賭博遊戯!その2セリの独壇場!
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ドキドキ。ドキドキ。
本物の男と指摘され、俺の心臓が強く鼓動する。
いやいや!まだ探りを入れているだけかもしれない。平常心だ!静まれ心臓!
そのエロいお姉さんは、ねっとりと色気のある甘い声で、耳元で囁いてきた。
「それに…ふふふ、基本的に男って性欲が薄いけど、あなたは違うみたいね…ほら、今もすっごくドキドキしてるでしょ?私の胸、唇、脚、香り、声、肌の接触、髪…あなた、弱点の塊じゃない?今どきこんなピュアな男がいるなんて…可愛い坊やだこと♡」
くるくると人差し指で俺の太ももを触りながら、俺の反応を楽しむお姉さん。
あたふたしている俺に、追撃とばかりに、ほっぺたにキスの嵐が飛んでくる。
もちろん俺は抵抗なんて出来ず、俺の顔には口紅でべっとりとキスマークがつけられた。
ああ、快楽で頭がおかしくなりそうだ。
というか、これは…うん。完全に男だとバレてるわ。
「でも、あなたが男ってことは…もう一人のお連れさんとはいい感じの仲なんじゃないの?それなのに、私に夢中でいいのかな?」
「…はっ!そ、そうだ、セリ、助けっ…」
俺の唇にエロお姉さんが人差し指をあてがい、俺を無理やり黙らせる。
「ふふふ、逃さないわよ?じゃあ、ワルいお姉さんが一晩だけたっぷり遊んであげるわ。今夜はゆっくり、私と駆け引きを楽しみましょう?かわいがってあ・げ・る♡」
「お、俺には愛する恋人がいるんだ!色仕掛けなんて通じないからな!!!」
「ふふふっ」
──数十分後。
そこには、けつ毛までむしり取られた俺の姿が。
そりゃ!こんなエロいお姉さんに俺が勝てるわけ無いだろ!いい加減にしろ!
今やったのはインディアンポーカー。自分と相手の持っている数字を比べて、勝ち負けを争うだけのシンプルなゲームだ。ただし、自分のカードは見ることは出来ないというルールがあるので、相手の反応から、勝負するか降りるかを判断しなければならない。
これはいわゆる心理戦というものだ。俺も全力で脳を働かせ、できるかぎり立ち向かってみた。
ただ、俺のやる行動、表情、ブラフなどは全部読まれていたし、お姉さんの雰囲気や口車に見事に誘導されて、賭け方などもかなり下手くそだった。
まあね、実力で勝てないだけなら、まだ納得できるんだよ。俺が弱かっただけだからな。
でも、今の勝負の何が悔しいかって、最初の方は確かにお姉さんに手も足も出ず駆け引きで勝てなかっただけだが、中盤から終盤にかけては、焦って俺がただただ勝手に自滅しただけなんだよ!
くそう!冷静な俺なら勝てないまでも、時間を稼ぐことくらいは出来たはずなのに!
時間さえ稼げば、セリが絶対に助けに来てくれると俺は確信していた。だから、それだけが俺の唯一の勝ち筋だったのだ。
あーあ。脱出ゲームで勝った賞金だけでなく、元々ここに持ってきていた俺の貯金まで、すべて搾り取られてしまった。
「ごめんごめん!かなり珍しいレトロゲームと、スペースまんじゅうにつられてつい…ごめんね?」
俺が全てのチップをなくした所で、ようやくセリの助けが入り、なんとか命からがらこの場から脱出。
「坊や?また遊ぼうね♡」
べー!だ。二度とお姉さんとは勝負しないからな!
でも、今度ああいうことがあれば、ちゃんと全力で逃げないとな。
もう少しセリが助けに来るのが遅く、この良心店じゃなければ、俺は莫大な借金を負うことになり、破滅していただろう。
全財産を盗られるだけですんだのは、この都市の考え方ではまだマシな方らしい。ほんと、安全な店を選んでおいて良かった…
「俺、もう一生セリから離れない。お姉さん怖い」
ガクガク震えながら俺はセリの腕を力強く掴む。
やっぱり、俺一人だと駄目だ。セリが隣りにいないと、こういう場では俺はただのカモに成り下がってしまう。
「…」
ん?なんだ?
