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貞操逆転スペースファンタジースローライフ!?~男女比が1:10の宇宙で男に生まれた俺が、辺境の無人惑星でスローライフする姿を配信する  作者: ながつき おつ
3章 他惑星とのつながり!

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歌姫楽宴!その2!誕生日ライブ!

読んでいて少しでも感情が動いたら、評価・リアクション・ブックマークをお願いします。


 カーン。カーン───


 祝福の鐘がなり始めるとともに、曲が流れ、空間が震えだす。


「胸板にそっと指を沿わせ~♪」


 ジャズ調のリズムに乗せて、トリカの声が甘く、濡れたように空間を満たしていく。


 ゾクリ。


 俺の背中に、冷たい汗がたらりと伝った。


 そのトリカの歌声は、まるで耳元で囁かれているように聞こえ、ひとつひとつの言葉が肌をなぞるかのように感じられた。


 何だ、この妙な感覚は。


 たった一節聞いただけで、俺の心の奥底の本能がくすぐられているような?


 無理やり言葉にするのなら…


「魅力的すぎて、死ぬほど怖い」


 そう口にして初めて、俺は自分の感情に気づいた。


 ポトリ。ポトリ───


 ドレスの裾から、衣装の花が地面に少しずつ落ちていく。


 そのたびに布地が揺れ、トリカの濡れたようなみずみずしい素肌が、少しずつあらわになっていく。


 誘うような視線。指先の動き。甘くて、危険な香り。


 彼女の一つ一つの動作が、まるで、「こっちへおいで。でも、一度捕まえたら、決して逃さないわ」と囁いているかのようだ。


(これは、駄目だ!一度目を外して冷静にならないと、危険だ!)


 俺の中の冷静な部分ではそうわかっているのだが、あまりのトリカの魅力に、どうやってもトリカから目線を外すことが出来ない。


「熱が放たれ、溶け合うように濡れていく~♪」


 そのフレーズに合わせ、トリカは隣にいたロイヤルを優しく抱き寄せる。


 その仕草はまるで、愛する人の髪を撫でているときのように、愛おしげだった。


 手つき、瞳、しぐさ、声のすべてが艶っぽく、俺はより深く魅入られる。


 ドキドキというより、ドキン!!ドキン!!と、深く強く、俺の心臓が脈打っている。


 そして、トリカの色気がむせ返るほど会場を満たしたと感じた瞬間、サビへと突入した!


「アイム・ウィナー!私は絶対的勝者!」


 その力強い歌いだしとともに、ステージから強烈に光が放たれる!


 サビに入るとともに曲調が少しアップテンポになり、歌詞に攻撃性が帯びていった。


「男は今日も、この唇を求める」


 宇宙一楽しそうな表情で、自慢する様に、それでいて、全ての人々を見下すように歌うトリカ。


 女性に対して「私は最高の男を手に入れた。お前たちはどうだ?」と、容赦なく歌で挑発しているのだ。


 まさに──悪女。


「もう、あなたは終わり」

 

 歌詞と態度から醸し出される、圧倒的余裕と深い悪意。


 女に対しては言葉で心をえぐり、男の俺に対しては、たとえ悪い女だと認識されようが関係ないとばかりに、力強い美しさと、大人の魅力でひれ伏させてくる。


 あれだけたくさんあったコメントも、たくさんの歓声もなく、静まり返る会場。


 これは、異様な光景だと言ってしまってもいいだろう。


 トリカは、見事なまでに、この場を歌で支配したのだ。


 ふと、横から奇声が耳に入る。


 ちらりと横を見ると、ウツギとモグちゃんが、歯を食いしばりながら、頭を抱えていた。


 思わず、俺は小さく微笑んでしまった。


 でも、なんだか今この瞬間、少しだけ日常に帰ってこれたように感じた。


 ウツギによって、確かに俺の熱くなった脳が冷えたのだ。


 少し余裕の出た俺は、ウツギから視線を外し、もう片方に視線を移す。


 ヨヒラやセリの方を見ると、二人は普段と変わりない表情で、歌を聞いていた。


 そして、セリと目が合うと、優しく微笑みながら、俺の手を握ってくれた。


 圧倒的安心感が俺を満たす。


 ふっと、身体が軽くなり、呼吸がしやすくなった。


「戻ってこれた…」


 思わず、俺はそう呟いていた。


「あなたのおかげ。私は誰よりも幸せよ」


 曲の最後には指先にキスし、おちゃめにウインクした。


 そして──舞台の音と光がすっと消え、静かにこの曲は幕を下ろした。


 曲が終わろうと、いつものように拍手が巻き起こることがない。


 きっと、女性はトリカの挑発が効きすぎて、声も発せないのだろう。


 それにしても、これだけ大人の女性らしい色気をまといながら歌うトリカは初めて見た。


 いやあ…すごかったなあ…


 曲が終わった今でも、ふわふわと気持ちいい酩酊状態になっている感覚がある。セリに手を握ってもらえなければ、俺は今でもトリカに見惚れていただろうな。


 一曲目が終わり、静まり返っている中、トリカは露出度が多くなった衣装から、普段の紫の花のドレスに一瞬で着替える。


 そしてその後、トリカはファンたちの向けて、


「さあ、立ちすくんでないで、そろそろ立ち直りなさい!わたくしの”格”の高さに打ちのめされる気持ちも分かるけれど、文句の一つも言えないようじゃ、一生負け犬のままよ?ほら?素直な気持ちを思いっきり吐き出して、スッキリしなさい!どんな罵詈雑言だろうが、全て受け止めてあげるわ!」


