影謀の晩餐
夜半、ロイド邸地下の密談室には古い燭台の炎だけが丸卓を淡く照らし
主のロイドとパーティー仲間であるノエル・ティアナ・レイナの四つの影を石壁に浮かべていた。
「本当に決行する気か?補給担当のレオンを欠いたまま遠征に出れば現場が機能不全になる。
“無能”と騒ぐのは簡単だが追放でいいのか?」
「レオンが残れば、いつまでも“前のやり方”に縛られるでしょう? わたくしはロイドの判断に賛成」
もともとレオンに言い感情を持っていなかったティアナは追放に賛成だった
「新しい補給係なら王家筋から派遣も検討できますわ。温情より一刀両断が効果的よ」
(腕を組み、短く息を吐く)
「ロイド、お前がレオンを追放する本当の理由はフローラだろ?――理解してるさ。女を確保するためにレオンを切るんだろ」
一瞬、ノエルが目を丸くするが、レイナは淡々と続ける。
「だが鍋の扱い手なら替えは利く。戦線で必要なのは物資の質と量、その管理だ。数字を回せる人員さえ立てれば“料理人レオン”の居場所は空席のままで問題ない。」
彼女は視線を真っすぐロイドへ戻し、静かに頷いた。
「フローラは俺のものだ。」
ロイドの声は低く力強かったがフローラの名を口にする瞬間、わずかに抑えた感情が滲んだ。
「彼女は…俺の腕の中で、俺を選んだ。あの夜、彼女は完全に俺のものになった。」
「だが、レオンがまだ彼女の心に影を落としてる。あの役立たずの料理人をこの街から消さなければならない。」
「その感じじゃもうフローラに手を出してるんだ?でも今回のはちょっとやりすぎなんじゃない?」
ノエルの声には、探るような好奇心と、ロイドの行動への微かな非難が混じっていた。
ティアナ、華やかなドレスに身を包んだ女が口元を隠しながらくすくす笑った。
「ロイド、あなたの執着は本当に魅力的よ。まるで物語の悪役ね。でも、女の心は複雑だわ。あの料理人のレオン、ただの過去の男じゃない。彼女の心に根を張ってるわよ。」
ロイドはティアナを一瞥し、彼女の言葉にフローラの揺れる瞳を思い出した。彼女がレオンの名を呟く瞬間、彼女の心がまだ彼の手からすり抜けていることを感じていた。
「だからこそ、レオンを破滅させる。噂はすでに広まってる。ノエルが用意した偽の手紙、ティアナが社交界で流した話――レオンが有力者の娘を騙したって噂は、街の半分を支配してる。」
レイナが腕を組んだまま口を挟んだ。
「具体的に何をやるの? 力ずくでレオンを街の外に放り出すわけ? 」
ロイドは小さく首を振った。
「力は最後だ、レイナ。あいつの名誉を徹底的に潰しフローラが自らレオンを嫌うように仕向ける。」
「ここまで聞いた以上、お前達には協力してもらうぞ。そうすれば俺がティアナと結婚し王となった際に
重要な地位を与えてやる」
ノエルが口角をわずかに上げる。
「悪くないね」
レイナは腕を組んだまま短く頷く。
「王国近衛隊長の椅子を寄越すなら手間は惜しまん。少々心苦しいがレオンを排除する手筈、もう一度詰めておく」
ティアナは唇を隠しつつ、目だけでロイドを射抜く。
「結婚の件は父上にも根回し済みですわ。」
ロイドは卓上の封書をひとつずつ仲間の前へ押し出す。
「じゃあ決まりだ。夜明け前に書類をギルドへ。
点検で数字を暴き、噂を焚きつけ“料理人レオン”の肩書きも居場所も消す」
指が封書を叩くたび、決行の時刻が石室の空気に刻み込まれた。
外では夜風が鉄扉をきしませ、蝋燭の影が四人を濃く呑み込んでいく。




