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第51話B『『剣聖』と『魔導師』による招待客』

※今回の話は第51話『別の世界』のアッシュたち視点のお話です。

 陽光が差し込んでくる朝、『剣聖』アッシュ・レイ・フェルザリアは目を覚ます。今日は王都レガリアにて、彼が騎士団に入った歓迎式があるのだ。


「おはようアッシュ。グレイス君が来てるわよ」


「おはようお母様。グレイス来るの早いな……」


 扉が開き、母親のセリア・フェルザリアからそう告げられる。眠い目を擦りながら階段を降り、リビングに着くと既にグレイスが椅子に座っていた。


「ああ、起きたか。今日はお前が主役なんだから寝坊するわけにはいかないぞ?」


「分かってるよ。あ、そうだ。歓迎式に僕の友達を何人か連れてきていいって言われたからライン達を招待しに行こうよ」


「じゃあ行くか。お前は早く食え」


◆◇◆◇


「俺も朝食もらっちゃって……すみません」


「良いのよ気にしないで。食べずにうちまで来たんでしょ?」


 セリアの考えは正しかったのか、グレイスは首を縦に振った。それを見て彼女はクスッと笑うと、アッシュの方を向く。


「もうお義父様は王都レガリアに行ってるから早く行きなさいね。友達を連れていくのなら急ぎなさいね」


「わかったよお母様。じゃあ行ってくるね」


「じゃあ行ってきます」


 巨大な扉を開き、外に出ていく二人をセリアは笑顔で見送っていた。


 ――外に出た途端、グレイスがアッシュの肩を掴んだ。


「で、誰を呼ぶ?」


「ラインたち六人にリリスとエリシア、レオ……くらいかな」


 グレイスに尋ねられそう答えると、彼は準備運動のようなことをし始めた。


「じゃあお前はラインたちとリリスの所行け。俺はエリシアとレオを呼びに行く。俺は飛行魔法とブーストリア使っていくけどお前はどうする?」


「僕は《超加速》とブーストリアで行くよ」


 しっかりと昨日の授業で習った「ブーストリア」を使おうとする二人を見ればカイラス先生は感心するだろう。


「僕は先に行ってくるね」


 そう言うとすぐに彼はその二つを重ねがけし、もはや誰にも見えないほどの速度で消えていったのだ。


「速すぎだろあいつ! 俺も向かうか。まずはエリシアだ」


◆◇◆◇


 エリシアの家に着くと、既にエリシアは外に出ていて花に水を上げていたのだ。


「おい」


「うわぁ!? って、グレイス君? 急にどうしたの?」


 後ろから声をかけられ驚くが、彼の顔を見てホッとしたような表情に変わる。


「今日、王都でアッシュが騎士団に入った歓迎式あるんだけどお前来るか?」


「そうなの? うーん……セツナたちとかリリスも来る?」


「ラインたちとリリスはアッシュに呼びに行ってもらってる」


 それを聞くと、一瞬悩むような顔をしたが「まあいっか」と歓迎式に行くことを決めた。


「あとは誰を呼ぶの?」


「俺はこれからレオを呼びに行く。行くぞ」


 後ろを向き、飛行魔法で飛ぼうとするとエリシアが「待った待った!」と声を荒らげた。


「あ? なんだよ」


「私があんたについていけるわけないでしょ? 速度が合わないって。私飛行魔法使えないし」


「あー。じゃあここで待ってろ。レオ連れてくるから」


 そう言い残し、グレイスは空に向かって飛び去っていった。


「……なーんで私の所から来たのよー!」


 空に向かって叫ぶとその声が反響し、彼女の耳に何度も入った。


◆◇◆◇


 次にグレイスが着いたのはレオ・ヴァルディの……いや、カイラス先生の家だ。レオの家は知らなかったが、彼はカイラス先生の養子になっているので先生の家に行けばいると思ったのだ。


 そして、その考えは正解だった。


「グレイスじゃねえか。どうしたんだよ」


 ドアを叩くと眠そうな顔をしたレオが出てきた。

 

「今日はアッシュが騎士団に入った歓迎式が王都であるんだがお前来るか? ラインたちとリリスとエリシアを呼んでる最中なんだが」


「へー今日そんな事があるのか。……うーん」


 先程のエリシアのように悩んでいるが、少し言いづらそうな顔をして両手を前に合わせた。


「悪い。今日予定あってさ。俺行けねえわ」


「そうか。わかった。悪いな、押しかけちゃって」


「気にすんなって。楽しんでこいよ」


 再びグレイスは飛行魔法で空を飛び、エリシアの家まで戻って行った。


「……」


 それを確認した後、レオは玄関の扉を閉めて自分の部屋に歩き出す。

 自室のドアを開け、部屋に入るとすぐに鍵を閉めた。


「はぁ、悪いなアッシュ、グレイス。行きたかったけど今日は本当に忙しいんだよ。ん?」


 椅子に座り机に向く。その瞬間、彼の目の前には紫色の魔法陣が現れた。魔法陣には文が書かれていて、それを読んだ彼はニヤリと笑う。


「始まったか。上手くやってくれよな」


 後ろの壁にかかっている獅子のような仮面がレオをじっと見つめていた。


◆◇◆◇


「おーアッシュ、ラインたち連れて来たか……あれ?」


「え、アッシュ君とリリスだけ? セツナたちは?」


 一度グレイスの屋敷に集まると、いたのはアッシュ、リリス、グレイス、エリシアだけだ。レオはともかく、ラインたち四つ子もメイド二人もいない。


「ラインの家に行ったんだけど、誰もいなかったんだ。リリスだけしか連れて来れなかった。そっちもレオがいないようだけど……」


「なんか予定あるって言われてな。連れて来れなかったんだよ。仕方ない。四人で行くか?」


 正直、アッシュとグレイスはこの二人とめちゃくちゃ仲がいいわけではない。

 グレイスは『ラビリンス・ゼロ』でエリシアと同じチームだったので話す機会はあったが、リリスに関してはアッシュもグレイスもそこまで話したことがない。


 二人ともセツナにレンゲ、セレナ、エルフィーネの友達なので彼女らがいない今、来ないのではと思っていた。だが――


「アタシは行くよー」


「まあ私も行くけど。せっかく誘ってくれたんだし」


 二人の返事を聞き、アッシュは笑顔になりニコッと笑う。


「ありがとう。じゃあすぐに行こうか」


「よーし行くか」


 《超加速》と「ブーストリア」を使い王都レガリアまで高速で走っていこうとするアッシュと、飛行魔法と「ブーストリア」で空を高速で駆けながら行こうとするグレイス。その二人を見て、リリスとエリシアの声が重なった。


「「待った待った待った!」」

読んでくれてありがとうございます!

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― 新着の感想 ―
アッシュたちの行動はこんな流れだったんですね〜。 (*´ω`*) でも、レオの行動だけが何だか不穏な感じ……。 何かあるのか? これは楽しみです。 (´・ω・`)
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