、あまりに強く「男」を求めてしまい、それが悪い方向に作用してしまっている。
俺はそのように感じたのだ。
だからだろうか?
ここには、あまりに濃い「メス臭」のようなものが、この場を満たしてしまっているのだ。
そのメス臭が、もはや恐怖すら感じてもおかしくないほどの強烈な圧、オーラとなって、男に伝わってしまうのだろうな。
ある種、男にとってここは地獄のようなものなのだろう。
ただ、俺に関してはというと…
「よ、よーし。どんどん配っていくから、最初の人来てくれ」
今の現状に、少しドギマギしていた。
俺にはそんな本能に直接訴えかけるような圧、オーラなどが、とてもまっすぐで、純粋な「性的アピール」に感じてしまうのだ。
女性の求めるような目線や行動、体臭などが、俺にはただの「色気」として、ありありと伝わってくる。
あーあ。だから俺、ちょろいっていわれるんだろうな。
だから…まあ、正直いうとな。
コイツらは俺にとって、というか、俺にだけは、やたら魅力的に見えてしまうということだ!
うーん…ここ、ただの天国ですけど?って感じだな。
コイツらにやべえやつという一面がなく、俺に恋人がいなければ、俺は大はしゃぎしていただろう。
それに、コイツらが男に慣れておらず、奇行を繰り返してしまうところも、俺が冷静になれた要因の一つだ。
例えば、
「どうぞー」
「ぁあっ、あ、ぅ……つdjmw」
白目をむいてまともに喋れないやつや、
「どうぞー」
「あばばばばばばばば」
俺が料理を渡した瞬間、震度八の地震が起こったのかと思うくらい震えだすやつ、
「どうぞー」
「ありがごふっ!!」
何故か吐血するやつ、
「どうそー」
「真空処理、オーケー!ネクスト!瞬間冷却、オーケー!ネクスト!……グフフ、これであなたの肉棒のクローンが…」
俺の料理からなんとかして俺の細胞を抽出し、大人のおもちゃを作ろうとするやつなどなど、どいつもこいつもこじらせまくっている。
流石は選ばれし精鋭たち。ブレない。
いつだって、どんなときも、いろいろな角度から、男をしっかりドン引きさせてくる。
ある意味、感心するわ。
「よーし!一旦休憩!五分後に再開するぞ!……ふぅ。それにしてもこいつら、奇行さえ目立たなかったらモテそうなのになぁ…もったいない」
>モテそう!???コイツラが????
>はあああああああ!!???何言ってんの!?
>この妖怪大行列を…モテそう?
>同性から見ても、コイツラにモテる要素なんて一切見当たりませんがwww
>こんな奴ら相手でも鼻の下を伸ばしているお前に脱帽したわ…
>奇行が目立つのは、コイツらが異性として見られ慣れていないからでもあるんだぞ?
>おまえ、ホント見境ないよなあ…
確かにあまりに奇抜な見た目の女も多いし、動きなんて明らかに挙動不審な女なども多い。
でも、部分部分を見ればけっこう可愛いところや、セクシーなところなど、魅力的なところはいくらでもあるけどなあ…
「え?というかさ?俺がコイツらを異性として見てるってバレてるの?頑張って隠してたつもりなんだが…」
>最初っからバレバレだぞ
>女って誰でもそういう視線には敏感だから
>お前の視線がどこに向くかによって、自分の魅力を確認してる女も多いからな
>以前ヒノキの故郷の惑星の恋愛指南書に、【ヒノキの視線で自分の魅力的なパーツを認識し、それを押し出していこう!】って書かれてたことがあるくらいだからな
何だそれ!?
あっ!もしかして!
今まで、母国でやたら通行人などから誘惑される機会が多かったのは、その雑誌のせいか!?
俺を実験ねずみみたいに使うの、やめてくれません!?