 激励するかのように、そう言い放った。


 挑発されたと感じた視聴者は、ぞくぞくと正気を取り戻していく。


>おい!この歌よく聞くと、男とのベッドでの情事の歌じゃねえか!

>本物の男で経験済みの女に自慢されて、勝てるわけ無いだろ!胸にグサッと来たわ!

>色っぽいトリカ様も素敵だけど、この歌は私に効きすぎる…

>私でも効果抜群なんだから、トリカ様のお母様にはどれだけ効くことだろうか?

>そういう自慢の方法はいけないと思います!心のえぐり方の角度が深すぎます!


 沢山のブーイングのコメントが流れるが、トリカは余裕の表情だ。


 余裕なのもすごいし、言葉一つで正気に戻してしまうのも、流石といったところだ。


「ふふ、うねるようなブーイングをありがとう。今この反応を聞いて改めて思ったけれど、罵詈雑言を聞くより、わたくしに向かって称賛の嵐が巻き起こるほうが気持ちいいわね。だから!この曲はわたくしの”禁歌”リストの仲間入りね!」


 「禁歌」とは、トリカが発表した歌の中で、もう二度と歌わないと決めた歌のことである。


 トリカには【歌を聞いて、気持ちが暗くなるようなことはあってはいけない】という歌姫としてのポリシーがある。


 だから、その活動方針に合わない曲が出来てしまうと、一度発表した曲だろうが、禁歌となってしまうのだ。


 たしかにとても生々しい歌だったし、笑けてくるくらい自慢する歌だったもんな。今日限りの歌となっても仕方ないか。


 うーん…でもなあ。


 こういう「できちゃった」歌を一度だけ披露することが、よくあることとはいえ、もうあの歌が聞けなくと考えると、とても残念だ。


 女性にとっては破壊力抜群なのだろうが、男の俺にとってあの曲は、めちゃくちゃに素晴らしいものだったんだがなあ…


 なにより、成熟した大人の魅力を(まと)うトリカは、本当に魅力的だった。

  

 …俺だけにでも良いから、恋人の特権であの歌をもう一度聞かせてもらえないかな?


 今度、死ぬほどお願いしてみよう。


「さて、勢いのまま作った新曲も発表したことだし、そろそろ誕生日らしく、今年の抱負を発表するわ!今年の抱負は、歌で全宇宙の未来を輝かせる光となることと、この歌のアイデアの元となった男を、もっともっとわたくしに夢中にさせることよ!」


>おいヒノキ!お前のせいでこっちは心がえぐられたじゃねえか!

>この曲が出来たのはヒノキのせいってわけね…ヒノキ許せねぇ…

>全てヒノキが悪い

>ヒノキ。責任とれ


 ちょっと!?なんで俺が悪いみたいな空気感になってるんだよ!絶対にこの歌を作ったトリカが悪いに決まってるだろ!


「ま、流石にアイデアになった元の男は分かってしまうわよね?この歌のテーマとなった男。ヒノキ?舞台にいらっしゃい?せっかくだから、あなたにも歌ってもらうわ!」


「マジ?」


 ええ!!何にも聞かされて無いんだけど!!俺が舞台に上がるの!?


「さあ早く来なさい。あなたには、わたくしが提供した歌があるでしょ?一曲歌えば、すぐに観客席に返してあげるわ」


 トリカが無理やり俺をライブ会場へと連れていこうとする。


 えっと…拒否権は?


 あ、無いのね。


 …仕方がない。腹を括りますか。


 確かにトリカの言う通り、以前俺はトリカによって提供された歌を何度か歌ったことはある。


 ただし、それを発表したのはトリカのライブの前座や、幕間のちょっとしたイベントとしてだけだ。


 だから、本格的なライブに出演するのは今回が初めて。


 歌姫のライブに、こんな軽いノリで出演してしまっても大丈夫なのだろうか?


>優等生のロックンロール来た!

>ブーイングの準備は出来てるぞ!

>久しぶりのヒノキの歌だ!

>お前の下手くそな歌を嘲笑ってやるからな!

>さっきの曲で聞いた鬱憤のはけ口にさせてもらうからな!


 というか、歌う前に言っていたストレスのはけ口ってこれのことかよ!俺をガス抜きに使うな!


次回予告:お前ら愛してるぜ!

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