大収穫祭!うるさい視聴者たち!
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さあ、今日はついに大収穫祭当日だ。
俺は今拠点の惑星裏側のカマクラホテルの外──キャンプファイアー場にいる。
もういつでも料理を振る舞える状態だ。
この場所は、拠点の真裏にあるので、拠点付近と時差が十二時間ほどある
拠点から宇宙船に乗り、お昼前に出発したので、現在ここは深夜で、真っ暗だ。
とはいえ、今このカマクラホテル付近だけは、別世界のように明るい。雰囲気も、光もだ。
ここは今、おめでたい音楽が常に流れ、温かみのある色のライトが多く配置されている。
さらに、ヨヒラに提供された大量の色鮮やかな花が周囲を彩り、賑やかな雰囲気をより加速させている。
そしてなにより、今日はこの惑星に千人の観光客がいる!
いやぁ…基本的に静かなこの惑星が、ここまで賑やかになるなんて、感慨深いな…
とはいえ、ここまで騒がしいのはこの場所、カマクラホテル周辺だけだ。
静かなのもこの惑星の良いところなので、ホテルの喧騒や音、光が周囲に漏れないように作ったからな。
もう全員が集まっているので、俺は開会式代わりの挨拶をぱぱっと終わらせてしまい、さっさと指定の場所に移動した。
もうすぐ、炊き出しの時間が始まる。
さて、今日の大体の流れを今一度おさらいしておこう。
まず、メインイベントである俺の炊き出しの手渡し。
その次に、ペットたちとのふれあい体験タイムを一時間ほど。
その後は、ファンやこの惑星の住人たちと火を囲みながら、自由に歌やダンスを楽しむ時間があり、最後は、軽い閉会式で締め、という流れだ。
炊き出しの時間と同時に、配信も開始する予定だ。
事前に今日の配信で、開幕に服を脱いで上半身裸になると宣言していたので、きっと多くの視聴者が見に来ることになるだろう。
それから、選抜で選ばれた千人についても触れておこう。
コイツらには、俺がしっかり電子整理券を配っておいた。
番号順に呼ばれる仕組みで、順番が遅い人は、その間にこの場所を自由に回って観光を楽しめるようにという、俺なりの配慮のつもりだ。
だから、本来なら列に並ぶ必要なんて無い。うん。本来ならね。
俺がこのような前置きをしているということは、そう。
ちょっとした想定外が起こっている、ということだ。
なぜか今俺の目の前に、千人の女性がずらりと列をなしているのだ。
「お前ら!整理券をしっかり配った意味ねーだろ!ここにいても待つだけなんだから、どっか散れ!」
「嫌だ!」「私は全てを見届けるんだ!」「せっかくの男を見る機会をふってまで、観光なんてしねえよ!」「せめて脱ぐシーンはしっかり目に焼き付けなきゃ、女がすたる!」
どうも整理券を配ったのは、余計なお世話だったらしい。
ほんと、配慮のしがいがない奴らだ。
ああ、こんな飢えた視線にさらされた状態で、脱ぎたくねぇな…
せめて、コックさんの格好とかで許してもらえない?
まあ、今更無理だよな。わかってるよそんなこと。
なにせトリカがキャッチフレーズとして押し出しているのは【モテない女のための男の”裸”炊き出し祭り】というもの。
脱がないと、トリカが嘘つきになってしまう。だから、俺はある程度は脱がなければいけないのだ。
さて、ちょっと頭の中で愚痴っていたら、もう時間だ。配信開始ボタンぽちー。
「ういーす。大収穫料理人ムキムキイケメンのヒノキです。今俺は、千人の飢えた獣にターゲットにされています。絶体絶命です。助けてください」
>時間通り配信始めてえらい
>今日も楽しみ
>開幕から目の血走ったやべえ女たちに囲まれてて草なんだがwww
>これが歴戦の非モテ女子の面構えか…
>知り合いいるんだけど…あいつ、そんなにモテなかったのか…
>妖怪大行列かなんかですか?
千人のファンたちは、現在異常なほどハイテンションだ。
きっと祭りの雰囲気に当てられたのだろう。
各々カメラに向かって、喜びを必死にアピールしている。
軽く手をふるくらいなら良いのだが、コイツラはそんな常識的な奴らでは無い。ぱっと目に入った女たちを、順番に紹介していこう。
中指を立てて舌を目一杯出して白目を剥く、なぜか下半身を蜘蛛に改造している女。
おそらく目であろう場所から、血涙を流しながら「ケケケケケ」と叫ぶ、のっぺらぼう女。
目からビームを出してアピールする、全身フルメカ仕様のロボ女。
身体の至る部分から触手が蠢いている、触手系幼女。
他にも、多種多様、十人十色、三者三様の、イカれた奴らが大勢。
一見まともそうな人も、いることにはいるんだよ?