…うん。この惑星へ逃げてきて正解だったな。ナイス判断だ、過去の俺。
「…衝撃の事実を知った所で、切り替えて再開するぞ!」
その後も、料理を受け取ると膝から崩れ落ち気絶する(料理だけは決して落とさなかった)女性や、目の前で見事に嘔吐する女性、ドキドキしすぎて心拍数が毎秒千回に達し、全身が真っ赤になった女性や、何故か邪神のような見た目に改造し、見るだけで冒涜的な恐怖を感じる女性など、様々な人に俺は料理を配っていった。
大量の女性の中から集められた精鋭だけあって、個性豊かでバリエーションの豊富な女性ばかりだ。
圧倒的個性を持つ人ばかりで、無個性に感じる人は一人もいない。
中には「自分実は〇〇です」と教えてくれる変装した有名人なんかも複数人混じっていて、こちらがびっくりすることもあったくらいだ。
そのたびにコメントが盛り上がるし、有名人が来ていると噂になり、配信にも人がたくさん来るので、こっちにもメリットが多い。
娯楽にあふれた現代の宇宙。有名になるには、多少ピーキーな方が目に留まりやすい。個性が丸い人より、どこか一つに尖っている人の方が有名になりやすいのだ。
そんな個性的な人には、非モテの人が多いのかもしれないな。
さて、時間が経つのはあっという間で、気づけばもう最後の一人を残すのみとなった。
最後の一人は全身真っ黒な服を着て、黒い帽子を深く被ったスラッとした背の高い女性だ。
帽子から少し覗く大きな目が、どこかギョロッと不気味に動いている。
目力が今まで見た誰よりも強く、目が合うだけで圧倒されてしまうような威圧感がある。
この目の感じ、どこかで見たような?
でも、格好のせいか、よく顔が見えない。これじゃあ、知っている人でも誰だかはわかりようがないな。
「最後の一人!どうぞー」
俺が料理を渡し、小指の先だけ女性の手に触れてしまった瞬間。
「ファアアアアアアア!!!!!」
あまりにデカい声量で叫び出したその女性。
ピリピリと大地が少し揺れ、ガタガタと空気が震え、ぐにょんと宇宙が歪む。
ただ、そのデカすぎる叫び声には、どこか心地よい揺れがあるような。
とっさに出た叫び声なはずなのだが、ビブラートに似た響きが感じられたのだ。
これは…歌を嗜んでいる人か?
もの凄い声量、威圧感のある目、非モテ…
あっ!分かった!この人は…
「…す、すみません!つい叫んで…」
足早に去ろうとするその女性。
「ちょっと待って!」
俺はその人の手を掴み、無理やり足を止めてもらう。
「…ひゃっ」と、今度は可愛い声を出す女性。
その隙に、バレないようにしれっと、俺の連絡先をチップ経由で渡す。
「…な、なに?」
低く感情の分かりづらい、こもったような声を出す女性。
威圧感のある目もあわせ、怒っているように感じ、ビビっている視聴者も多い。
ただ、この人に限っては、緊張して威圧感があるだけだろう。
だって、そういう人だってことを、俺はよく知っているからな。
「いえ!せっかくの最後の一人だったので、視聴者に軽く挨拶してもらおうと思いまして!」
「…し、失礼しますね!」
俺の提案を無視して、足早に去っていく女性。
言葉だけは強いが、目がぐるぐるしていたのを俺は見逃さなかった。
あの人もギリギリだったのだろうなあ…
さっきのやり取りについて。
俺は別に視聴者に挨拶なんてしてほしいわけではなかった。
俺はただ、不自然にならないように、この人に連絡先を渡したかっただけなのだから。
そして、俺はどうしてもこう伝えたかったのだ。
【あなたの娘さんとお付き合いさせてもらっています】
と。
そう。あの人は、トリカの母親なのだ。
多少変装していたが、叫び声を聞いてすぐに分かってしまった。
まさか、トリカの母親が選抜に抜けて、やって来るとは思いもしなかったな…
変装していたのはきっと、選抜に抜けたというある種情けないことを、娘にバレたくなかったのだろう。
「よし!千人に手渡しするのは終了!後は、余っている分をランダムに配るだけだ!炊き出しが欲しい視聴者どもは、必死で祈ってくれな!」
──その後は、俺は大量の視聴者に遠隔で料理を配りまくった。
俺が用意した分を全て配り終えた後、この炊き出しの終了を告げるとともに、トリカがやってきた。
「さあ、この炊き出しは終了するけど、まだこの大収穫祭は終わらないわ!今日ここにいる千人には特別に、ヒノキの足踏みワインを無料で試飲する権利を与えるわ!」
「うおおおおおお!!!」
瞬間、巨大な波のような喝采が巻き起こる。
「ただし!この観光地で遊んで、酒場にアンケートを提出してくれた人だけにしかその権利は上げないから、どんどん遊んでアンケートに答えてね!」
「うおおおお!!!!」
トリカによるワインの振る舞いのサプライズもあり、大盛況のまま炊き出しは終わったのだった。
次回予告:バナナといちじく