ふとセリの横顔を見ると、セリの目からいつもでは考えられないほどの熱を感じた。なんというか、痛いほどの真剣さが伝わってくる。マイペースなセリにしては珍しい。
この目は、あの時と一緒だ。
──子供の頃、セリに誘われ、俺が初めてオンラインゲームをやった時の話。
今世で初めてのゲームに、胸を高鳴らせていた俺。だが、そのワクワクした気持ちは、運悪くへし折られる事となる。
俺が初プレイの試合で運悪く対戦相手として出くわしたのが、初心者狩りを楽しむ害悪プレイヤーの集団だった。
そして、よりにもよって俺が、そいつらのターゲットにされてしまったのだ。
昨今では、ゲームでの悪意のある害悪行をちょっとでもすれば、人生でゲームが一生出来なくさせられたり、営業妨害としてゲーム会社や害悪行為をした相手に賠償金を払わなければいけなかったりなどの、重いペナルティが課される。
それに、チップが記録する行動ログによって、その行為に悪意があったのかどうかなどは、絶対にバレてしまう。
よって、そんなマナーの悪い害悪プレイヤーは、この宇宙ではほぼ存在しないはずだった。
そんな界隈なのにも関わらず、華々しいデビュー戦でそんな害悪プレイヤーと当たってしまうとは…
相当運が悪かったとしか言いようがない。
その害悪プレイヤー達に、俺は必要以上に一方的にこてんぱんにされた。
そいつらは害悪プレイヤーのくせに、まあまあそのゲームをやり込んでいたのも、たちの悪さを加速させていた。
やられて復活しては、即座に倒され、また復活しては、即座に倒され…一生それの繰り返し。
いわゆるこれは、過剰なリスキルというやつだ。
やっていたのはチーム戦だったが、そいつらはチームの勝利に貢献する気などさらさらなかった。俺一人を的にして、何度も何度も狩っては、全力で煽ってくる始末。
俺は、初めてのオンラインゲームデビューがこんなことになって、かなり凹んだ覚えがある。
その時、俺の横でその悪質な行為を見ていたセリの目と、今のセリの目は全く同じだ。
ちなみにその後は、そいつらはセリの圧倒的プレイスキルによって、何度も何度もこてんぱんにやり返された。セリもこのゲームは初心者だったのにも関わらずだ。
あ、もちろんそいつらは運営によってBAN、いわゆるアカウント停止措置をされたぞ。
それに、そんな行為をされた俺にも、結構な賠償金が振り込まれたので、ある意味ラッキーだったと最後には思った記憶がある。
でも、あの時は完全に相手が悪かったが、今回はそのケースには当てはまらない。別にあのお姉さんが悪いわけではないからな。
それなのに、セリはなんでこんな目をしているのだろうか?
うーん…
あ、あれかな?
もしかして、俺がこんなにセリに必死にすがりつくことなんて、あまりなかったからか?
そう考えると全て納得できる。
その子供時代の時も、俺はセリに半泣きで、すがるような目を向けた覚えがあるからな。
その状況と、今の状況は、ほぼ一緒だ。
もしかしたらセリは、頼られると力を発揮するタイプの人間なのかもしれないな。
「大丈夫だよ。ヒノキ。すぐにとりかえしてあげるから。それに、僕が本気を出せば、どんな勝負だろうが、絶対に負けないから」
か、かっけぇ…
その後セリが「ちょっとだけここで待ってて」と俺を近くの椅子に座らせ、あのお姉さんに一勝負だけ挑みに行った。
セリは勝負中一言も話さず、ただ自分が勝つことに、自分の持っているチップを全掛けした。
相手は最強のカードである”ジョーカー”だったのにも関わらずだ。
あまりに豪快な賭け方に、途端にざわめく会場。
ジョーカーは、どんな数字よりも強いが、最弱の三のカードには負けてしまうという特殊なカード。
お姉さんはセリのこのバカな掛け方に、怒ってカモがネギを背負ってきただけと判断。
そして、セリのカードを見て、自信満々に勝負に乗った。
「「勝負!」」
結果。お姉さんは見て分かる通りジョーカー。
そしてなんと、セリのカードはジョーカーに唯一勝てる数字である、三。
セリはこの一瞬で爆勝ちし、大儲けしたのだ。
そのひと勝負だけして、颯爽とこの場から立ち去るセリ。
ちょっとうちの彼女、かっこよすぎやしませんかね。
そして、この明るいカジノの雰囲気が、唖然とした空気のまま、俺達はこの店から立ち去ったのだった。
次回予告:なぜここにウツギの元母親が!?