そこのケモミミ女子とか、あっちの甲冑を着た女性騎士のような人とか…普通の人間の見た目の女性とかもちらほら見えるからな。
でも、どいつもこいつも奇行が目立ったり、目に狂気が孕んでいたり、オーラが重苦しかったりで、本当に見た目がまともなだけなんだよね。
蠢く触手、撒き散る謎の体液、飛び交う謎ビーム…
うん。地獄絵図。
そんな奴らが全員、飢えた目で俺を凝視しているのだ。
俺、きれいな体のまま今日を終えられるのかな…心配になってきた。
俺は一度深く深呼吸し、視聴者に向かって語りかける。
「さて、視聴者も状況を理解できた所で、今から俺は脱がなきゃいけないんだよね。……なあ?俺のファンなら、やっぱやーめた!って言って今からこの格好のまま料理を提供しても許してくれる?」
「「「BOOOOO!!!!」」」
途端、とてつもないブーイングが巻き起こる。
>駄目だってさwww
>ブーイングの声で大鍋が揺れてて草
>そりゃ!駄目に決まってんだろ!配信勢も楽しみにしてたんだ!よく言った非モテ共!
>今更脱がないなんて言ったら、殺人が起こってもおかしくないぞ?
さっきから、身の危険を感じるほどの殺気が飛んできているんだが…
お前ら、一応俺のファンだよね?ファンに殺気を飛ばすことなんて、普通ある?
「ふぅ。仕方ないな。駄目みたいだし、しゃあないから脱ぐぞ!」
「「「うおおおおおお!!!」」」
途端に手をひっくり返したように騒ぎだす、千人の精鋭たち。
みんな腹から声を出しているからか、女性の群れのはずなのに、くっそ野太い声だ。
殺気に包まれていた体がふと軽くなり、今度は粘度のある粘っこい視線の束にさらされる。
うーん…今日は、俺が何をしようと、こんな感じか。
こういう時男は、諦めて周りの目なんて気にしないに限る。
なんだか、こういう感覚も久しぶりだ。
最近はメスたちの視線にさらされることなんて、なかったからな。
昔はこういうのがしんどかったから、俺は誰にも言わずにこの惑星に逃げてきたんだよね。
まあでも、配信を始めたからか、この惑星で癒やされたからかはわからないが、以前よりそういう視線が気にならなくなっている気がする。
というより、そんな視線を無視するスルースキルが強化された、というのが正しいのかな?
これが成長なのか退化なのかはわからないが、俺も変化しているということだ。変化を喜ぼう。
ということで、そろそろ脱ぐか。
あんまり大々的にやるのも恥ずかしいので、俺はあえてさらっとこう言った。
「じゃ、脱ぎまーす」
ゴクリ。
唾を飲む音が、実際に俺の耳にまで届いた。
ここで焦らすと暴動が起こる可能性があるので、ぱぱっと衣装チェンジをする。
脳内のチップで今の探検家の衣装から、今日のための衣装に設定で。
すると、俺の衣装があっという間に変化していく。
「「「きゃああああああ!!!!」」」
着替え終わると、千人の女たちから、大量の歓喜の声が返ってきた。
あまりの音圧に、耳がキーンと悲鳴を上げる。
そして、この声がいつになっても鳴り止みそうにない。
仕方がないので、一切合切無視して配信を継続することに。
「ほい。衣装変更完了!健全な配信のために全裸になるわけにはいかないから、下には黒のスパッツを履かせてもらったぞ!」
>ほう…ふんふん…ほうほう…
>ありがとうございます!ありがとうございます!
>男の鎖骨がえっちすぎる件についてwww
>えちちちちちちちちちちちち
>おひょひょひょひょ!保存保存保存保存!
>現地の非モテどもうるせえぞ!一旦酸素吸うのやめろ!
>ヒノキの腹筋は宇宙遺産に登録すべき!
>これからの宇宙は、ヒノキが脱いだ日以前、以後に分けられることになるだろう
>………生きてて………良かった………
あばばばばばば、あん♡、ガンガンガンガン(地面に頭を叩きつける音)生きててよかったあああ、ひゅー…ひゅー(過呼吸)などの反応の声がとめどなく聞こえてきて、鳴り止まない。
なんだか、この場の気温が一気に三度くらい上がった気がするのだが?
あと、大丈夫かお前ら?興奮しすぎて、限界そうなやつばっかだぞ?
やっぱり、脱ぐのはやり過ぎだったんじゃないか?落ち着かせるの、俺は諦めてるからな?
宣言通り、強引に炊き出しを進めさせてもらうぞ!
次回予告:娘さんをください!




