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スノードロップ  作者: 白崎なな
第5章、戦争
34/46

34。戦闘開始 杏

「ーー戦闘開始。」


ぎょくのこの一言によって、戦争の狼煙が上がった。



しんは、タタッと作戦通り9時の方角を目指して走った。木々が覆い茂る森林を抜ける。


ぎょく、ここまで本当にありがとう。あなたは、ひとりじゃない。私もゆえもいる。)




いつも仕事(殺し)をして帰ってくるたびに、重たい心を鬼のように鞭を打って無理に笑顔を作っているのに気づいていた。



でもあえて、ゆえしんも何も言わずにきた。



彼女が自分ひとりで抱えれば良い。

他の人が傷つかない方法を。と考えた末だということを知っていたから。



だからこそ。早くに終わらせてあげたい。




その思いからか、走る足が早く早くなっていく。




「全員、気を引き締めて!森林を抜けるよ!」




「「御意!」」




森林を抜けた先に案の定敵軍がいた。

銃を構えていた。



しんは、トリガーを引かれる前に近寄った。

撃とうとして構えている相手の左手首を掴み、斜め前にふっと引っ張った。

相手はそのまま前に倒れ込んだ。




さらに別の銃口を向けてきた相手に詰め寄り、ふわっとジャンプをする。

そのまま空中で一回転をして、相手の顔面をどんでもない勢いで蹴る。



軽やかに着地をしたと同時に、左脇にさしてあった剣を抜く。


しんは、自分の顔の横に持ってきてグッと両手で握った。



普段とは違い目の鋭さだけで殺してしまいそうな覇気を感じる。

それを見た敵は怖気付き、一本二歩、また三歩と後退りをした。



後退りをした5人を容赦なく刺していく。



しんの後ろに回ってきた敵の鳩尾に剣の柄を突いた。後ろで倒れる音が聞こえる。



「……何してる。前に前に進め。」



普段の柔らかい言い方とは反対の冷たい声。

剣についた血溝から止めどなく血が流れる。



「…御意。」



しん側についてきていた桜井が呆気に取られ返事が遅れた。



しんは、その弱々しい返事に横目で睨みつけた。



「やる気がないなら、戦場にくるな。」





「ハッ、すみません!」




「フフフ、そんなに強く言って。怖がられているじゃないですか。わたくしなら、そんな言い方しません。」




「あなたって、そんなに華楽からくの言葉が上手なの。なら最初からこっちの言葉で案内してくれたら良かったのに。」





「なぜ?どっちの言葉だったとしても、あなた方は理解できるでしょう?」




「そうね。」



(この帽子に着いた鳳凰木が金ふたつ。この顔。)



