ウツギの母親 カジノ以外の観光地!
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カジノだけではなく、他の様々な場所でも俺達は遊んだ。
カードを使ったじゃんけん大会、前世の逃走中のようなルールの鬼ごっこ、心理戦、情報戦、交渉力、裏切りなどが大事なボードゲームなどなど…
なるべく安全な店を選び、体力が尽きるまで目一杯、俺達は楽しんだと思う。
どんな対戦相手も、金がかかっているからか、みんな真剣だった。ギャンブルの持つ力は、ほんと恐ろしい。
夢中で遊んだからか、気づけばもう夜も深い。
この都市で力いっぱい遊んだからか、それとも、なんとか生き残れたことによる達成感か。俺は今、充足感で体が満たされている。
俺達は互いに助け合うことで、駆け引きだらけのこの都市を最後まで戦い抜いたのだ。
え?俺がセリを助けることがあるのかって?
いやいや、それが意外とあるんだよ。
セリという人間は、危なそうな店にでも、平気で入ろうとする性質がある。
裏カジノや裏闘技場、裏雀荘、裏競馬場など、明らかに怪しい場所だろうがお構いなしだ。
なまじ自分の実力に自信があるからか、リスクをリスクと思っていないのだろう。
そんなふうに刹那的に遊んでいたら、いくら勝負強いセリでも、いつかは絶対に痛い目に遭う。
そういうセリの暴走を止めるのが、俺の役目だ。
実際、名前に裏とつく店は、かなり危険だ。ほら?事前の配信でも、そんな話題があっただろ?
だから、な?
「大丈夫!僕なら絶対に大丈夫だから!」
「いや!絶対に駄目!遊ぶのは安全な店だけ!」
どれだけセリが行きたがろうと、俺の目の黒いうちは、裏とつく店には絶対に行かせないつもりだ。
「いいじゃん!いいじゃん!僕、将来ヒノキとここに住みたいから、もっとこの都市のことを深く知りたいんだよ。だから良いでしょ?」
「駄目!というか、そんなこと思ってたの!?俺はこの都市に住むなんてゴメンだぞ?だって、俺みたいな駆け引きのうまくない人がこの惑星に住んでも、あっという間に貧民生活することになるだけだろ?」
「いやいや、ヒノキは自分のことを過小評価しすぎだよ。ヒノキって、意外と駆け引きできてるよ?ほら?ヒノキだけの持ち金でも、勝ち負けでいうとプラマイゼロじゃん!」
「そうだけど!それはセリがいるからだって、鈍い俺でもそろそろ気づいてるからな!」
自分でも意外だったが、俺は駆け引きが苦手というわけではないらしい。そんなこと、この都市に来なければ一生気づかなかっただろう。
どうやら俺には、強者を見抜く嗅覚があるようだ。
不思議と「この人、絶対に強者だ。今勝負したら確実に負ける!」というのが分かるのだ。
そう感じたときは全力で逃げて、特に何も感じない相手のときには勝負をする。そうやって俺はこの都市でなんとか生き残ってきたのだ。
ただし、この話は”俺が冷静な時”という前提の元成り立っている。
俺は、すぐに場の空気に流されるし、ちょっと勝つとすぐに調子に乗る。
そんな時、毎回のようにセリがしれっと俺の暴走を止めてくれていたのだ。
そんなセリによるバフがある状態でも、収支はトントン。
だから、俺一人なら確実に、この惑星で戦えないだろう。
「ということは、ほら?僕と一緒なら大丈夫ってことでしょ?それに、ヒノキならすぐに駆け引きもうまくなるよ!だから、一緒に将来ここで住もう!」
「いやいや、こういうところはたまにくるから良いんだって」
まともな精神を持つ俺のような人には、この場所に永住するのは向いていないと思うのだ。
今だって、沢山の真剣勝負をしたことによって、俺はかなり疲れているからな。
「うーん…分かった。僕もヒノキを無理強いしようとは思わないし、今は諦める。でも、それならせめて、今日をもっと楽しもう!」
「えー。そろそろ眠くない?俺はもう眠いんだけど…」
セリは元気いっぱいだが、俺は今ものすごく眠い。
普段から規則正しい生活を送っているので、夜更かしは苦手なのだ。
「そう?うーん…仕方ないか。僕一人で楽しむのも味気ないしね。じゃあ、ホテルに戻って、だらだらこの惑星特有のネペンテラスチャンネルでも見て、のんびり過ごそう?」
「そうしてくれるとありがたいな」
ということで、俺達はホテルへと帰ることにした。
◆
ネペンテラスチャンネルとは、簡単に言うとこの惑星専用の生放送チャンネルだ。
ネペンテラスで生放送する場合、このチャンネルを通すしか無い。
普通の生放送との違いは大きく分けて二つ。
一つ目は、この惑星でしか見ることができないという点。
そして、もう一つ目の違い。これがこのネペンテラスチャンネルの最大の特徴だ。
