旅行到着!目と目があったら駆け引きの始まり!
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俺とセリはVTルームへ向かい、ジュニアで行き先を設定。
旅行先がネペンテラスという危険な都市だからか、事前に宣誓書、同意書、承諾書など、沢山の電子書類にサインをさせられた。
例えば、イカサマをすると二度と帰れなくなるという旨の同意書や、もし返せないほど借金を負ってしまった時の対応、身元引受人に関する書類などだ。
おおう。もうこの時点で怖いわ。しっかり気を引き締めて行かないとな。
全ての項目にチェックを入れ、カプセルに入り、入眠措置を取る。
そうすることで、あっという間に俺達二人は当日泊まるホテルへとたどり着いた。
軽く体を動かして、ジュニアの機能に問題がないかを確認。
うん。大丈夫そうだ。仮想空間だが、現実となんら変わりがない。認識阻害措置も忘れずにしっかり設定されている。
よし!事前確認終わり!
それにしても、事前の噂通りこのホテルはギンギラギンに輝いてるな。部屋がやたらと明るいし、部屋の内装も色が明るい。
客を落ち着かせようという気づかいは、微塵もない。
軽く深呼吸をしてみると、どこかミステリアスで神秘的、そして深みのある甘い香りが鼻を抜けた。
これが、視聴者が言っていたアドレナリンが出るというお香の匂いなのかな?確かに高揚感が少し高まってきた気がする。いつもより鼓動のスピードが速い。
この高揚感に騙されず、できる限り冷静さを保たないとな。
さて、今回の旅行の日程は一泊二日だ。
今日はセリといろいろなところを回って遊び、明日はお土産などの買い物をして帰る予定だ。
「よし、セリ。行こうぜ」
「うん!ここには一度来てみたかったんだ!ヒノキ、連れてきてくれてありがとう!」
「おう!楽しもうな!」
セリが勢いよく俺へと近づき、胸を押し付けるようにしながら、俺の腕をぎゅっと取る。
セリの煮詰めたシロップのような、濃くて甘い体臭がふわっと香ってくる。同時に、腕に感じる柔らかな胸の感触。
ドッ!ドッ!ドッ!ドッ!
心拍数急上昇!体温急上昇!
数値が上昇し続けています!危険!危険!落ち着いてください!
チップからそんな警告が聞こえてくる気がするが、例え分かっていたとしても、俺が落ち着けるはずがなく…
もう諦めてこの快楽に身をまかせよう!そう!それが一番!
アドレナリンが出るお香なんて無くとも、俺にはこんなふうにされるだけで一瞬でテンションが高まる。
基本的に俺はセリといるときが一番落ち着くのだが、このように、セリはちょくちょく自分も女性だということを、俺に体で分からせてくる。
何度もされていることなのに、一向に俺がなれる様子はない。
はは。セリの存在は、俺にとってはお香の効果以上だわ。なんてな。
まあ、認識阻害のせいで、他人から見れば俺達はただのおっさん二人組。おっさん同士がイチャイチャしてるふうにしか見えないんだがな!
◆
「よう!兄弟!この都市は初めてか?じゃあ、この街で楽しむためのアドバイスをしてやるよ!おそらく観光客だろ?なら、俺たち地元住人が、駆け引きのコツなんてのも教えちゃうぜ?」
セリに連れられてホテルから出ると、タバコを口に加えた酔っぱらい二人に俺達は挟まれた。
どちらの男も、洋服をかっちりと決め、おしゃれにヒゲを生やした、どこか色気のあるダンディーなおじさんだ。
地元住人で男の見た目ということは、実際に男の姿に見た目を改造した元女性である可能性が高い。
この街の住民は、自分の元々の見た目を変えることに一切抵抗がない。元の姿より、勝負に勝つことのほうが大事と考えているのだ。
格好いい男に見た目を改造すると、事実女を騙しやすく、交渉などが有利になる。なので、この都市の住人の殆どが男の見た目で暮らしているらしい。
ただ、認識阻害のおかげで、俺達もごく普通のおっさん二人に見えるように設定したはずなのだが、この二人はなぜか、俺達のことを観光客だと確信している。
きっと、俺達の態度から観光客であることを察し、俺達を”女性二人組の観光客で、男に姿を変えてこの都市に来た”と予想したのだろう。
「いえ、結構です。二人で相談しながらいろいろ回りたいので」
「うん。僕たちデートだから、邪魔しないで」
毅然とした態度で申し出を断る俺達。なんというか、この二人からは厄介な匂いがプンプンするからな。
俺達が普通に交渉しても相手にしないということが分かると、その二人組は俺達に肩を組むようにして、密着してきた。
「そう言うなよ兄弟!ほれ?一杯飲むか?地元の人しか知らない隠れ家に案内してやるぞ?…俺に案内させろよ?な?」
声に色気をまとわせながら、耳元で囁くように俺に語りかけてくる。
ゾワッ。
とたんに、俺の全身に鳥肌が立つ。
キモい!そういう色仕掛けまがいのことは、実際の女にやれ!残念ながら俺は男だ!美女に姿を変えて出直してこい!