『ジジジ……』




「ジジ…、こちらしん。幹部リンに接触。」




「うっ…せっかちだね〜」


リンは、しんの首を切りつける。

左の首から血が滲み出る。



『ジジジ――了解。』



『ジジ…』




「こんな状況でもちゃんお報告をするなんて、なんで良い子さんってやつなの?」



「あなたと違って?」




「どうでしょうか?わたくし、あなたと違って。完璧に仕事(殺し)をするんです。」

そう言ってリンは、しんに近づく。



リンの動きに合わせアルタイアの兵3人も、しんめがけて銃と剣をそれぞれ向ける。





まずリンの剣を剣で受け、剣先の力をふっと抜いて受け流す。

左手でリンの髪をぐっと後ろに引っ張る。


そのまま首に腕を回し、リンを盾にアルタイアの兵の銃を受けそのまま兵の方へ放り投げる。



「……ぅうっ。」




「お。まだ生きてる?」



「こんなので、死ぬようなことは無いですよ。」


リンは地面に剣を刺して立ちあがろうとしていた。



アルタイアの兵が前から来た。


しんは、剣を鞘に一度納める。

兵の右手を左手で払って相手の左足を左足で横に蹴る。


前に倒れ込んだ敵に剣を抜いて柄で首後ろをつく。その反動を使って目の前の敵を突く。


『ジジジ………』



『ジジーこちらぎょく。レイティと接触。』



「ジジ…御意。」

ジルの声と重なった。



そこにリンが剣を向ける。

そのまましんの顔付近で左右に降って前に進んでくる。


しんは、軽くジャンプするように後ろ後ろに避ける。

右からきた剣を剣で右に弾き、リンの右肩を左手で後ろに押す。



リンは倒れ込みながら持っていた剣を槍のように投げる。



それをさっと交わし、リンの胸を剣を横向きにして突き刺した。



リンから剣を抜くのと同時に、残っていたアルタイア兵がかかってくる。



左からくるのを剣で受けて、右の敵に体を捻らせて鳩尾を蹴る。



ゆえから何も聞こえないけど。どうしてる?)




「ジジジ……こちら、しん。リン処分。」




『ジジ……了解。』




街の方は進軍していく。

家と家の間から、顔を出す敵に苦手な銃で応戦する。



(こういうのは、ぎょくの得意な戦い方。

先に詰めて戦う方式に変えるべきかなぁ。)




「詰めて近距離戦に持ち込む。」



「御意。」



『ジジジ…』



『ジジ…こちらぎょく。レイティ処理。ゆえの無線が聞こえない。誰か幹部と対峙してるなら無線を入れて。』


『ジジジ…』



ゆえからの声が聞こえない。本当に無線機の開発してるの?新しくなっても全然ダメだなぁ)



アルタイアの軍に詰めていき、図書館の中に立てこもられる。


『ジジジーこちら、雲嵐うんらん。ジルと遭遇。皇室側だ。3人のうち誰かこれるか?』


『ジジ…こちらぎょく。私が行きます。』




ぎょく、ジルのことは任せたよ。)


桜井が扉の前来て、こちらを見て頷いた。

それと同時に扉を桜井が2度蹴って、扉を開く。


ドドドッー

内側から撃ってくる。



「久しぶりだな。しんなんだろう?」



「お久しぶりです。酒井氏。あなたもこのスノードロップの人身売買に加担してたんですね。」



「"酒井氏"ねえ。…水本さんに聞いたんだろう。」



「聞きました。ーーなので、あなたを殺さざるおえなくなりました。」





「おお、怖い怖い。スノードロップを敵にまわすと、怖いなぁ。でも、しんは銃撃戦は苦手だろ?」




ぎょくに比べれば劣ります。でも、ある程度は出来ます。」



桜井とまだ合図をして中に入る。

図書館の2階に酒井が立っていた。



桜井が銃を握る敵を撃ち殺していく。



しんは降ってくる銃弾から身を交わし、距離を詰めていく。

階段下までしんがきたところで、剣や刀を握る敵が降りてくる。




お腹を突きにくる剣を右手を返して剣で受けて左にひねる。足を蹴り、首の頸動脈に刃で切りつける。


そうして降りかかる剣や刀をかわして進み、切りつけては上へ上へ進んだ。




「酒井氏。あなたもこれで最後。」


酒井が剣を首をめがけて振りかぶる。

剣の上をしんは自分の剣を滑らせて、酒井のお腹を切る。


「〜!!うわぁ、やめ、やめてくれ……」



倒れた酒井の喉仏を刺した。




「ジジ、こちらしん。図書館にて酒井を処理。」




『ジジー…』




(あ、私のも壊れたかも。何も声が聞こえなくなった。ゆえはどうしてるかな。

ゆえ側に応援あった方がいいかな。)





「酒井。私はぎょくの元に応援に行く。

あなたは、全員を率いてゆえの方は応援に。」




「何人かしん様につけなくてよろしいですか?」



「大丈夫。龍元りゅうげんの軍もいるから。」



「御意。ご武運を祈ります。それでは、私はゆえ様の方へ行きます。」




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