二つ目の違いは、見るだけで視聴者が賭けを楽しめるという、この都市らしい徹底したギャンブル仕様になっている点だ。
通常、この都市では富豪しか店を営業できない。
ただ、このチャンネルでだけは、平民や貧民など関係なく、配信者自身が賭けの胴元になることが出来るのだ。
そもそもこのチャンネルは、元々は貧民たちが金を稼ぐためという名目で作られたものだ。
よって今でも、貧民たちによる個人配信が多くを占めている。
貧民達が考える多種多様な賭けが、かなり面白いと評判だ。
…が、今では、このチャンネルに変なブームがきているという噂がある。その噂がデマだったらいいのだが…
「さて、ホテルへとついたし、一緒にネペンテラスチャンネルでも見てダラダラしようよ」
「おう!でも、賭けは程々にな」
俺はスクリーンに映し出される生放送をザッピングしていく。
【全裸で大富豪様の全身をマッサージし…】
【私は負け組です。だからゆるし…】
【同じルームメイトの貧民に毒を盛り、その後…】
ろ、ろくなのが無い…
これは、噂は本当だったようだ。
見ての通り、今やこのチャンネルは、真っ当な賭けが出来る生配信はほとんどない。
どうも最近では、生配信を見るために買わなければいけない、”視聴チケット”で稼ぐというスタイルが一大ブームとなっているようなのだ。
ある一人の貧民が、バカ高い値段の視聴チケットと、過激で引きのある生放送タイトルで大成功したのが原因らしいが…俺はもっとまともな生配信が見たかったよ…
ちなみに、こんなヤバそうな配信が多いのは、こういうのが富豪たちに受けるからだ。狂気であればあるほど、人が来るらしい。
貧民も貧民だが、富豪も富豪だな…
とはいえ、まだマシな番組がどこかにはあるはずだ。
諦めずにザッピングしていると、ふとあるタイトルが目を引いた。
「ん?ウツギの元母親?」
タイトルは、【ウツギの元母親が、ウツギの格好をしながら靴を舐めます!ウツギにムカついている人集まれ!顔のそっくりな私で、鬱憤を晴らそう!お客様バンバン募集中!】
はあ…
なにこの胸糞悪そうな配信。
そういえば、ウツギの元母親はクズって聞いたことがあるな。以前健康都市へ行った際、ウツギの旧友がそのようなことを言っていた。
確かに、このタイトルからして、ウツギの元母親は根っからのクズっぽいな。自身の娘をダシにして、なんとか視聴チケットを買わせようとしているのだろう。
怖いもの見たさで少しだけ概要欄を読んでみると、ウツギの元母親の自己紹介文が載っていた。
まとめると、ウツギの元母は男装接待酒場という、前世で言うホストクラブのような場所に通うのがやめられない人なのだそうだ。そして、子供を放置して遊びまくった結果、ウツギが三歳のころに親の資格を剥奪されたという過去があるらしい。
その後、一発逆転を狙いこの惑星に来たが、案の定貧民となる。
以後はこの惑星で宇宙三大ダブーを犯し、そのタブースキルを活かして小銭を稼ぎ、金が貯まればまた男装接待酒場で金を散在し、また貧民に堕ちる。
そのような生活を何百年もしているらしい。
いやぁ…根っからのダメ人間だな…
まあ、ウツギも親が変わってからは、とても平穏で愛される生活を送っていたらしいけど…それでも、ムカつくもんはムカつく!
俺の大切な親友を育児放棄しやがって…許すべからず!◯刑!
ふぅ…ちょっと熱くなりすぎた。深呼吸深呼吸。
ま、これは俺が勝手にムカついているだけだ。事実としてこの元母親とウツギの関係は、完全に切れている。だから、そんなにムカつく必要なんて本当はないんだ。
この宇宙では、チップによって親の資格なしと判断されると、ただちに子供が保護され、新たに親を募るという仕組みがある。
それに、言い方は悪いが、この宇宙では保護された子供を育てるのは、ある意味娯楽でもある。
捨てられた他人の子供をしっかり育て、成長を見守るというのは、普通に子供を育てるよりも物語性が感じられるらしい。
そのような風潮があるからか、保護された子供を育てようとする人は沢山いるのだ。
おかげで保護されたウツギも優しい親に拾われ、沢山愛されて育ったらしい。
だから、そんな風潮も決して悪いものではないのだろう。
だが、俺はこの仕組み、なんとなく気に入らないのだ。
社会としてはよくできているし、実際に救われる子も多い。
それでも、どこか引っかかってしまう。どうしても、割り切れないんだよな。
次回予告:この都市、ニートみたいな生活サイクルしてるな
【ちょっとした報告】しれっとプロローグを追加しました。でも、内容はこれまで読んでくれてる方には、特に目新しいことは書いていないので、読み直す必要はありません。