さて、この手の相手を断るのは面倒だと相場が決まっている。
こういうときは…
設定から、この男二人を選択し、ブロック。
これでよし!
こうすると、この二人は俺達の姿が認識できなくなるのだ。
これは、アバター旅行ならではの対処法だ。この機能、便利でいいよね。
セリもこれ以上返答するのが面倒だったのか、問答無用でブロックしたようだ。
「ちっ、逃げられたか…案内してチップをふんだくってやろうと思ってたんだが…さて、次、次っと。次のカモはまだかな-」
この二人がそう呟く。
どうやらコイツラは、この観光客の往来が多いこの場所で待ちながら、獲物が来るのを待っていた様だ。
やっぱり、この都市怖え…
来てそうそう、洗礼を浴びせられた気分だ。
でも、あの二人があまりしつこくなく、片っ端から声をかける”数撃ちゃ当たる戦法”を取っていることから、きっとこの惑星では、あの程度のことは挨拶みたいなものなのだろう。
これは、気を引き締めないとな。
「よし、気を取り直して、色々見て回ろうぜ!」
「うん。案内するね!」
今日のために、セリは事前に色々調べてきてくれたのだ。
セリの手に引っ張られるまま、俺はこの都市を歩きだした。
少し外を歩いただけでも、この都市ではどこもかしこもやたらと活気があることが伝わってくる。
大音量で流れるノリの良い音楽。目まぐるしく色を変える、沢山のライト。
そして何より、あっちでもこっちで行われている真剣勝負。
勝ち負けが全てというこの都市での考え方が、どこへ行こうと伝わってくるのだ。
中には、泣きながら駄々をこねる男がいたり、大笑いしながら負けた相手の頭を踏んづけている男がいたり…
あのー?男の姿でそんなみっともない事するのやめてくれない?なんか見てていたたまれないからさあ…
「それにしても前評判通り、まだ昼にもなってないはずなのに、完全に夜にしか思えないな…」
この都市では、長い夜と、少しの朝しかない。
ここは人工恒星を用いた惑星なので、朝昼夜などは思いのままなのだ。
まあでも、これだけ極端な設定にする惑星はそうそうない。大体どこの惑星も、朝昼夜のサイクルは前世の地球と同じに設定しているからな。実際それが一番過ごしやすいしね。
「歩いて見て回るだけでも面白いね!」
ビルのような高い建物が沢山立ち並び、どこの店も客引きが多く、賑やかだ。
こんな場所に誰も入らないだろ、と思うような妖しげな店もやたら多い。
「…ちょっと下品だけどな」
バニーボーイと呼ばれるコスプレした露出の多い男が沢山街を出歩き、看板などには堂々と男根のシンボルをデカデカと掲げてある店も多い。
あ、今まさに、その看板が脈動しだした!
どうやらあのシンボルは、一定時間ごとに動く仕組みになっているようだ。
…改めて言うが、ホントにここって、くっそ下品だな。
でもこれでいて、違法なことは一切していない健全な都市なんだよね。
実はこの街、治安維持にはかなり気を使っているらしい。自棄になって犯罪を犯そうとする人も後をたたないので、自然とそうなったとのことだ。
どこにいようと機械による監視があり、イカサマや不正行為がないか、厳しくチェックしているらしい。
こんな都市だからこそ、住民は違法なことを嫌うのだ。
そんなふうに考えているうちに、俺達は最初の目的地にたどり着いた。
次回予告:セリとヒノキが合わされば、怖いものなし




